躍り出たコンパクトヤーン

2002年04月05日 (金曜日)

 毛羽が極めて少なく、合繊のようなシルキーさや鮮やかな光沢が出せる綿糸「コンパクトヤーン」は、01年5月に新聞紙上に登場して本格的なブームが巻き起こった。この間、各商社はそれぞれが担ぐこの糸で他社との差を見いだすべく、良質の綿花、番手の幅広さ、セルロース系繊維のコンパクトヤーンなど“差別化素材での差別化”を打ち出してきた。各社の販売戦略とコンパクトヤーンの今後の可能性をみる。

商社の販売戦略“差別化の中の差別化”志向

 『綿糸における革命』と騒がれる契機となったは、伊藤忠商事がインドの紡績合弁、パットスピンから輸入する「リボルーション」を本格販売し始めたことだった。同社はこの16~60番の中・太番手の糸のほか、スイスのネフ社から仕入れる30~80番の中・細番手「エリート」、東洋紡が紡機の改良によって開発に成功した純国産糸「和円」の織り糸(40~60番手)の3種類を売る。とくに和円は、日本製の差別化素材として、テキスタイル貿易課と組み、輸出用テキスタイルで展開する準備も進めている。

 インドからは現地企業からを含め10月までに3万3000錘まで供給源を拡大する。運営する綿糸販売サイト「いといとドットコム」で小口でも現物対応し、今後の素材開発に向けての試織などに積極的な役目を果たす考えだ。

 トーメンは、すでに欧州のアパレルで圧倒的な人気を集める「フトゥーラ」を伊紡績企業、フランツォーニ・フィラティ社から独占的に輸入販売する。その最大の強みは、綿糸の番手の幅広さ(7~80番手)にとどまらず、テンセルやマイクロモダールなどセルロース系繊維のコンパクトヤーンを持っていることだ。きれいめデニム用や中肉のパンツ用、ニット、ストレッチなど多彩な素材を生み出せるので、1ブランドでのフルアイテム採用という可能性も秘めている。

 フランツォーニ社から技術者を招き、イタリア独自のノウハウと日本の技術を融合させ、日本市場で最も適した用途を引き続き探っていく。

 各社が表立って市場に乗り込んだのとは対照的に、一昨年秋から水面下で導入に動き出していたのが住友商事だ。伊紡績、レニャーノ・ティンティ社から「アソルート」(日本で販売する織り糸、丸編み用ニット糸のみの商標)を独占的に供給する。シャツ地やニットという個別の商品に求められる素材感を最大限に出すため、レニャーノ社と話し込み綿花から厳選していく。担当する繊維原料部は綿花・綿糸・綿織物を一手に扱う部であるため、それぞれの専門家が力を結集させやすいというメリットもある。あくまで価値ある素材という考えを重視し、ドレスシャツの中でも高級ゾーンでの展開に絞る。

 蝶理もまた他社と異なる綿花を使うという点を売りにする。同社は01年10月、ペルーの紡績企業、ピウラ社と日本、東南アジアでの独占輸入・販売権契約を結んだ。供給を受ける「ピマックス」は、多少のばらつきはあるものの、繊維長40ミリを誇るペルー産ピマ綿100%の糸。繊維の細さと長さが差別化の源泉である。蝶理が強みとする化合繊長繊維と交織・交撚することにより、足し算ではなく掛け算でピマックスの良さを引き出す。

 誰もが担げば差別化素材の意味が埋もれてしまうが、各商社それぞれに差別化の中での差別化を打ち出そうとしている。消費者の間でタグの価値が高まるかどうか、製品が店頭に並び始めたこれからが本番だ。