特集 「PTJ24春夏」(2)/オリジナリティーを磨く/宇仁繊維/滋賀麻工業/吉田染工/高島晒協業組合/パノコトレーディング

2023年05月17日 (水曜日)

〈ジャカード多彩に/小口・即納機能もPR/宇仁繊維〉

 宇仁繊維(大阪市中央区)は前身の「ジャパン・クリエーション」含め、30回以上PTJに出展する常連組。新規取引先を獲得してきたほか、「素材トレンドの動向を知ることもできた」と同展への出展意義を強調する。

 今回展のイチ押し生地は、中肉ツイルをベースに、大胆な幾何柄が目を引く毛足長めのカットジャカード。ポリエステル・綿(75%・25%)混のためタッチは綿のソフトな風合いながら、シワになりにくいイージーケア性も併せ持つ。

 ポリエステル100%の、軽くてポコポコした表面感が特徴のフクレジャカードも自信作。緯糸にポリエステル紡績糸を使用することで優しい風合いに仕上げた。

 商品面の訴求だけでなく、備蓄機能やスピーディーな生産体制による小口・短納期供給サービス、約4万点の商品ラインアップという多品種展開などもアピールする。国産にこだわり、常に効率生産によるコストダウンを追求している点も、インフレ時代に突入したタイミングで開催される同展のバイヤーから注目されそうだ。

〈先染リネン・麻シルク軸に/麻産地ならではの織り・染めで/滋賀麻工業〉

 湖東産地の滋賀麻工業(滋賀県愛荘町)は、麻産地ならではの糸染め・生地染め技術を背景にした独自性の高い自社企画の各種麻繊維交織品を毎年、精力的に開発してきた。今回は2月のミラノウニカ出展でも人気を博したリネン先染め織物で柄を拡充して提案するほか、やはり同展で評価の高かった後染めリネン・ヘンプ交織品、緯糸シルク交織品も打ち出す。

 リネン100%の先染めチェックは春夏らしい軽快な色柄に加えて、細番手で織り密度を上げたエアリーな薄地が充実。羽織物からシャツ・ブラウスまで提案の幅を広げた。

 自社の整経・製織設備と麻の糸染め・反染めに定評ある産地染工場、澤染工との綿密な連携により、自社企画品をベース色柄設計に細かく変更してオリジナル対応できることも強みだ。

 もう一つの見どころはシルク交織品。緯糸に絹紡糸を配して、ツイルからボーダーまでさまざまな柄・混率を展開する。麻のドライタッチやハリ感と、シルクの軽さ、柔らかさやドレープ性を併せ持つ不思議な風合いに仕上げた。

〈糸染めから編み立てまで/独自企画が好評/吉田染工〉

 吉田染工(和歌山県紀の川市)はこれまでのPTJ出展で、OEMの依頼が増えてきた。同社オリジナル企画の編み地を基に顧客がアレンジするケースも多いという。

 今回展でもオリジナル企画を打ち出す。その一つが、夏らしい和紙やリネンを生かしたチェック柄のSRYインレーニット。綿、ポリエステルも含んだ4者混で、綿にはオーガニックコットンを使用する。

 インレーとダブルジャカードの組織を組み合わせた編み地も披露する。アイロンセット熱で溶ける融着糸を使うことで、編み地全体にハリを持たせた。こちらはポリエステル、和紙、ナイロンの3者混。

 同社は糸染めが本業で、グループの貴志川工業では生地染めも行う。自販事業として取り組んでいるのが「ソメカラ」という名称で推進するプロジェクト。「糸染めから編み立てまでオリジナル柄でジャカード生地を編成する」という意味を込めている。

 今回展では生地以外に、クッションカバーやニットキャップといった製品も展示し、訴求力を高める。

〈新規開拓目的に初出展/「着用感の良さ」訴求/高島晒協業組合〉

 高島産地の染色加工場、高島晒協業組合(滋賀県高島市)のPTJ出展は今回が初めて。近年は複数の産地織布工場とともに、毎年11月近辺にPTJと併催される「JFWジャパン・クリエーション」に出展してきたが、今回は単独出展になる。

 目的は新規顧客開拓だ。ここ数シーズン、ルームウエア需要の高まりを背景に工場稼働は堅調だが、必須と考える値上げを実施した際に既存顧客からの受注数量が落ち込む懸念がある。工場稼働を維持するためにはその補完策が必要であり、新規顧客との出会いを求めて単独出展を決めた。

 展示テーマは、ちぢみ(楊柳、クレープ)の型押し、最終製品、サステイナブルという三つ。最終製品は、縫製品事業として数年前から展開する自社保有のミシンで縫ったものをサンプル展示する。サステイナブルでは、耐久加工、メントール加工などを披露する。

 ブースでは「ちぢみの着用感の良さを肌で体験してもらう」ことを目的に、色柄を配したステテコを来場者に無料配布する。

〈オーガニック茶綿並べ/トレーサビリティーが強み/パノコトレーディング〉

 サステイナビリティーが繊維・ファッション産業で欠かせないキーワードとなる中で、引き続き注目を集めているのがオーガニックコットンだ。オーガニックコットンを使った原糸の輸入・販売、生地の企画・製造・販売を行っているのがパノコトレーディング(東京都千代田区)で、PTJを通じて販路拡大を図る。

 国際的な認証を受けたオーガニックコットンを100%使った原糸を販売している同社。トレーサビリティーの徹底した管理と高い品質を強みとしている。国内産地の工場を活用し、バルキー性に富んだ10番単糸や滑らかさに優れた120番単糸、カラードコットン、奥行きのある色味が特徴の杢(もく)糸を使った生地を提案している。

 12回の出展を数えるPTJは、新規顧客の開拓や販路の拡大などを目的としており、成果も着実に上がっていると言う。今回は、茶綿100%を使った両面ネルなどを展示する予定。無染色のオーガニック茶綿を使用している。生地の表面に起毛加工を施しているので、柔らかな肌当たりが特徴だ。