2023年夏季総合特集(2)/海外市場で成長する/三起商行/中橋莫大小
2023年07月25日 (火曜日)
日本の繊維製品の海外市場向け比率は高いとは言えず、その開拓は悲願でもある。成功事例を紹介する。
〈三起商行/海外事業の拡大加速/23年度は出店ラッシュ〉
三起商行は「ミキハウス」で、海外での店舗展開に力を入れている。昨年12月、シンガポールのマリーナベイサンズに東南アジアでは初めてとなる旗艦店をオープンした。
海外事業は2023年度も勢いを維持しており、今期に入って以降も出店を加速。台湾、中国・長春、上海に相次いで進出した。
海外売り上げ(海外売り上げとインバウンド客が日本国内で購入した額との合計)は23年2月期で既に60%まで拡大しており「今期はさらに増える」と見通している。
同社は1987年、パリに路面店をオープンしたのを皮切りに世界各国へ進出。2013年4月には英国の老舗百貨店ハロッズに日本企業として初めて出店を果たした。
マリーナベイサンズ店では事前に一切、PR活動を行わなかったにもかかわらず、評判が口コミで広がり「当初の想定を50%以上、上回る勢いで来店客が増加している」と話す。
例えば、シンガポール在住の中華系の女性は100万円を投じ2日間で店内の全アイテムを購入してしまったため、「早く新しいのを入荷してほしい」と要請されたと言う。
今年は3月に台北の新光三越に、6月に台中の新光三越に、7月に長春に出店。8月に上海に出店を予定する。これで中国本土の店舗数は59店となった。今期は「少なくともあと10店舗は増やしたい」と海外出店への意欲を示している。
今後は「思った以上にニーズが強い」という富裕層をターゲットにした「ゴールドレーベル」の商品ライン拡充に取り組む。23春夏では30品番を販売しており、23秋冬から新たに18品番をラインアップする。
ゴールドレーベルは希少性の高い海島綿やカシミヤなどで商品化した超高級ライン。
価格は海島綿Tシャツが3万5200円、海島綿トレーナーが3万8500円、カシミヤ&シルクセーターが8万8千円、パーカが8万3600円、ジャケットが8万8千円、ダウンコートが24万2千円、ファーストシューズが4万6200円――などとなっている。
製品の価格は関税や物流費がかかるため、日本国内の製品価格に比べ30~50%割高になる。にもかかわらず富裕層を中心に好調を続けているのは、「一つ一つ丁寧に作ったものを丁寧に売ってきたビジネスモデルに対する顧客からの信頼があるため」と分析している。
同社は来年、30人前後の新卒採用を計画しており。その半分を外国人が占める見通し。グローバル事業部には中国を担当する5人の中国人スタッフが配属されている。
〈中橋莫大小/ルームシューズで海外進出/仏・百貨店で期間限定販売も〉
丸編み製品のOEM企業、中橋莫大小(東京都墨田区)は、ルームシューズの自社製品「メリッパ」の海外展開を強化している。フランスのインテリアとデザインの国際展示会への出展を機に欧州企業との取り組みが拡大し、今後も欧州市場の開拓に力を入れる。クリスマスシーズンにはフランスの百貨店での期間限定展開も決まっている。
メリッパは、衣料品に用いられる生地を使って作ったルームシューズの自社製品。かかと部分に伸縮性のあるリブニットを配することでフィット感を高めているほか、軽量感やリバーシブルで表と裏の両方の色・柄が楽しめるのも特徴だ。家庭で洗濯することもできる。
2013年2月に国内で販売を始めたが、海外展開は早く、16、17年ごろに米国市場に進出した。500足の注文でスタートし、その後ボストンやシカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどの8~9店舗に拡大した。年間2万足に達するが、取り組み先との独占契約が今年12月で終了し、24年から新体制で成長を目指す。
順調に拡大しているのが欧州市場だ。顧客開拓に向け、22年9月にインテリアとデザインの国際展示会「メゾン・エ・オブジェ」に初出展した。「取引関係のある顧客がいたわけではなく、大きな勝算があるわけでもなかった」(中橋智範社長)が、結果的に来場者から良好な反応が得られた。
21カ国・140社と接し、このうち8カ国・18社から1407足の受注を獲得した。継続出展した23年1月展では接客数は23カ国・176社に増え、受注数も1885足(10カ国・25社)に達した。フランスが多いが、イタリア、ベルギー、スイス、デンマーク、イスラエル、スペイン、韓国などの企業から注文が入った。
メゾン・エ・オブジェには今年9月展も継続出展する予定で、リピート客を含めて、需要を着実に取り込んでいきたいとした。メリッパを知る外国人は少しずつ増えており、同社のインスタグラムでも外国人のフォロワーが目立ってきたと言う。東京都墨田区のメリッパ直営店を訪れる訪日外国人客も少なくない。
今年6月に欧州市場向けの電子商取引サイトを開設し、クリスマスシーズンにはフランスを代表する百貨店での期間限定販売も予定している。中橋社長は「メリッパのようなアイテムが海外には少ない。そうした独自性と、見た目のかわいらしさなどが人気の理由」と分析している。
再成長を狙う米国市場については、ホームページなどを見た顧客などから問い合わせが入っているとし、手応えは感じている。ライフスタイルグッズや雑貨関連展示会への出展も検討中で、「新体制でも年間2万足ぐらいは目指したい」(中橋社長)とした。