春季総合特集Ⅴ(4)/Topインタビュー/明石スクールユニフォームカンパニー/社長 河合 秀文 氏/顧客との対話重要/厳しさの中でも打開策探る

2023年04月28日 (金曜日)

 明石スクールユニフォームカンパニーは、近年急増するモデルチェンジ(MC)に対応しながら売上高を伸ばしている。2022年12月期の売上高は過去最高の299億円となった。一方、原燃料価格の高騰など、取り巻く環境は厳しさを増している。そのような中、生産面など、体制を整えながら今期は売上高305億円を目指す。

――インフレを好機とするには何が必要でしょうか。

 学生服業界はインフレもデフレもあまり関係のない業界です。過去にはデフレの中で価格改定のお願いをしてきたこともありましたし、インフレだから値上げをしやすいかと言われるとそうでもありません。コストが積み上がってくればどこかのタイミングで価格改定のお願いをする、この繰り返しできています。

 ただ、昨今はさまざまなモノの値段が急激に上がっており、厳しさはあります。自分たちでできることはないか打開策を探りつつ、どうしてもできないことに関してはお願いしていくしかありません。そういう意味では、顧客と実直に対話をしていくことが重要です。

――今年の入学商戦の状況はいかがですか。

 性的少数者(LGBTQ)に配慮する流れから、中学校を中心に制服をブレザーへMCする動きが全国的に活発になっています。当社もこの流れによって、MC校からの受注を昨年以上に獲得しました。MC校数は多かったものの、詰め襟やセーラー服といった地域定番服は毎年同じようなペースで減っていっているのも事実です。

 MC校数が急増する中、今入学商戦では、競争販売をしているものに関しては、中学校向けは年内に注文を取るなど、学校側にも理解をいただきながら販売期間を明確に設けました。この期間を超えるとお断りし、指名をもらっている学校を優先的に対応していくというようなことも今年はせざるを得ませんでした。これによって販売の平準化にもつながり、計画を持って生産ができました。

 人工知能(AI)を活用した採寸も人員や場所の準備などの手間が省け、効率化につながっています。効果を実感した学校はどんどん取り入れています。

――22年12月期の業績について。

 売上高は前期比5・6%増の299億円となりました。MC校からの受注が好調だったことに加え、コロナ禍で自粛が続いていた学校行事が復活してきたことで、秋以降も受注が堅調でした。

 一方、原燃料価格の高騰のほか、国内、海外含め生産する場所の確保に動いたことなどによって、利益面は苦戦を強いられました。

――今期(23年12月期)はどのような部分に注力していきますか。

 来年もMC校が非常に多くなることが予想されます。そのため、生産面では今まで以上に早めに備蓄生産を仕掛けていきます。外国人技能実習生不足などの要因で国内の縫製工場の生産スペースが逼迫(ひっぱく)する中、国内生産とのバランスも取りながら海外生産の活用も進めます。近年は海外でも小ロット対応ができるようになってきました。早めに計画を組みながら生産に当たります。

――昨年、山口県宇部市に新たな物流拠点を新設しました。

 当社の物流拠点、宇部テクノパークアソートセンターの敷地内に建設し、昨夏から本格稼働を始めています。倉庫スペースに余裕ができ、当分は大丈夫そうです。

 縫製の基幹工場である宇部工場の倉庫スペースも移設しました。空いたスペースには検査、仕上げ部分を移動させ、工場には新たに、別寸に対応する一枚切りの自動裁断機(CAM)を昨年末に導入しました。これによって工場は1階部分が全て裁断、2階が縫製とそれぞれ独立させました。

 工場の照明のLED化もほぼ完了しました。

――今期の設備投資の予定は。

 宇部に社員寮があるのですが、建ててから50年ほどが経ちました。常に30人ほどが入居しており、今でも寮へ入りたいという要望があります。食堂や浴場といった内装を、時間をかけながら改装していければと考えています。

〈インフレを実感するとき/自信持って値段を付ける〉

 「単純な値上げなのか、はたまた付加価値を付けた結果としての価格なのか……」と河合さん。「食料品など何年も販売が続いているような商品の値段が上がるとインフレのように思われる」と話す。一方で、「車のように何年かでモデルチェンジし、そのたびに値段が上がっているというケースもある」と指摘。「これを値上げとはあまり言われない」。河合さんは「作る側が自信を持って値段を付けて売っていけば良いと思う」と語る。

【略歴】

 かわい・ひでふみ 1982年明石被服興業入社。89年取締役。2002年専務。05年から社長。明石スクールユニフォームカンパニー社長も兼務