特集 環境(13)/新価値の創造へ/カケン/永井撚糸/QTEC/岡山県織物染色工協組

2023年06月27日 (火曜日)

〈LCA算定業務に注力/GHG削減にも取り組む/カケン〉

 カケンテストセンター(カケン)は、今年4月にサステナブル推進室を立ち上げ、環境対応やサステイナビリティーに向けたさまざまな取り組みを進めている。外部サービスでは、ライフサイクルアセスメント(LCA)算定業務などに力を入れる。国際NPOのザマイクロファイバーコンソーシアムにも加盟した。

 LCAは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(原料調達から製品生産、流通・消費、廃棄・リサイクル)における環境負荷や環境影響を定量的に評価する手法を指す。ISO(国際標準化機構)による規格「ISO14040」に基づいて算定する。

 カケンでは、温室効果ガス(GHG)排出量算定の支援などを行っているが、LCAの算定にも積極的に応じている。日本企業を想定し、算定にかかる期間は3カ月から長い場合は6カ月。どの工程で環境負荷が大きく、どのように対応するのかといったコンサル業務も実施する。

 カケン内の取り組みでは、GHG削減を課題とする。2021年度は海外拠点を含めた全体で約1万5千㌧のGHGを排出しており、2030年までに50%削減する計画を立てた。報告書や請求書のペーパーレス化などを進める。

〈環境配慮レザー備蓄販売/3タイプ各10色そろえる/永井撚糸〉

 特殊ミシン糸製造の永井撚糸(大阪市西区)は6月から環境配慮型レザー「バイオ・ビーガン・レザー」の備蓄販売を始めた。再生可能なバイオマス原料を配合した合成皮革と人工皮革で、捨てられる廃棄物を活用するアップサイクル素材。「アプレナ」(リンゴ)、「バンブレナ」(竹)、「ヒノキレザー」(ヒノキ)の3タイプ各10色を備蓄し、1㍍から販売する。

 アプレナはJAアオレン(青森県弘前市)から調達した国産リンゴジュースの搾りかすによるパウダーを表層のウレタンに25%配合。基布はレーヨン・ポリエステル使いの編み地の合成皮革だ。バンブレナは竹パウダーをウレタンに8%配合する。基布はナイロン・ポリウレタン製不織布の人工皮革。里山保全のため伐採された竹は、那賀ウッド(徳島県那賀町)から供給を受け、パウダー化する。

 ヒノキレザーはヒノキパウダーをウレタンに18%配合した。ヒノキパウダーは国内のヒノキ加工場で発生する木粉が原料で、ヒノキ(岡山市)から調達する。基布はレーヨン・ポリエステルによる編み地の合成皮革になる。3タイプとも生産は共和レザー子会社の共和ライフテクノ(徳島県鳴門市)が担う。

〈製品のFF脱落量測定に対応/日本と中国の3拠点で/QTEC〉

 プラスチックによる海洋汚染が問題視される中、最終製品から発生するファイバーフラグメント(FF、繊維くず)量を測定する規格「ISO4484―3」が制定された。日本繊維製品品質技術センター(QTEC)はこの規格に対応し、東京試験センターと大阪試験センター、中国の無錫試験センターの3拠点で顧客の依頼に応じる。

 家庭洗濯から排出されるFFの量を測定できる試験方法では、米国繊維化学技術・染色技術協会(AATCC)が発表した「AATCC TM212―2021」があり、QTECは2022年秋に試験の受注を始めた。問い合わせ件数は着実に増えていると言う。

 AATCC TM212―2021は繊維製品を構成する生地を対象としているが、今年5月に制定されたISO4484―3は最終製品を洗濯した際に放出されるFFの量を測定する。対象製品は、シャツ、パンツ、フリース、ブラウスなどの家庭洗濯可能な衣料品全般が含まれる。

 試験には「ISO6330」に規定されている洗濯機を使用(QTECは縦型洗濯機)する。このためラウンダオメーターと呼ばれる洗濯堅ろう度用の試験機を用いるAATCC TM212―2021と比べて、一般家庭での洗濯により近い形での試験になる。製品1着当たりの脱落量平均値などが分かる。

 通常、洗剤は使用しないが、顧客の要望があればAATCC HE標準洗剤を使った試験にも応じる。納期は1週間程度と想定している。国内と中国の3拠点での実施となるが、需要が増えれば「他の拠点での対応も検討する」としている。対象が異なるためAATCC TM212―2021試験も継続する。

〈倉敷染アピール/海外展出展も視野/岡山県織物染色工協組〉

 岡山県織物染色工業協同組合は、安心・安全な加工ブランド「倉敷染」の展開に力を入れている。2018年に展開を本格化させて以降、引き合いも増えてきた。今後は海外展への出展も計画するなど、海外販路の開拓に向けても動く。

 倉敷染は染色、製品加工において、独自の品質基準に沿った安全な加工を保証するブランド。世界的な大手アパレルメーカーを中心に構成する、有害化学物質排出ゼログループ(ZDHC)が作成したリストに準じた、300種以上の有害物質を対象とした独自基準を設定。各種工程を経ても有害物質が残留しない生地を倉敷染として認定する。

 ビジネス商談会の「プレミアム・テキスタイル・ジャパン」(PTJ)など、展示会に出展しながらPRを続けてきた。PTJでは例年、秋冬展に参加していたが、今年は5月に開かれた「PTJ2024春夏」に出展。「エシカル染」の名前でうたう草木染めなどで反響を得た。

 今後は海外展への出展を皮切りに、海外への販路開拓を視野に入れる。田代雄久理事長(豊和社長)は「海外展への出展が目的ではなく、これからの海外展開を見据えた仕組みを作っていく」と話す。

 BtoCなど、さまざまなビジネスモデルも模索する。組合企業で洗い加工のニッセンファクトリー(岡山県倉敷市)が来月、エシカル染めを施したTシャツを百貨店の催事で販売する。

 岡山県南部にある児島湖周辺に群生するヨシを再利用する「ヨシデニム」プロジェクトも進行している。刈り取ったヨシを繊維化したものを使ってデニムを開発した。ジーンズ製造卸のビッグジョン(倉敷市)が今秋、このデニムを使ったジーンズを、クラウドファンディングを活用して販売する予定だ。