特集 コットンの日(3)/認証制度とともに進化する綿

2023年05月09日 (火曜日)

 繊維業界ではサステイナブル素材への要望が高まる中、採用した素材の環境配慮やサステイナビリティーへの取り組みが実際に有効かどうかの判断基準となる、国際的な認証制度やプログラムが増えつつある。消費者に理解を深めてもらいながら、製品を供給する側の企業が、人・社会・環境に配慮して商品やサービスを選ぶ時代に入る中、これらの認証制度が大きな役割を果たしてくる。

〈厳格化するトレーサビリティー〉

 綿を中心としたサステイナビリティー関連の認証やプログラムにはさまざまなものがある。最近耳にする機会が増えたのが、米綿のサステイナビリティー・トレーサビリティー検証・認証システム「USコットン・トラスト・プロトコル」。綿花栽培のサステイナビリティーを定量的に計測するシステムで、綿花農家が栽培時の環境負荷をシステムの基準を基に自己評価するというものだ。

 システムによって認証された「プロトコル綿」はブロックチェーン技術を活用したプロトコル消費管理プラットフォーム(PCMS)を通じて、紡績に投入された綿花から製品までの全サプライチェーンが参加して、トレーサビリティーを確認することができる。

 2020年から本格的に稼働し、今年3月に独自システムのPCMSによる綿繊維の追跡量が累計3千トンを突破したと発表。最終製品数は1100万枚超。データに裏付けられた検証済みプロトコル綿を根拠に、製品への表示などさまざまな方法でサステイナビリティーへの取り組みを発信できる。

 国際綿花評議会(CCI)の「コットンUSA」マークはライセンス基準を変更し、USコットン・トラスト・プロトコルへの加盟が必須となった。トレース検証システムを導入し、使用したプロトコル綿の数量により環境データを受け取ることができる。移行期間として23年末まで旧基準も有効とするが、24年1月以降は新基準が適用される。

 認証制度では他にも水と農薬の削減と労働環境を整えるための国際団体が運営するプログラム「ベター・コットン・イニシアティブ」(BCI)や、オーガニック繊維の国際的な認証「GOTS」(グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード)や、「OCS」(オーガニック・コンテント・スタンダード)などを取得する企業も増えてきた。

 今後トレーサビリティーへの関心が高まる中で、認証・プログラムの影響度はますます高まりそうだ。単に認証を取得するだけでなく、なぜその認証を取得しているのかという理由も明確にしていきながら、消費者へ認知を高めていく必要がある。

〈純綿でも伸縮、より着心地よく〉

 紡績各社は綿100%でもストレッチ性を付与させた開発を進めている。生地に伸縮性を持たせ、より着心地の良さを高めた素材が増える。

 ユニフォーム用途では22秋冬向けからワークウエアを中心にクラボウの綿100%ハイパワーストレッチ素材「バンジーコットン」の採用が広がる。綿100%でありながら高い回復力(キックバック性)を実現した。ワークウエア用途では火を使う用途で綿100%素材の需要が多く、アウトドアなど他の用途へも採用が広がりそうだ。

 日清紡テキスタイルは売れ筋の綿100%のノーアイロンシャツ「アポロコット」でストレッチに対応。インドネシアで紡織一貫での生産や、縫製の協力工場への輸送、生地・製品の管理まで含め、徹底した品質管理によって商品を供給している。

 綿100%素材への関心が高まる中、日本紡績協会では、国産綿素材の需要振興のために「ジャパン・コットン・マーク」の発信を強めている。近年、素材のトレーサビリティーが重視される中、安心の国産綿素材の印として活用拡大が期待される。ジャパン・コットン・マークは国内で製造した糸・生地・不織布など綿素材を使用している印であり、消費者が安心して商品を選ぶ目印となる。

〈シーアイランドクラブ/海島綿の持続可能性追求〉

 綿糸を販売するシーアイランドクラブ(東京都中央区)は、海島綿(シーアイランドコットン)の持続可能性を追求している。ウィンウィンの関係構築によって産地であるジャマイカの農家を守るほか、品質の維持で必要な綿花であり続ける。西本享由社長は「最高品質の綿花を次世代に残すことは責務」と話す。

 海島綿は、カリブ海地域に生育する超長綿のことをいう。超長綿の中でも繊維長が長く、繊度の細さや光沢感などに優れている。超長綿の収穫量は綿花全体の2%に満たないが、海島綿の収穫量はその超長綿の中の0・01%にすぎない。品質に加え、希少性の高さも特徴の一つと言える。

 カリブ地域では、アンティグア・バーブーダやセントクリストファー・ネビス、バルバドス、ベリーズでも栽培されていたが、現在はジャマイカだけ。収穫量も30トン程度しかない。西本社長は「人の確保の問題もあり、カリブ産海島綿が消える可能性もある」と危機感を募らせる。

 栽培の持続には、生産者とウィンウィンの関係を築くことが重要とし、現在もフェアトレードの基準に沿った取り組みを行っているが、国際認証の取得準備を進めている。企業や消費者に必要とされる価値を持った綿花であり続けることを不可欠とし、品質の維持にも力を入れる。

 同社は、カリブ海地域産に加え、米国産の海島綿も輸入している。収穫量は約100トンだが、倍ぐらいに増やせる余地はあるとしている。昨年には、地域活性事業などを行うフードリボン(沖縄県大宜味村)と沖縄県で試験栽培を実施した。品質の良いわたが収穫できたという。