スクールユニフォーム特集(9)/アパレル編/求められる安定供給体制/トンボ/明石スクールユニフォームカンパニー/菅公学生服/瀧本/オゴー産業

2023年05月26日 (金曜日)

 今入学商戦は、性的少数者(LGBTQ)へ配慮する流れから、中学校を中心に制服をブレザーへとモデルチェンジ(MC)する動きが一段と強まった。これに伴い、学生服メーカーにとって、生産の難易度も高まっている。この傾向は来年も続く見通しだ。今入学商戦の経験を踏まえ、来春に向けて制服を安定供給する体制作りが学生服メーカーに求められる。

〈MC対応奏功し販売増/今春の経験を来春に/トンボ〉

 トンボは今年の入学商戦で、性的少数者(LGBTQ)へ配慮する流れから増加する、ジェンダーレス制服やエリア標準服などへのモデルチェンジ(MC)に対応し、販売量を増やした。スポーツ分野も、自社ブランドの「ビクトリー」を中心に、昇華転写プリントを施したアイテムの販売が好調だった。

 一方、利益面は苦戦を強いられた。藤原竜也社長は「燃料費や原料費、外注工場への工賃などさまざまなコストが上がっている」と話す。

 来年以降もMCの増加傾向は続くとみられる。藤原社長は今春の経験から、「新規校からの受注を受けるタイミングに基準を設けなければならない」とし、「学校としっかり協議した上で、生地の確定を現状よりも早くしていただくことも必要」と説明する。

 生産面においては、「これ以上の自動化が難しい所にまできた」とするが、受発注の仕組みなどシステム面に関しては「まだまだ改善の余地がある」。手入力をしている部分を自動化するなど、業務の効率化を進める。

 商品面では昨年、スポーツウエアの「アンダーアーマー」のスクールスポーツウエア、ファッションブランドの「ミナ ペルホネン」とコラボレーションした制服を発表した。来春に向けても販売を強めていく。

 昨年は3年ぶりにリアルのスクールウエア展示会も開き、「東京、大阪、名古屋で多くの先生に来場してもらった」。今年は3会場に加えて福岡会場でもアピールする。

〈今春の納入は計画通り/来春に向け対応迅速化/明石スクールユニフォームカンパニー〉

 明石スクールユニフォームカンパニーは今春、性的少数者(LGBTQ)への配慮で広がるブレザー化の流れの中にあって、モデルチェンジ(MC)校からの受注を順調に獲得した。柴田快三専務は「営業、工場、物流、それぞれの段階で計画通りに対応できた」と話す。

 MCが急増する中、「入学商戦に向けてこなすことのできる計画を組んでいた」(柴田専務)ことから、大きな混乱もなく納入ができた。「競争販売しているものははっきりと販売期間を設けた」ことも奏功。一方、「その期間を超えると断らざるを得ないというケースもあった」と言う。

 中学校を中心にブレザー化が進む中、中学校向け商材の開発にも力を入れている。抗菌・抗ウイルス、ストレッチ性といった機能性に加え、SDGs(持続可能な開発目標)に関心が高まる中、再生ペットボトル由来の原料を100%使った素材の「+(プラス)リープ100」を採用した制服を訴求している。制服の再資源化を目的とする環境配慮型制服「リリングスクール」も採用校が増えてきた。

 来春もMC校のさらなる増加が見込まれる。このことから「備蓄生産などを含め、全てにおいて早い対応をしていく」。工場での生産性向上を目指すとともに、今年以上に海外生産も活用しながら対応する。AI(人工知能)を使った採寸も引き続き活用しながら効率化につなげる。

〈MC増で生産タイトに/来春は早期対応に注力/菅公学生服〉

 菅公学生服は今入学商戦で、性的少数者(LGBTQ)へ配慮する動きから、中学校を中心に広がるブレザー化の波に乗り、例年よりも多くのモデルチェンジ(MC)校からの受注を獲得した。一方で、これに対応するために生産面はタイトな状況となった。

 急増するMCに対応するため、来春に向けては原反の発注や備蓄生産など、早期対応に注力し、制服を安定供給できる体制を作る。昨年から今年にかけ、詰め襟専用工場だった大山工場(鳥取県大山町)をブレザーの工場に置き換えた。詰め襟やセーラー服を縫っていた工場でも時期によってはブレザーを縫うなど、年間計画を立てながら生産に当たる。問田真司専務は「ディテールの統一や素材を絞るなど、ブレザーの生産性を高める工夫も積み重ねていく」と話す。

 国内の生産キャパシティーには限界があることから、海外生産の比率も高める。

 受注のタイミングも前倒しする。問田専務は「1学期の中ごろまでに決めてもらえなければ翌年度に伸ばすなどの対応もしていかなければならない」と説明する。

 近年力を入れる教育ソリューション事業では今年、東京に事務所を設けた。関東圏での訴求を強める。問田専務は「制服だけでなく“人づくりの会社”として提案を強化していく」と話す。

〈学校の要望応える体制で/MC獲得が3割増/瀧本〉

 瀧本(大阪府東大阪市)は、今入学商戦の制服モデルチェンジ(MC)の獲得校数が前年比で3割増え、過去最高になった。4年前から「学校獲得プロジェクト」に取り組み、新規採用など成功事例の情報を全社で共有してきた。営業スタッフの業務効率化も図り、学校や販売店への訪問頻度を高め、学校との関係を深耕。男女兼用型のブレザーなど、学校のさまざまな要望にも対応してきたことが、MC採用校の拡大につながった。

 制服注文や採寸システムなど学校の業務効率化につながる「ガクハンネット。」の仕組みも前年の3、4校から今入学商戦では一気に32校にまで増えた。

 来入学商戦のMCについては既に今年の8割まで獲得。生産キャパシティーの確保が業界全体で厳しくなる中、新規物件の受注期間については例年より2カ月前倒しで受け付ける。昨年12月に自社縫製工場である徳島スクールタイガー縫製(徳島市)に、島精機製作所の一枚裁ち自動裁断機を導入。小ロット対応に貢献した。「納品に軸足を置く」(谷本勝治常務)として安定供給に努める。

 7月から8月にかけて社内の基幹システムを入れ替え、営業や生産で業務の効率化を推進。原材料費や電気代、物流費などさまざまなコストアップが進む中、スカートの台紙や着箱を廃止するなどでコスト削減も図る。

〈納品遅れなく販売好調/安心・安全テーマに関係作る/オゴー産業〉

 オゴー産業(岡山県倉敷市)の今春の入学商戦は、昨春よりも販売が好調に推移した。商品も計画的に安定生産できた。来春以降も学校との関係を構築しながら受注につなげる。

 片山一昌取締役は「昨年、多めに備蓄生産をしていたことなども影響し、今入学商戦は昨年よりも良い結果となった」と話す。中学校を中心にブレザーへのモデルチェンジ(MC)が増える中でも、商品を安定供給できる強みを生かし、納品遅れもなく対応できた。

 同社はセコムと共同開発し、2005年から販売する、GPS装着に対応した「制服プレセーブ」や、子供の危険回避能力の向上と地域の安全な環境作りにつなげる「全国地域安全マップコンテスト」など、“子供の安心・安全”をテーマとした提案を継続してきた。片山取締役は「愚直にやってきたことが評価されてきた」と話す。

 道徳心の啓発や寄付を通じて世界の子供たちを支援する「セーブ・ザ・チルドレン」とも協力する。同社はこのほど、セーブ・ザ・チルドレンブランドの制服を採用する学校を対象にした「セーブ・ザ・チルドレンスクールクラブ」の稼働を本格化させた。セーブ・ザ・チルドレンが発信する情報の提供などのほか、学校同士の交流ができるサイトとなる。片山取締役は「学校同士の横の連携を促し、強固なグループを作っていきたい」と語る。