春季総合特集Ⅴ(3)/Topインタビュー/トンボ/社長 藤原 竜也 氏/今こそ制服の品質高める/値上げにふさわしい機能を
2023年04月28日 (金曜日)
トンボは今春、近年中学校を中心に急増するモデルチェンジ(MC)に対応し受注量を伸ばした。ただ、来年以降もこのMCの勢いは続くことが予想され、その対応も迫られる。昨年は3年ぶりに展示会を開催した。多くの来場があるなど「手応えを感じた」と話す、昨年9月に現職に就いた藤原竜也社長。新たな仕掛けも打ち出しながら次の成長につなげる。
――インフレを好機とするには何が必要でしょうか。
コストアップを理由に小売価格を上げるしかありません。小売価格を上げるためには何が必要か。一つは原材料価格などさまざまなモノの値段が上がっているという理由付けです。
しかし、ただただ値段を上げてくれと言っても通るわけはありません。価格アップにふさわしい機能性や品質、そしてサービス面など、モノの値段は上がるけど機能が良くなるといった付加価値が重要になってきます。今こそ制服のクオリティーを高めることが必要です。
――今年の入学商戦の進捗(しんちょく)について。
性的少数者(LGBTQ)へ配慮する流れから、全国の中学校で制服を詰め襟、セーラー服からブレザーへMCする動きが加速しています。当社もMC校の新規獲得分が売り上げ増につながっています。
一方、燃料費や原料費、さらに外注工場への工賃などあらゆるコストが上がっています。そのため、利益面は厳しい状況が続いています。
――今春に引き続き、来年以降もMC校の増加傾向は続くとみられます。その対応策について。
今年の入学商戦を経験し、新規校からの受注を受けるタイミングに基準を設けなければと感じました。当社でも「○月までに注文をいただければ翌年の入学に対応します」といった社内ルールはありますが、こちらも大幅に変える予定です。注文の確定時期を前倒しすることも必要だと思います。逆に、しなければ学校側に迷惑をかけてしまう恐れがあります。
生産面においては、人の手による作業の部分はこれ以上の自動化が難しいというところまできました。今後は受発注の仕組みなど、システム面を変えていかなければなりません。いまだに手入力をしている部分も多く、まだまだ改善の余地はあります。
――昨年、スポーツウエアの「アンダーアーマー」のスクールスポーツウエア、ファッションブランドの「ミナ ペルホネン」とコラボレーションしたウエアを発表しました。
ミナ ペルホネンは学生服部門とヘルスケア部門で展開していきます。ヘルスケア部門では今月、販売のスタートを切りました。学生服の方は、これから提案を進めていきます。
アンダーアーマーは既に今春から納入しており、約10校の新規校を獲得しています。昨年開いた展示会で披露しましたが、学校からの引き合いが好調です。
――ケアやメディカル向けユニフォームを扱うヘルスケア部門の商況は。
メディカル、ケアともに新型コロナウイルス禍の影響でなかなか営業ができていない状況です。どうしてもカタログだけの商売になってしまい、なかなか売り上げを伸ばし切れていません。
コロナ禍が収まりつつある中、今年はとにかく展示会へ出展し、販路を開拓していきます。
――今年の設備投資の予定は。
茨城県笠間市に物流拠点の「東京物流センター」を建設します。約1万6500平方㍍の土地に、延べ床面積約1万6500平方㍍の2階建ての建物を建設する計画で、今年9月1日に竣工式を行う予定です。
――昨年、コロナ禍で中止していた展示会を3年ぶりに開きました。
東京、大阪、名古屋3会場で開きました。3会場合計で430校が来場するなど好評でした。コロナ禍ではバーチャル展示会の活用も広がりましたが、昨年の展示会では先生方から「ようやく現物を見ることができた」などの声を直接いただくことができ、リアル展の手応えを感じました。
今年は東名阪の3会場に加え、福岡でも開き、アピールしていきます。
〈インフレを実感するとき/ガソリンが高い〉
インフレを一番実感するのは車に給油する時だ。特に、車をレギュラー車からハイオク仕様車に変えたことが響く。「車にガソリンがほぼ入っていない状態から給油をすると、料金が1万円を超える」。また、最近ジャケットを買ったというが、洋服の値段も上がっているという。がっちりとした体形の藤原さん。「自分の中でジャケットの値段は5万円以内が常識だったが、この体では5万円以内はほとんどない」と苦笑いする。
【略歴】
ふじわら・たつや 1984年テイコク(現トンボ)入社。2013年取締役、15年常務取締役、19年に瀧本の代表取締役社長に就任。22年9月22日付で現職