帝人/収益性改善が着実に進展/「確かな一歩」踏み出す
2023年08月09日 (水曜日)
帝人の「収益性改善に向けた改革」が着実に進展している。改善に取り組む課題3事業では、アラミドの回復が計画を上回る水準で推移するほか、複合成形材料とヘルスケアの改善も計画通りに進む。内川哲茂社長は「収益性の改善に確かな一歩を踏み出した」とした上で、「引き続き危機感を持って改革に注力する」と強調した。
今年2月に公表した収益性改善策では、課題事業の収益性改善と役員・スタッフの経営体制変革を中心に全社で構造改革を断行し、2023年度までに300億円以上の収益改善を目指すとした。23年4~6月の連結業績は、アラミドと複合成形材料を含むマテリアルが23年1~3月比で大幅増益となるなど、施策の効果が発現している。
複合成形材料では、一時要因からの復旧、約130項目の改善策・モニタリング体制強化推進、選択と集中を実施。一時要因に関しては、設備故障から復旧して安定稼働化の途上にあるとした。選択と集中では、中国での自動車向け事業からの撤退を決め、テイジン・オートモーティブ・テクノロジーズ〈唐山〉の株式を譲渡する。
アラミドでは、複合成形材料と同じ一時要因からの復旧などの施策を進めた。一時要因では、原料工場の火災の影響は22年度中に前倒しで回復した。天然ガス価格高騰への対策では、先物予約の実行などに取り組んだ。今後は、設備能力増強の効果の早期発現を目指す。
ヘルスケアは、医薬品導入活動や既存製品極大化と言った施策を計画通りに推進中。構造改革の一環である創薬研究機能の水平分業化では、アクセリード社と創薬研究に関する合弁会社設立の契約を締結した。
内川社長は「数字上は改善しているが、取り組まなければならない課題は多い」とし、「収益基盤をしっかりと固める。危機意識をなくすことなく改革を続ける」とした。
〈中国の複合成形材撤退〉
帝人は、中国の自動車向け複合成形材料事業から撤退する。複合材料製品製造・販売のテイジン・オートモーティブ・テクノロジーズ〈唐山〉の株式を、高性能複合材料を販売する青島科達時代智能装備に譲渡する。今後は、重点地域の北米拠点に集中的な資源配分を行い、収益性の改善につなげる。
テイジン・オートモーティブ・テクノロジーズ〈唐山〉は、2015年1月設立。資本金は6億2400万元で、帝人〈中国〉投資が53%、テイジン・オートモーティブ・テクノロジーズが47%を出資。23年3月期の業績は売上高36億8千万円、営業損失19億8700万円だった。
株式の譲渡は24年3月を予定し、関係当局などの許認可を取得次第速やかに実行するとしている。24年3月期連結業績に約64億円の関係会社株式売却損を特別損失として計上予定で、業績見通しに織り込み済み。
〈大幅減益/23年4~6月〉
帝人の23年4~6月期連結決算は、売上高2448億円(0・4%増)、営業利益42億1900万円(60・8%減)、経常利益49億9800万円(65・0%減)、純利益18億5700万円(74・5%減)で大幅な減益となった(短信既報)。工場固定費などの増加が響いた。
繊維・製品事業は、売上高755億円(2・6%増)、営業利益31億1100万円(77・0%増)で増収大幅増益を達成した。産業資材分野は水処理フィルター向けポリエステル短繊維、インフラ補強材の販売が順調。衣料繊維分野は北米と中国向けのテキスタイル・衣料品の販売が好調に推移した。
通期の業績予想は、売上高1兆500億円(3・1%増)、営業利益350億円(172・1%増)、経常利益310億円(240・7%増)、純利益130億円(前期損失)。