東レの短繊維事業/開発品で需要掘り起こし/ウレタン代替など狙う
2023年04月06日 (木曜日)
東レの短繊維事業部は、寝装分野で徐々に高まっている“脱・ウレタン”の機運を受け、ウレタン代替需要に向けて開発品の提案と販売を強化することでポリエステル短繊維の需要掘り起こしを目指す。既に潜在捲縮(けんしゅく)発現性ポリエステル短繊維などの提案を進めている。
同社によると、ポリエステル短繊維の市況は2023年に入ってからやや勢いを欠く。不織布向けは車両用途が一時の落ち込みからは脱しつつあるもの本格的な回復には至らず、生活資材用途もスパンレース不織布向けが調整局面にある。このため「このままでは生産を担う愛媛工場(愛媛県松前町)のフル稼働維持が厳しくなる」(佐藤公彦短繊維事業部長)と話す。
こうした中、ここに来て動きが出ているのが寝装用途でのウレタン代替需要だ。ウレタンはリサイクルが難しく、焼却処分など廃棄段階での環境負荷が高いことから、ポリエステル短繊維の固綿(かたわた)で代替できないかというニーズが高まってきた。このためウレタン代替需要を狙った開発品の提案を進める。
その一つが潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維。一般的なポリエステル短繊維はわた段階で捲縮が発現している顕在捲縮発現性であるのに対して、潜在捲縮発現性ポリエステル短繊維は熱セットによって捲縮は発現する。これを固綿に使用すれば製綿・固綿製造工程で捲縮を発現させることができ、成型性や耐久性を高め、ストレッチ性などを付与することもできる。
そのほか、防ダニ加工も機能性試験方法の国際標準規格(ISO)や日本産業規格(JIS)ができ、寝装用途に向けて提案を強化する。需要が高まる再生ポリエステルも異形断面化など機能性付与・高付加価値化を進める。「愛媛工場にはバッチ式紡糸設備があり、特殊な開発品の生産に強みがある。これを生かす」ことで需要の掘り起こしを進め、フル稼働維持を目指す。