春季総合特集Ⅱ(9)/Top インタビュー/デビス/社長 デビス・ハニ 氏/バリュー引き上げる好機/スポーツテーストを増強

2023年04月25日 (火曜日)

 輸出型の生地商社、デビス(大阪市中央区)の2022年12月期単体決算は、売上高が前期比約2倍になるなど「異常な」(デビス・ハニ社長)好決算だった。中国生産回避を志向する欧米ブランドの受け皿になれたことや、新型コロナウイルス禍でも仕入れの手を緩めなかったことが奏功した。ハニ社長に現況と今後を聞いた。

――インフレであらゆる物価が上昇しています。これを好機とするには何が必要でしょうか。

 まず、インフレが良い悪いという議論があると思うのですが、日本の繊維業界に限定していえば、現状ではデメリットのほうが大きいという認識です。ただ、モノの価値を引き上げるチャンスだとは言えます。

 日本では安さを武器に同業他社に勝つ、あるいは出し抜く時代が長く続いてきたわけですが、ファッションの価値はそもそも価格だけではありません。

 当社の生地の販売先は海外が95%以上。メード・イン・ジャパン、メード・バイ・ジャパンの生地を売るためには、コストよりもバリューを引き上げるべきです。商品のバリューだけではなく、サービス面も含めての話です。

 当社も元々は安い生地をトレーディングしてきましたが、ここ数十年はバリューを磨くスタンスに切り替えています。インフレ時代ではさらにこの要素が重要になるはずです。

 そもそも私は価格が高いか安いかという二元論が嫌いです。大事なのはバリュー。バリューとは、色のこだわり、複合素材の妙であり、プリントの意匠力、納期対応のことです。デビスと取り組むとメリットがあるとアパレルが感じてくれるよう努めてきましたし、今後もこの方向性を強めていきます。

――とはいえ、コストや価格も商売上の重要な要素です。

 その通りです。昨年は生地値を引き上げるべき年でした。ですが今年は、海外はコストが維持、あるいは下がる局面を迎えています。一方、日本の生地生産に掛かるコストはまだ上がり続けています。これでは相対的に競争力が保てません。危惧しています。とはいえ、産地や染色加工場などの仕入れ先がなくなって困るのはわれわれですので、一体となって難局を乗り切るしかありません。

 いずれにしても、今は業界全体をアップデートできる良い契機だと言えます。インフレ自体は完全に悪いものでもありませんし、日本はハイクオリティー、ハイサービスで勝負していくべきです。安さで勝負しても世界的な戦いでは勝てないわけですからね。

――22年12月期はご本人が「異常」と表現するほどの好決算でした。

 前期実績を約2倍上回る大幅増収になりました。期中の予測よりも上振れ、過去最高を更新しました。伴って利益も増えました。大幅増収の要因は、アフターコロナ、ウイズコロナの欧米市場の生地需要を取り込めたことです。コロナ禍でも商品開発や生産スペース確保、備蓄力増強の手を緩めなかった成果が出たと言えます。

――今期は慎重にみられていますが、スタートは。

 幸いにも1月、2月は前年同期並みとなりました。しかし、世界経済が不安定化している中、このまま安泰というわけにはいかないでしょうから、通期の定量目標はやや慎重にみています。先行きが本当に読みづらい情勢です。コスト高が続く中でいかに利益を出し、サプライチェーンを維持強化していくことが課題になります。

 スポーツとファッションの融合にも取り組みます。全世界的に、スポーツミックスの流れが強まっていますので、開発に力を入れます。一から開発するものもあれば、既存の生地に加工を加えて表情を変化させるものもあります。例えば、織物調の編み地や、タフタに表面加工を施したものなどです。

 これらを「デビス・スポーツ」という新たなラインで訴求していきます。7月に開かれるパリ「プルミエール・ヴィジョン・ファブリック」で大々的に披露する予定です。同時期に開催されるイタリアの「ミラノ・ウニカ」への出展も検討しています。

〈インフレを実感するとき/有機系スーパーの頻度高まる〉

 料理好きのハニさんは、コロナ禍もあって外食を減らして家で料理し、食べることが増えた。週末は買い物に行き、食材を購入する。スーパーで売られている食材は軒並み高騰しており、そこではインフレを実感する。ただし、最近通うようになったオーガニック系や高級スーパーの食材価格は相対的にそれほど上がっていないと言う。自身や家族の健康に気を使うハニさんが普通のスーパーに行く頻度が減ったのは自然な流れだ。

【略歴】

 1996年デビス入社。2008年取締役副社長、21年4月代表取締役社長