技術の眼/ロビット/インティメイツ/泉工業/帝人、福井経編興業/萩原工業/スタイレム瀧定大阪

2023年08月03日 (木曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈ロビット/AI外観検査の新製品〉

 ロボットなどの設計・製造・販売を行うロビット(東京都板橋区)は、人工知能(AI)外観検査ソリューションの新製品を開発した。織物や不織布など、複数のドラム・ロールを使って製造・運搬する「ロールtoロール」生産方式に対応する。品質や外観上は問題がない繊維のよれなども検出できる。

 同社が展開するAI外観検査ソリューション「TESRAY」(テスレイ)は、独自のハードウエア技術とAI技術を活用した画像処理アルゴリズムによって外観検査を自動化する。

 新開発の「テスレイ Rシリーズ」は、「ロールtoロール」方式で生産されるシート状製品の外観検査ができる。AIに加え、コンベアや撮像光学ユニットなどのハードウエア、装置を制御するソフトウエアを搭載したオールインワン型で、生産ラインの前後設備との連携にも対応する。

 養生テープの生産ラインに導入した企業は、「外観検査で異常検出率100%を実現した」と話す。

〈インティメイツ/筋肉の動き良くする下着〉

 下着ブランド「シュット!インティメイツ」を展開するオンワードグループのインティメイツ(東京都港区)は、着用するだけで筋肉の動きをスムーズにする効果が期待できるコンディショニングランジェリーを8月下旬に発売する。理学療法士と共同開発した。ブラジャー、ビキニショーツ、ロングガードルの3アイテムで23秋冬の目玉商品として投入する。

 3アイテムはいずれも、肌に触れる側の生地に仕掛けを施した。三角形などさまざまな形の複数の「パーツ」を縫い付け、ボンディングしている。パーツの形や大きさ、位置、素材感には全て意味があると言う。着用時にそれぞれのパーツが肌の特定の箇所に触れることで、腹直筋や広背筋といった体の各筋肉に作用して筋肉の動きを良くする効果が期待できると言う。

 筋肉の動きがスムーズになると姿勢が良くなり、巻き肩の解消やバストアップ、ヒップアップ、O脚改善などボディーラインを整える。補正下着とは異なり、締め付け感はない。同ブランドのおしゃれなデザインや軽い着心地に、ボディーラインを整える機能を備えた新商品だ。

〈泉工業/ラメ糸で繊度35T実現〉

 ラメ糸製造卸の泉工業(京都府城陽市)はこのほど、仕上がり繊度35デシテックス(T)の極細ラメ糸を開発した。まずは織ネーム向けに提案するほか、合同展示会などにも出展することで用途の開拓を進める。

 極細ラメ糸は、アルミ蒸着したポリエステルフィルムを300切(0.1ミリ幅)にスリットしたラメを使用する。これをタスキ撚りにすることで仕上がり繊度35Tのラメ糸を実現した。色はゴールドとシルバーの2色を用意する。

 織ネーム向けの提案に乗り出す。近年、織ネームは極繊度糸による高密度製織で複雑な柄や細かな文字、文章などを表現する傾向が強まった。今回開発した極細ラメを使用することでラメ糸使いでも模様、文字、文章などを精密に表現することが可能だ。

 同社のラメ糸はこれまでも有名ジーンズブランドの織ネームに採用されるなど実績が豊富。織ネームメーカーの協力で試織もしている。

〈帝人、福井経編興業など/心・血管修復パッチが製造販売承認〉

 帝人と福井経編興業(福井市)、大阪医科薬科大学が共同開発を進めてきた心・血管修復パッチ「OFT-G1(開発コード)」が、7月11日付で厚生労働省から製造販売承認を取得した。「シンフォリウム」の名称で2023年度中に展開を開始し、先天性心疾患患者の課題解決につなげる。

 同製品は、吸収性の糸と非吸収性の糸による特殊構造のニットを吸収性の架橋ゼラチン膜で覆い、一体化したシート。手術によって心臓や血管に縫着された後、ゼラチン膜や吸収性糸が徐々に分解され、自己の組織が製品を含むように形成される。先天性心疾患治療では、パッチ状の医療材料を用いて狭窄(きょうさく)部や欠損部の血液循環を正常化する手術が行われる。新生児や幼児のうちに手術を行うことが多く、成長していく中で埋植したパッチが異物反応によって劣化するケースがあるほか、サイズ増大がないため手術部の狭窄が生じる場合もある。

 この課題に対し、福井経編興業が経編み技術を駆使し、伸張可能なパッチの試作品を考案、完成させた。そこに製品化に向けた設計開発や薬事申請などの役割を担う形で帝人が参画した。

〈萩原工業/再生ブルーシート発売〉

 国内ブルーシート製造でトップシェアを持つ萩原工業(岡山県倉敷市)は8月、同社製の使用済みブルーシートを回収・再生し、再び原料として使用したブルーシートを発売する。販売先は当面限定するが、回収拠点などを設けて取り組みを広げていく考えだ。

 ブルーシートは廃棄後、多くが焼却処分されている。一部マテリアルリサイクルされている再生ペレットもあるが、再生ペレットの品質問題からブルーシートの原料とはならず、カスケードリサイクルされているという。

 同社は、J&T環境(川崎市)と連携して使用済みブルーシートを回収して新たなブルーシートを製造する水平リサイクルプロジェクトに取り組む。ブルーシートの原料となる改質ポリエチレンにペレット化し、再生原料を25%使用したエコマーク認定のリサイクルブルーシートを打ち出す。

 同社は、さまざまな廃プラスチックの粉砕から溶融、ペレット製造までを一体化し、再生プラスチックの原料となるペレットを作る再生ペレット製造装置を製造しており、その技術も生かした。

〈スタイレム瀧定大阪/溶融紡糸繊維の作成に成功〉

 スタイレム瀧定大阪(大阪市浪速区)は、サステイナビリティーを軸とした新素材や新事業の開発の一環として、バイオプラスチック新材料研究開発・製造の事業革新パートナーズ(川崎市)と共同開発に取り組み、ヘミセルロースを活用した溶融紡糸繊維の作成に成功した。

 分散染料による染色にも成功し、今後も糸の強度や伸度などの向上のため引き続き共同開発を進めていく。

 ヘミセルロースとは、植物を構成する細胞壁に含まれる多糖類の総称(植物を構成する細胞壁は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンの三つで構成)。またヘミセルロースは資源として利用される機会が少ない未活用バイオマス原料でもある。

 両社は2021年からヘミセルロースの繊維化に向けて共同開発を進めてきた。事業革新パートナーズの樹脂製造技術と、スタイレム瀧定大阪の繊維に対する知見を生かし開発を進める中で、ヘミセルロースを活用した溶融紡糸繊維の作成と、溶融紡糸繊維を分散染料によって染色することに成功した。