東洋紡せんい/ケミカルリサイクルに挑戦/高密度ナイロン織物も可能に

2023年06月15日 (木曜日)

 東洋紡せんいは、漁網や廃プラスチック、廃タイヤなど廃棄物をナフサにまで分解し、ナイロン繊維の原料として利用するマスバランス方式ケミカルリサイクルに挑戦する。通常のケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルナイロンでは難しかった極細繊度糸などへの再生も可能になることから、同社の高密度ナイロン長繊維織物「シルファイン」などもケミカルリサイクルシステムの中で生産することができる。

 今回の取り組みは、東洋紡が参加を進めている海外の大手化学企業によるマスバランス方式ケミカルリサイクルシステムの一環。通常のケミカルリサイクルは生産工程で発生する端材などをカプロラクタムなど粗原料まで分解して再利用するものが多いが、同社が取り組むシステムは回収した漁網や廃プラスチック、廃タイヤなどを化学企業で基礎原料のナフサまで分解する。分解されたナフサは通常のナフサに組み込まれ、再びカプロラクタムなど粗原料に合成されてナイロン原料として利用する。

 マスバランス方式のリサイクルシステムに参加することでリサイクルした廃棄物の量に応じて化学企業から購入する粗原料にリサイクルナフサが使われていると認定される。購入する原料はバージン原料と基本性能が変わらないため、高品質な製品を作ることができるのがマスバランス方式の利点だ。

 今回、東洋紡はフィルムやエンジニアプラスチックでマスバランス方式ケミカルリサイクルの導入を進めているが、これに先駆けて東洋紡せんいがナイロン繊維で商品化に取り組む。マスバランス方式を採用することでリサイクル原料を含むナイロン繊維でも極細繊度糸などの生産が可能。このため国内外で高い評価を得ている高密度ナイロン織物「シルファイン」などもリサイクル原料使いにすることができる。

 近年、スポーツやアウトドア、ラグジュアリ―ブランドの間で環境配慮素材への要求が高まる。これら用途で豊富な実績を持つシルファインなど高密度ナイロン織物にリサイクル原料を導入することで、ブランド力を一段と高め、販売拡大につなげることを狙う。

 同社はこのほか、マテリアルリサイクルポリエステル繊維「エコールクラブ」、プレコンシューマ―マテリアルリサイクルナイロン繊維「ループロン」など環境配慮型商品の拡充に取り組む。マスバランス方式ケミカルリサイクルナイロン繊維も含めて、10月に幕張メッセ(千葉市)で開催される「サステナブルマテリアル展」や、11月に予定する同社総合展で披露する計画だ。