特集 オフィス・サービスウエア23秋冬(6)/素材メーカー編/サステ素材の需要捉える/東レ/ニッケ/東洋紡せんい

2023年07月03日 (月曜日)

 新型コロナウイルス禍が収束に向かい、ようやくニューノーマルの市場の姿が見え始めてきた。国際情勢や為替に関連するリスク要因は残るものの、オフィス&サービスウエアの市況回復に先鞭(せんべん)をつけるのは注目度高まるサステイナブル素材だ。

〈「着心地」「快適性」前面に/特徴ある素材で切り込む/東レ〉

 東レのユニフォーム地の販売を主力とする機能製品事業部は今期(2024年3月期)、着心地や快適性を高めた機能素材の販売に力を入れる。ストレッチや汗染み防止、高通気などで他社との違いを出しながら販路を広げる。

 コロナ禍前に比べ「着心地の良さ」「楽に着用できる」といった素材を求める声が増えてきたことを受け、ストレッチや機能面で特徴のある素材を充実。「依然として引き合いが強い」というのが「ライトフィックス」で、特殊仮撚り技術を使用したポリエステル加工糸と、高度な生地設計との組み合わせによって適度なストレッチ性とストレッチバック性を実現した。

 昨年発表し好評なのが汗染み防止機能付き吸汗速乾「ソリテクト」で、サービス向けに採用が増加。一般的な片面撥水(はっすい)・片面吸水加工とは異なる仕組みで、特殊原糸と生地設計を組み合わせることによって吸収した水分の拡散・速乾性を高めた。

 他にも高通気「シャミラン」、防透け「スプリンジー」なども採用が増える傾向にある。ポリエステル100%の梳毛調テキスタイル「マニフィーレ」はストレッチやイージーケアなどの機能性と、ウールのような風合いからホテルなど接客サービス向けに提案が進む。

 ペットボトル再生繊維「&+」(アンドプラス)や、バイオ原料ポリエステル「エコディア」といった環境配慮型素材の販売も加速。ユニフォームでも需要が増えているナイロン素材に向け、バイオ原料ナイロン「エコディア ナイロン」の提案にも力を入れる。

〈環境配慮素材の浸透図る/民需は徐々に回復へ/ニッケ〉

 ニッケのビジネスユニフォーム部門は、官公庁向けユニフォーム需要が引き続き堅調に推移。新型コロナウイルス禍で低迷していた鉄道、航空業界向けを中心とする民需も徐々にではあるが回復の兆しを見せ始めている。

 一方、オフィスウエア向けは、金融業などで進む制服廃止の流れの影響を受けて苦戦。ただ、過去にも廃止後に制服の価値が再認識されて改めて導入されるといったケースもあり、今後の動きに期待する。企業の労働安全に対する取り組みが重視される中、炉前服をはじめとする難燃作業服市場の開拓も進めている。

 原毛の国際相場は、一時より落ち着きを見せているものの依然として高止まりの水準にあり、円安の影響も懸念される。

 サステイナブル素材のニーズの高まりに応えるため、ウールをベースにした機能性環境配慮製品のラインアップを「ニッケ グリーンマテリアルズ」として訴求。耐久性、防シワ性を備え、独自のインスパイラルスピン製法でウール本来の風合いとすっきりとした仕立て映えを実現できる「ミライト」をはじめ、ウールにバイオ由来繊維と再生PETを複合したハイブリッドエコ素材「プラビナ」、マイクロプラスチックの放出を大幅に削減する「ブリーザ」「ニッケ エクストラファイン ウィズ レニュー」などを展開。

 使用済みユニフォームの回収に当たっては、エコシップやエコネットワークを活用。循環型資源リサイクルについても検討を始めている。

〈サービス向けニット地強化/今期は8%増収計画/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいのユニフォーム事業部は今期(2024年3月期)、新型コロナウイルス禍明けで需要が活発になってきたサービス向けや別注を中心に販売を伸ばし、前期比8%の増収を計画する。

 外食産業などを中心に需要が戻りつつあるサービス向けの販売が回復してきており、特に機能ニットシャツ地「Zシャツ」「Eシャツ」が別注を含めて受注が堅調。ニットのストレッチ性をそのままに織物に近い物性や風合いを実現した「コンフォネックス」も採用が増えてきた。高捲縮(けんしゅく)糸の膨らみなどを利用して耐久性を高めている。

 環境配慮では再生ポリエステル「エコールクラブ」の販売も強化。「ニットだけでなく織物も含めて快適性や軽さ、動きやすさを追求した素材のバリエーションを増やす」ことでさまざまなニーズを捉える。

 北陸での織布、加工場の生産キャパシティーの確保が難しくなる中、海外の調達先を増やす。また、富山事業所の紡績・織布工程がマレーシア子会社の東洋紡テキスタイル〈マレーシア〉に移管されることを受け、「開発から国内外で同時にできる」体制へと強化する。

 昨年4月、10月に値上げを実施したが、価格転嫁が追い付かず今年4、5月にかけて再度値上げした。それでもコンフォネックスなど特化素材を軸に、販売量は「昨年以上に伸ばせる」との見方を示す。