帝人、福井経編興業など/心・血管修復パッチが製造販売承認/23年度中に販売へ

2023年07月14日 (金曜日)

 帝人と福井経編興業(福井市)、大阪医科薬科大学が共同開発を進めてきた心・血管修復パッチ「OFT―G1(開発コード)」が、今月11日付で厚生労働省から製造販売承認を取得した。「シンフォリウム」の名称で2023年度中に展開を開始し、先天性心疾患患者の課題解決につなげる。

 同製品は、吸収性の糸と非吸収性の糸による特殊構造のニットを吸収性の架橋ゼラチン膜で覆い、一体化したシート。手術によって心臓や血管に縫着された後、ゼラチン膜や吸収性糸が徐々に分解され、自己の組織が製品を含むように形成される。異物反応や石灰化などが発生しにくく、再手術リスクの低減が期待される。

 先天性心疾患治療では、パッチ状の医療材料を用いて狭窄部や欠損部の血液循環を正常化する手術が行われる。新生児や幼児のうちに手術を行うことが多く、成長していく中で埋植したパッチが異物反応によって劣化するケースがあるほか、サイズ増大がないため手術部の狭窄が生じる場合もある。

 この課題に対し、大阪医科薬科大学の根本慎太郎教授が「自分の組織に置き換わり、サイズ増大に対応できるパッチ」のアイデアを打ち出した。福井経編興業が経編み技術を駆使し、伸張可能なパッチの試作品を考案、完成させた。そこに製品化に向けた設計開発や薬事申請などの役割を担う形で帝人が参画した。

 14年から3者で共同開発を行い、18年4月に先駆的医薬品等指定制度(旧先駆け審査指定制度)に指定され、19年に開始した臨床試験が22年に完了した。今年1月に製造販売を担う帝人メディカルテクノロジーが厚生労働省に製造販売承認を申請し、今回の承認取得に至った。

 19年からの臨床試験では、同製品に起因すると考えられる不具合や再手術は発生していない。今後、帝人メディカルテクノロジーを中心に早い段階での販売開始を目指す。

 市販後には、手術症例の集積と解析を継続し、長期の有効性と安全性の確立を図る。海外事業展開や要素技術を応用した新製品のラインアップ拡充にも取り組む。