ITMA2023レビュー(8)/さまざまな分野で新技術

2023年07月14日 (金曜日)

 センサーや人工知能(AI)を活用した稼働管理の技術も進展した。初出展の梶製作所(石川県かほく市)は、AIとカメラを使った自動反物検査機を出品し、ナイロン生地での実演を行った。画像から汚れやシワ、織段など5種類の欠点を検知し、1分当たり30㍍の検査が可能。検査結果のデータベースを基にAIが判断して欠点を見つける。あらかじめ定めたルールに基づく欠点判断とAIによる判断を組み合わせることでスピードや精度が高くなる。検反機での導入だけでなく、カメラとシステムを織機など既存の設備に取り付けて稼働管理に活用することもできる。

 デジタルプリントでも新しい技術が披露された。 3Dプリンターのストラタシス(米国)は、樹脂を生地に直接3Dプリントする技術を披露した。材料になるフレックスレジン「ヴェロエコ」と3Dプリンターを組み合わせたもので、アクセサリーのような立体柄を生地に付与できる。

 3Dプリントの高さや形、デザインなどは自由に設定でき、フルカラー、半透明、剛性、柔軟性などさまざまなプリントが可能。シャツやドレス、ジーンズなどの衣類に加え、スニーカーやバッグなどにもプリントできる。3Dプリントの色使いや高さ、形などを容易にデザインするソフトウエアも展開する予定。

 糸のデジタル染色システムを展開するトゥワイン(イスラエル)は、生産性を高めた機種を披露した。デジタルプリントで水を使わず必要な長さだけ糸染めできる。従来は最大1時間当たり1800㍍だったが、新機種は量産対応も可能とした。送り出しを3倍に高め、従来の1錘から4錘同時処理を可能とすることで生産性を12倍に高めた。

 道下鉄工(堺市)はこれまで床材の展示会「ドモテックス」に出展していたが、今回のITMAに初出展した。社名は「MIC」としてブースを構え、実機の展示はなかったが、モニターなどでリニアモーターを使った高速タフトカーペット機を訴求した。従来比2倍の生産性を実現する。インドや中東などさまざまな地域から訪問があった。リニアモーターによる柄出し装置は2019年に特許を取得している。

 JUKIは生地を縫い合わせるのではなく超音波や熱で接着するボンディング機「JEUX7510」を提案した。水着やコンプレッションウエアなどでニーズが高まっており、テキスタイルメーカーや染工場などからも注目された。

 前回展から今回展までの4年には新型コロナウイルス禍があり、都市封鎖など研究開発が思うように進まない期間もあった。世界的なサプライチェーン混乱による部品不足の問題などもあった。開催前にはその影響も懸念されたが、今回も多くの新技術が発表され、出展社からは「従来以上に熱心に新しい技術を探しにくる来場者が増えた」との声も聞かれた。

 ITMAは今回も生産現場を変える新しい技術が発表される場として存在感を示した。次回は2027年9月16~22日、ドイツ・ハノーバーで開催される。

(おわり)