2023年夏季総合特集(7)/成長に向けたわが社の商品・取り組み/シキボウ/ダイワボウレーヨン

2023年07月25日 (火曜日)

〈シキボウ/認知度高まる「彩生」/イベントなど通じて〉

 シキボウは、グループの新内外綿と取り組む繊維廃材のアップサイクルシステム「彩生」を活用した取り組みを広げている。音楽イベントでTシャツを回収し、翌年のイベントに使用するTシャツのアップサイクルプロジェクトを支援。業界だけでなく一般消費者へも認知度を高める。

 8月19、20日に国営讃岐まんのう公園(香川県まんのう町)で開かれる中四国最大級の野外ロックフェス「モンスターバッシュ」や、9月16、17日に大阪城ホール(大阪市中央区)で開かれる「ロックロックこんにちは!」でTシャツを回収。カット・反毛を経て、わたに戻した後、バージン綿と混ぜ合わせて紡績し、Tシャツへと再生する。

 ユニフォームメーカーがSDGs(持続可能な開発目標)に関連する提案の一環として、彩生を発信する動きも活発になってきた。23秋冬向けの新商品展示会ではアイトス(大阪市中央区)や桑和(岡山県倉敷市)などが彩生をアピールした。

 アイトスでは、彩生を通じて海外の縫製工場で出たオックスシャツの裁断くずをアップサイクルしたTシャツを会場のスタッフが着用して来場者に応対した。独自商品を訴求したいユニフォーム店へ彩生でアプローチする。リサイクルしたものが“見える化”できる仕組みの一つとして発信していく。

〈日清紡テキスタイル/循環経済型事業の実現へ/シャツ再生PTで推進〉

 日清紡テキスタイルは、シャツ再生プロジェクト(PT)による綿製品の繊維to繊維リサイクル技術の確立を進めている。2022年からプロジェクトに乗り出し、吉野川事業所(徳島県吉野川市)のパイロットプラントが4月から稼働。廃棄された綿を安全性の高いイオン液体によって溶解させ、強度の高い再生セルロース繊維を作る技術を確立した。

 新技術により引っ張り強度5・5cN/デシテックス以上のフィラメントの試作に成功。ポリエステルと同等かそれ以上の強度を持つ。量産への条件を探りながら、年内にはシャツのサンプルを作る。来年には東京シャツを通じてシャツ製品を回収し、サーキュラーエコノミー(循環経済)型事業の実現を目指す。

 糸から織り、加工の技術を組み合わせ、独自の素材開発にも力を入れる。ユニフォーム向けでは綿100%でありながら20%以上のストレッチ性を持つ織物を開発。綿100%の形態安定加工のノーアイロンシャツ「アポロコット」では20年に制菌・防汚性能で100回洗濯に対応、21年にストレッチ機能を追加するなど、少しずつ進化させてきた。「消費者が良さを実感できる」開発によって市場での競争力を高めていく。

〈ダイワボウレーヨン/機能レーヨンを世界に/循環経済への参画進める〉

 ダイワボウレーヨンは、日本唯一のレーヨンメーカーとして、得意の機能レーヨン短繊維を国内だけでなく世界市場に発信することを目指す。そのために、世界的に要請が高まる環境配慮の取り組みを進め、循環経済の仕組みに積極的に参画する。

 現在、日本でレーヨン短繊維を生産するのは同社だけになる。「引き続き製造設備のメンテナンスをしっかりと行い、国内の需要家への供給責任を果たすことが第一」(中島龍巳常務)と強調する。その上で、得意の機能レーヨンを世界に発信する。特に中国、インド、韓国、台湾などアジア市場を重視する。

 海水中生分解性を確認した「エコロナ」や廃棄綿布などを原料とするリサイクルレーヨン「リコビス」など環境配慮型素材としてレーヨンを打ち出す。そのために国際的な認証の取得や環境関連のイニシアチブやプログラムに積極的に参加する。さまざまなリサイクル、アップサイクルの取り組みが進められているが、こうしたアライアンスにも積極的に参画し、循環経済の実現に取り組む。

 機能レーヨンを生かし、再生セルロース繊維として石油由来素材の代替需要を開拓することで、環境負荷低減に貢献することも目指す。

〈新内外綿/杢糸へ原点回帰/唯一無二の糸を紡ぐ〉

 「他社にまねできないことが成長力になる。当社にとってそれはやはり杢(もく)糸」と原点回帰を強調する新内外綿の田邉謙太朗社長。「番手、色の出し方、混綿のノウハウ、製造工程の全てで二つとないモノ作りができる」と話す。

 日本における杢糸の歴史と新内外綿は切っても切れない関係だ。なぜなら同社が日本で初めて国産杢糸を開発したからだ。

 同社の開発担当が1970年代に市場調査で米国を訪れた時に初めて杢調のTシャツやスエットを見て、その魅力に目を奪われたのが出会い。

 当時、日本市場に「杢糸」という言葉も存在しなかった。米国を視察した開発者が現地で魅力を感じた杢製品を見本として持ち帰り、糸の開発に着手し、糸の表面に出る模様が銘木の美しい杢模様に似ていることから、「杢糸」と命名した。

 同社の杢糸のバリエーションは実に多彩だ。植物由来の染料を使った優しい淡い色合いのボタニカルダイはロングセラーの一つ。裁断くずなどの廃棄繊維を再び糸にするアップサイクルシステム「彩生」も杢糸のノウハウを活用したもの。最近ではヘンプ混、カシミア混、シルク混といったこれまでにない杢糸の新天地にも挑む。