特集・アジアの繊維産業/品質問題解消する検査機関・グローバル化で現地進出

2002年04月02日 (火曜日)

 海外からの輸入は低価格問題だけではない。品質の悪さが、クレーム問題も引き起こす。水際でそれを食い止めるのが、検査機関である。生産の場がアジアに拡大するほど、検査機関の検反・検品・試験機能がますます注目される。

カケン/上海科懇がISO9001取得、海外比率25%目指す

 「青島試験室は好調。早い段階からカットソー、寝装品中心に試験業務の依頼が入っている」。カケン(日本化学繊維検査協会)は、昨年10月に開設した青島試験室が好スタートを切ったという。

 同室は、青島出入境検験検疫局と業務提携し、同局の12階に開設。試験・検査・検品を行う。「正確、迅速はもとより、試験データなどによる品質改善アドバイス、工場のレベルチェック、情報サービスなども提供」する。

 日系、現地企業のほか、韓国系企業の依頼も多い。これは「地理的に韓国は近く、生地が1日で到着。空洞化問題は日本と変わらない。今後も山東省は中国でも有数の繊維基地に発展する」とみる。

 カケンの中国戦略において、同室は衛星拠点的位置付け。主要拠点は香港と上海である。香港検査所は88年11月から業務を開始。日本向けを中心に試験、検査を行う。「一般的には日本向けのビジネスが減っているが、香港検査所の仕事量は増加している。昨年も試験機器を増設、増員した」。

 上海では上海科懇服装検験修整有限公司が94年6月から開始。「今後も中国の大きな拠点になることは間違いない」とし、昨年11月に中国国内の試験・検品機関の中で初のISO9001/2000の認証を取得した。

 中国の認証審査機関であるCQC(中国進出口質量認証中心)の審査を受けたもので、「品質マネジメントシステムが円滑に行われ、顧客満足度が高まることを期待。上海科懇は、〝正確〟〝迅速〟〝満意(顧客満足)〟を品質方針に掲げる」。

 このほか、韓国、台湾、インドネシアでも業務提携先を有する。ラボは海外6拠点、国内10拠点だが、「売り上げベースでは海外は20%。これを25%くらいまで引き上げる」考えだ。

 「小売業がダイレクトソーシングしており、染色などの生産管理や検品関係では物流まで業務を拡大してほしいという要望がある。その心づもりはあるが、当面はモノ作りの技術力アップに注力する」とし、時代に応じた機能・基盤作りを準備する。

ボーケン/常州に試験室開設、上海に続く中国2拠点目

 日本紡績検査協会(略称=ボーケン)は、中国江蘇省常州市に試験センターを開設、3月12日から業務を開始した。同協会は95年に上海に試験センターを開設している。常州の試験センターは、これに続く中国2カ所目だ。

 常州試験センターは、常州出入境検験検疫局紡織品検測所内にある。現地スタッフ15人に加え、日本人スタッフ3人が常駐する。主要業務は、日本向け繊維製品の事前検査。「オープン前から検査依頼が寄せられた」(中林喬理事長)ほどに、開設の要望が強かったようだ。

 一方の上海試験センターは、上海出入境検験検疫局が作った新ビル内にある。2000年8月にここへ移転した。同センターにも、20人を超える現地スタッフに加え、3~4人の日本人スタッフが常駐している。試験依頼は、ここでも増加傾向にある。

 中国の両センターでは、日本のユーザーが要求する様々な試験に対応できる体制を整えている。日本から中国への技術移転の流れも視野に入れて、高機能商品の性能も評価できるようにする方針だ。日本と同じ水準の試験体制を整えようとしているわけだ。同時に、試験に要する時間のさらなる短縮も進めると言う。

 中国の検査拠点をさらに増やして欲しいとの要望が同協会に寄せられている。このため、同協会の中国の検査拠点はさらに増えそうだ。中国以外でも、香港のSGS香港や、韓国の韓国原絲織物試験研究院などと提携関係にあり、日本向け商品の検査技術などを指導してきた。昨年7月からは、SGS香港に2~3人の、韓国原絲織物試験研究院には1~2人の日本人スタッフを駐在させ、日本企業の利便性向上を図っている。

ニッセンケン/「エコテックス」中国でも

 ニッセンケン(日本染色検査協会)の「ニッセンケン南通事業所」が開業して3カ月だが、「順調に立ち上がった」という。

 これはファニーインターナショナル、南通進出口商品検験公司、南通東帝色織有限公司が合弁で設立した「南通天山紡織品検整有限公司」内に昨年11月末に開設したもの。糸、テキスタイル、2次製品の検品、検査、試験などを担い、合弁新会社の技術指導を行うほか、現地で繊維製品の安全規格「エコテックス」の認証も行う。

 ニッセンケンの強味は、染色分野の技術にとりわけ強いこと。素材も「日本同様に高級品から入っており、採算に合わない単価ではない」。扱い量を増やすことで、「着実に南通に定着すること」を当面の目標にする。上海や南京からも開設を望む声はあるが、あくまで南通事業所の確立を目指す。同公司内には技術開発プロジェクトも設置した。

 また、ニッセンケンは英「マークス&スペンサー」の認定試験場でもある。「日本でも輸出振興に熱が入ってきたが、中国においても欧米向けが増えていく。M&Sの認定を受けていることが、改めて評価されている」という。

 さらに「エコテックス」の認証事業も武器である。エコテックス国際共同体の認証事業を現地で推進し、国際標準レベルで通用する商品作りを支援。欧米輸出に際して、環境にも人にも優しい繊維製品であることを立証する。

4月上旬には寧波と上海で、中国国際貿易促進委員会が主催するエコテックスセミナーが開かれるが、南通でも同セミナーを計画する。昨今の中国は環境問題への意識が強まっており、欧州輸出の増加を勘案すれば、潜在需要は大きい。

 国内においても、「エコテックス」の知名度を上げるため、京成電鉄と北総開発鉄道で「エコテックス認証ラベル」の車内広告を行った。「現在、120件が認証されており、着実に伸びている」。

 中国での事業には、「検査・検品だけでなく、物流も要望する声がある。計画にはないが、視野には入れていく」考えだ。

メンケン/検反需要増加、特殊技術は現地に少ない

 メンケン(綿スフ織物検査協会)が昨年8月に開設した上海試験センターが好調だ。「検品を行うところは多いが、検反は特殊技術のため現地に少なく、要望が多い」という。

 試験はローカルが行っても、日本人が後でチェックできる。しかし、検反は決まったものならローカル対応できるが、ニットもカシミヤもとなると、ベテランクラスでないと難しいという事情がある。

 とはいえ、検反でも低価格商品では、検反料も安くなる。「日本人ではコストが合いにくい。ローカルを育てることが重要。現地素材の高級化が、検査機関の採算にも関わってくる」。検反によって、「問題を未然に防いだ例は多い」だけに、検反需要は今後も期待できる。

 最近では「検品、検反、試験をセットで依頼する顧客も増えている」が、さらに「物流関係まで求める企業も多く」、同社としても物流を視野に入れて上海での活動を進めていく。