特集/香港・華南/アパレル商社(1)――対日輸出

2002年04月03日 (水曜日)

中国大陸に拠点拡大/香港・上海両軸で攻める

 「在香港アパレル商社」といっても、それぞれ組織形態も違えば志向するところも異なる。対日輸出を中心とする商社は香港本社を司令塔に、中国大陸での生産拠点を整備するため上海その他にオペレーションセンターを設け、香港・華南中心から中国全土での受注・生産体制を整備している。

 香港・上海を起点とする対日アパレル輸出で取り扱いが最大のトレディアファッション。本社三菱商事と連携し、広東省、上海、青島周辺での生産管理を一手に引き受ける。前12月期の取扱高は6億5500万ドルと前の期に比べ22%増えた。上海、青島など華東・華北での取り扱い増が寄与した。

 その結果、全社取り扱いのうち上海52%、香港本社48%と初めて逆転した。今年9月には大連事務所繊維部をトレディア傘下に取り込み、主要生産地での生産フォロー業務を拡充する計画だ。

 また、生産関連では浙江省湖州市に中高級婦人・紳士・子供服の縫製工場を今年5月稼働予定で設立する。アパレルの中国生産移転の加速に伴うもので、初年度15万着、3年目50万着規模を計画している。

 新会社は「湖州青菱高級時装」で、三菱商事と同社が各45%、縫製メーカーの四国ソーイングが10%出資する。3年目で従業員400人規模を想定。シャツ・スカート・パンツなど中衣を中心に生産し、4年目以降、ジャケットなど重衣料も手掛ける。

 新工場を94年5月稼働の上海市の独資縫製「上海青菱時装」(従業員330人、年産55万着)の“第2工場”と位置付け、大手総合アパレル、生活提案型専門店チェーン向けに生産する。このほか既存縫製合弁でも新会社による増設を検討中だ。

 トレディアと同様に香港・上海を起点にするのがニチメンオリエントウエア(NOW)。香港の有力繊維企業グループ、リー&フンとの包括提携契約を結び、香港・上海で本格的な営業活動を始めた。相互に営業ディビジョン(DIV)を設けるとともに、日本向け輸出でリー&フンが抱える中国を含むアジア工場の欧米向け素材や雑貨製品生産力を活用、アパレルを中心に多彩な商品供給で対日輸出を拡大する。

 今年2月、香港NOWスタッフ50人のうち14人をリー&フンへ出向させて「ニチメンアパレルDIV」を設ける一方、NOW上海および4月に統合予定の非衣料関連会社ニチメンパルテックス上海事務所31人のうち17人をリー&フンの対日DIVと統合、実質的な営業活動をスタートさせた。

 今2002年度は取引先の関係でNOWに残した商権は日欧米向け合計で2億ドル。リー&フン関連では「1億米ドルの対日輸出を見込んでいる」(西川清方NOW副社長)。合わせて年間3億ドル規模の取り扱いとなる見通し。

 すでにリー&フンが欧米有力アパレル・ストア向け輸出用のニット原糸、織・編み物工場の素材を有効活用する方向で活動を開始。香港でセーター、ジーンズ、上海ではカット&ソー、布帛ジャケットなどそれぞれの地域が得意とする商品を受け持ちながら住み分ける。また、「これまで避けてきた雑貨関係の引き合いにも十分こたえられる体制ができあがった」(同)として、セレクト系やSPA(製造小売り)対応を強める。

提携・増設で機能強化/“住み分け”意識し拡充へ

 ファッションフォース香港(NI帝人商事)は上海事務所を今年1月、NI帝人商事上海会社との統合のため分離したものの、大連、青島、無錫、ホーチミンが残り、これらの地域特性を勘案しながら生産体制の整備を図る。中国では今秋までに寧波に新事務所を設け、ヤンガー集団など同地企業との取り組みを深める。寧波を含めた中国4拠点とベトナムがメーンとなる。

 そのベトナムでは対欧米スポーツメーカー向け縫製拠点の「ファッションフォース第1工場」で今秋、倍増設する。椚座武敏社長によると、現在の6ライン・300台を550~600台規模に拡大する。欧米のスポーツ大手に供給しており、これら輸出が好調なため増設に取り組むことになった。

 一方、アルタモーダインターナショナル(三井物産)は4月1日付で、三井物産上海会社繊維部の衣料部門を統合し、「アルタモーダ上海事務所」としてスタートさせる。香港・上海の一元管理で、日本のアパレル企業からのニーズの多様化に備える。

 上海事務所は南京西路に新オフィスを構え、駐在員は1人増員し4人、現地スタッフ9人で発足する。現在、浦東地区の森ビル内に事務所があるが、「衣料品を扱う場合、生産拠点が上海の西側に集中、業務に不便なことから移転を決めた」(有田敬社長)。今後、デザイナー、生産・品質管理要員などを順次採用、補充するとともに、オフィスレイアウトをファッションビジネスにふさわしい形に変えていく。

 アルタモーダの今3月期(2001年1月~今年3月までの15カ月変則決算)は取扱高1億ドルの見通し。アパレル、原料・テキスタイルがほぼ半々となったが、アパレルの取り扱いの伸長から、12月末時点で前年同期と比較すると、取り扱いで20%、利益で25%各増加した。

 4月から上海事務所を一元管理することで、「素材情報を共有化し、アイテム、価格ゾーンに合わせて適地生産の体制を整備する」(同)。量販店、スポーツ、ヤング、ミセス、メンズの各くくりで香港・上海の一体運営を図ることにしている。