スクールユニフォーム特集(13)/商社編/ニーズ捉え安定供給支える/チクマ/牧村/ナカヒロ/イシトコテキスタイル/東レアルファート/アカツキ商事/菅公学生服

2023年05月26日 (金曜日)

 今入学商戦では制服モデルチェンジ(MC)が一気に増え、過去最高になった。それでも供給面で大きな問題が表面化することなく、生地や製品の安定した納品を陰で支えているのが商社。来年も続く活発なMCに対して安定供給が継続できるように、情報共有や仕組み作りなどさまざまな改革を進める。

〈サステや抗ウイルス素材拡販/服育の取り組みも充実/チクマ〉

 チクマ(大阪市中央区)のキャンパス事業部は、来入学商戦に向けサステイナブル素材や抗ウイルス素材の拡販で制服モデルチェンジ(MC)が活発化する中学校での新規獲得を狙う。さらに、「服育」の取り組みも進め、セミナーなどを充実する。

 同社の今入学商戦向けの販売はMC校数の増加や販売先の発注の前倒しなどもあり増収となった。さらに、早期発注などの対策を進めたことで、スムーズな納品につながったと言う。ただ利益面は原材料価格の上昇もあり厳しかった。

 サステイナブル素材や抗ウイルス素材は今春の商戦でも順調に決まり、中学校での新規獲得に貢献した。来入学商戦に向けても両素材を軸に新規獲得を進めるとともに、早期発注などで納品の安定に努める。

 服育では、好評の性的少数者(LGBTQ)に関するセミナーで会場規模を広げるなど充実。6月17日札幌市、7月1日に神戸市、7月8日に熊本市でセミナーを開催する。宝塚大学看護学部の日高庸晴教授に加え、神戸と熊本では自身の体験を発信するわたる氏も講演する。

 また8月4日には「服から始めるアップサイクル」をテーマに「服育ラボ定期セミナー」を大阪阪市北区で開く。

〈提案の仕組み整え販促/柄物厳選した見本帳投入/牧村〉

 牧村(大阪市中央区)のスクールユニフォーム事業の今入学商戦は、ブレザー化が進んだことを受け、前年に比べ販売量を伸ばした。強みとする柄物ではウェブ上でさまざまな生地見本を掲載し、社内や顧客との情報共有が進んだことも奏功した。

 5年前に学生服メーカーを中心に取引先のみが閲覧できる専用サイトを設け、数千種類以上の柄を用意している。見本反も用意しており、見本反がない場合は、作ることもできる。画面上で選んだ生地をたたき台に別注で新たな生地の提案もできる。

 来入学商戦に向けてもブレザー化によって柄物の受注が活発化していることから、スラックスやスカートなどボトムス向けの柄物を厳選した見本帳「ジュニア・パレット・プラス」の販売を本格化する。既に一部で採用されつつある。

 生地はウール30%・ポリエステル70%の織物が中心で、家庭洗濯ができるほか、再生ポリエステルを使うことで環境配慮の面からも訴求できる。

 自治体が地域一帯で制服・標準服をブレザー化する動きもある中で、同見本帳では提案しやすいように20種類のチェック柄を用意した。ある程度の見本や色糸を備蓄し、QRで対応できる。30色を使い、ペア柄やオリジナル柄のバリエーションをCGで作成して提案するサービスも始めている。

〈MCの約3割に生地供給/接近営業でニーズ捉える/ナカヒロ〉

 ナカヒロ(大阪市中央区)のスクール部は、制服モデルチェンジ(MC)が急速に進んだことを受け、今入学商戦では生地供給で前年より30校ほど多い230校となった。昨年から現場と学校や販売店との距離を近くする“接近”と、仕入れ先や学生服メーカーとの綿密な情報共有による“展開”を継続し、学校のニーズに対応してきた成果が出始めている。

 今入学商戦では全国で700校以上がMCしたとみられ、うち3割に生地を供給。スクール部として今期(2023年11月期)の計画は前期比増収増益を見通す。学校や自治体、販売店との距離を縮めて密接な関係を築く接近による営業に加え、ニッケを中心とした仕入れ先や学生服メーカーなどと情報共有・商品開発などの展開によって学校のニーズをうまく捉えてきた。

 ただ、ブレザー化で柄物が増え、生地や縫製の生産面でタイトになりつつある。来入学商戦に向けては今年1月から生地投入を行いながら計画的な生産を進め、色糸の集約も実行し、安定供給に努める。

 今年に入り「大阪市女性活躍リーディングカンパニー」の三つ星・イクメン推進企業や、「健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)」に認定されるなど、働きやすい職場環境の形成にも力を入れ、人材の確保にもつなげる。

〈環境配慮型素材を充実/フェムテック関連も提案へ/イシトコテキスタイル〉

 学生服地販売のイシトコテキスタイル(大阪市中央区)は今入学商戦で制服モデルチェンジの増加を受け、前年を上回るペースで販売を伸ばした。そのため、今期(2023年5月期)は前期比で増収を確保しそうだ。ブレザー化が進んだことで、得意とする柄物を中心とした提案が増え、別注案件についても「細かい対応を心掛けている」(石床敏社長)ことが増収につながっている。

 来入学商戦に向けては、柄物の種類が増えていることから、新しい素材に集約を進めるとともに、機能素材や環境配慮型素材を充実させる。特に環境配慮型素材ではシキボウの繊維製品廃棄後に焼却処理される際の二酸化炭素を削減するポリエステル「オフコナノ」や、フェアトレード綿糸「コットン∞」(コットンエイト)使いの生地販売にも力を入れる。制服を教材として環境配慮について学ぶ機会も増える可能性もあり、提案に力を入れていく。

 女性特有の健康に関する問題の解決を目指すフェムテックを切り口にした企画も充実させる。以前から女子生徒用のショートパンツを展開しており、吸水や消臭といった機能性を高めるなどバージョンアップさせる形で商品開発を模索。学校からのアンケートなどで情報を集め、今後の商品企画に生かす取り組みも始めた。

〈強み生かし提案強化/ポリエステル高混率やIJなど/東レアルファート〉

 東レアルファートは、ポリエステル高混率・100%の生地やシャツ向けのニット地、インクジェット(IJ)による柄物など、同社の強みを生かした提案に力を入れる。

 中学校を中心にブレザーの採用が増える中、本間徳倉敷営業所長は「ポリエステル高混率100%の生地への要望が多くなってきた」と話す。「ポリエステルは後加工でさまざまな機能を付与できる」とし、今後もこの強みを打ち出しながら訴求する。SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まる中、再生ポリエステルなど、環境配慮型の生地もそろえ、販路を開拓する。

 制服のブレザー化に伴い、シャツ向けのニット生地の販売が好調。風合いやイージーケア性といった特徴を生かし、さらに販売を広げる。

 ブレザー制服では、ボトムが柄物であるケースが多い。そこで、同社ではIJによる柄物の提案を強める。「織物では難しいような柄を付与できる」点や、小ロット・短納期対応ができるメリットなどを伝えながら販売につなげる。

 2023年3月期の学生服向けの売り上げは前期比微減となった。主力の詰め襟制服向けの生地の需要が減少していることに加え、学生服メーカーの在庫調整の影響を受けた。

〈「マリ・クレール」ブランド訴求/ECシステム来春倍増めざす/アカツキ商事〉

 アカツキ商事(東京都墨田区)の今春の入学商戦はほぼ計画通りに進捗(しんちょく)した。ただ国内生産の逼迫(ひっぱく)化や標準服導入拡大への対応は年々厳しさを増している。

 事業内容の変化に対応すべく物流面での改革を進めてきた。従来の千葉県内の流通センターに加え、茨城県内に昨秋延べ2万5千平方㍍の物流センターをアウトソーシングで設置。首都圏エリアを対象に、ダイレクトデリバリーの拠点としての役割を果たしていく。

 デジタル技術で企業を変革するDX分野では、学校が抱えるさまざまな課題解決をサポートする学校ICTシステムの一環として校務分野をツールに加える。学生服のデジタル採寸や商品決済をオンラインで行うことができるECシステム「ニッケメイト」は今春約100校で実施。来春は200校に倍増させたい考え。

 来春に向けて「マリ・クレール」ブランドの学生服提案を進める。性的少数者(LGBTQ)への配慮やSDGs(持続可能な開発目標)への対応も視野に入れ、学校とのコミュニケーションを深めていく。

 関東地域の中小アパレル企業との共同縫製、共同仕入れ体制構築の取り組みは順調。今後はOEM/ODM事業の拡充につなげていく。

〈“セレクト制服”専門店をオープン/菅公学生服〉

 菅公学生服は今年1月、商業施設の「イクスピアリ」(千葉県浦安市)に、セレクト制服専門店「カンコーショップイクスピアリ」をオープンした。同業態としては東京・原宿店に次いで2店舗目となる。

 セレクト制服は、制服調のデザインを取り入れたファッションアイテムのこと。制服を着てテーマパークを楽しみたいという1995年~2010年ごろに生まれたZ世代が増えている。

 店舗ではレンタルサービスと販売を行う。レンタル期間は当日~2泊3日。定番的なデザインやカラフルな制服など、幅広いデザインの制服を用意する。ブレザーやボトム、リボンなど約1千点をそろえる。スタッフによるコーディネート提案や返却時のクリーニング代は無料だ。店内には荷物を預かるロッカーやフィッティングルーム、メークルームも完備する。

 オープン記念イベントでは、Z世代に人気のモデルやユーチューバーによるトークショーなどが開かれた。