シキボウ/4カ国軸に新ビジネス加速/“適地生産”で拡大へ
2023年08月22日 (火曜日)
シキボウはインドネシア、ベトナム、タイ、台湾を軸にした新ビジネスを加速している。加藤守取締役常務執行役員繊維部門長は、各国での「得意な生産が明確になり、特徴のあるモノ作りを提案できる」と話す。適地生産で素材の強みを発揮するとともに、グループ会社の新内外綿との連携による新ビジネス創出にも取り組む。
インドネシアでは紡織加工会社のメルテックスが2021年の火災から完全復旧した。混打綿機、カード機などの紡績前工程の設備や織機を新設し、5月から稼働を本格化。メルテックスを含め、海外4カ国の協力工場を通じて「フルラインアップの提案」ができるようになった。
紡績糸であれば、インドネシアがポリエステル・綿混、CVC(綿混率50%以上)、二層構造糸、ベトナムが中番手中心の綿糸、タイが杢(もく)糸・「テンセル」モダール糸、台湾が合繊糸――といった供給が可能。リスク分散も考慮し、インドネシアで純綿糸、ベトナムでポリエステル・綿混糸の供給もできるようにした。
メルテックスでは現状、生産の6割が日本向けだが、全体を底上げしつつ、現地向けや第3国への輸出にも力を入れる。
ベトナムでは製品ビジネスを拡大しているが、今後は現地で決済をできるようにするため、年内に現地法人を立ち上げる。
タイでは新内外綿の子会社JPボスコを活用して杢糸の調達だけでなく、繊維廃材のアップサイクルシステム「彩生」によるリサイクル糸も提案できる。カンボジアの縫製工場で出た端材をタイに輸送し、彩生によってTシャツにするといった動きも出てきた。
新内外綿では新型コロナウイルス禍前に、タイから米国へエージェントを通じて糸や生地の輸出実績があった。シキボウもそのエージェントと契約を交わし、同社の差別化素材を絡めた対米輸出の拡大をにらむ。
今期(24年3月期)は3カ年の中期経営計画の2年目となる。初年度から海外ビジネスの拡大を計画していたが、コロナ禍で計画が1年遅れた。加藤取締役は「下半期からいろいろな戦略が徐々に現実的な数字になって表れてくる」と話す。
〈ユニフォーム地の価格転嫁課題〉
シキボウの繊維部門の23年4~6月期は売上高が47億4800万円(前年同期比12・2%増)、営業損失2億900万円(前年同期は2億2500万円の損失)だった(一部既報)。赤字幅は縮小したものの、加藤取締役は依然として「ユニフォーム地の価格転嫁が進んでいないことが課題」との認識を示した。
中東の民族衣装用生地輸出やカジュアル向けのニット製品が好調に伸びたことで赤字幅が縮小。ユニフォーム地の販売はコロナ前の水準に戻しつつあるが、利益面で足を引っ張った。
原材料や原燃料によるコスト高が続いており、値上げ要請が終わってからの「コストアップも激しく、値上げが追い付かない」状況が続く。収益改善のためにも「引き続き価格改定をお願いしていくしかない」として取引先に理解を求める。