特集 メンズウインター(1)/買い替え需要捉えアウター拡充/オンワード樫山/三陽商会/オッジ・インターナショナル/コイズミクロージング

2023年08月25日 (金曜日)

 出社や外出が増え、大手アパレルの業績も回復している。23秋冬はコートやジャケットなどのアウター強化の動きが顕著だ。オンワード樫山の「五大陸」はコートの生産数量を前季比1.5倍に拡大する。三陽商会の「ザ・スコッチハウス」もアウター・ジャケットの生産数を昨シーズンに比べ15%弱ほど増やす。取り外し可能なライナーを付けるなどして、秋口から春先まで長く着られるようにするという。各社ともアフターコロナを見据え、買い替え需要の取り込みを狙う。

〈オンワード樫山「五大陸」/ダウンやウールコート強化〉

 オンワード樫山の「五大陸」は定番ダウンコートや、防風など機能性を高めた新商品のウールコートを提案する。買い替え需要が継続すると見込み、コートの生産数量を増やして対応する。

 スーツの裾がちょうど隠れる「ミノテックADSダウンコート」(6万9300円)は、改良して投入する。既存色のブラックとネービーに加え、新色のライトグレーを追加。裏地はベージュだが、23秋冬は光沢感を少し抑えたマットなベージュにすることで、ビジネスシーンでの使い勝手を高めた。

 帝人フロンティアが開発した高撥水(はっすい)素材「ミノテック」を使用した。ADS(アドバンスドダウンシステム)は羽毛を仕切るキルトステッチの代わりに特殊なテープを用いたダウンの構造。内部を空気が循環するため、羽毛量を抑えても従来と同程度の保温性がある。見た目もスッキリした印象だ。

 「御幸毛織ハイブリッドウールコート」(12万1000円)は、透湿や防水・防風機能を備えた新商品。スーパー120ウールを使ったヘリンボーン素材に、極薄のポリウレタンラミネートフィルムをボンディング加工している。丈感はやや長め。ブラックとネービー、ベージュの3色をそろえる。

〈三陽商会「ザ・スコッチハウス」/編み地のジャケブル投入〉

 三陽商会が展開する「ザ・スコッチハウス」はジャケット型ブルゾン(ジャケブル)や、ゴアテックスを使用した多機能コートを提案する。秋口から春先まで長く着られるアウターやジャケットを増やすという。今年は同ブランドが日本に上陸して50周年を迎える。

 編み地のジャケブル(7万4800円)は伸縮性が高く、着心地が良いのが特徴だ。素材はウールとポリエステルの複合素材。付属のベストを着脱することで天候や気温に応じて寒暖を調整できるため、旅行などにも適している。

 ジャケブルのセットアップ対応のパンツ(3万1900円)はウエスト部分にゴムを使用し、ウエスト脇が伸縮する機能を加えた「アジャスタブルフィット」仕様を採用。楽な着心地を保てる。

 「ハイランダー」コート(8万8千円)は撥水(はっすい)性や透湿性、防風性に優れた素材「ゴアテックスインフィニアム」を使用している。「モコモコしないように、ダウンの量を抑えてスタイリッシュなビジカジ向けデザインにした。オンでもオフでも着用できる」(担当者)。中わたは、体が発する遠赤外線を利用して保温効果を発揮する特殊素材「光電子ダウン」を用いた。

〈オッジ・インターナショナル「アクアスキュータム」/付加価値高めたダウン製品〉

 オッジ・インターナショナルが展開する「アクアスキュータム」(AQ)は、主力ダウン製品のダウンの割合を増やす。これまではダウン90%、フェザー10%の割合だったが、ダウン95%、フェザー5%にする。より軽くて温かくなる。原料高騰で価格は昨シーズンに比べ平均10%程度引き上げるが、単なる値上げを避けるため付加価値を高める。

 ダウン製品の中でも、とりわけAQが開発した防風・撥水(はっすい)素材「ウィンコル」を使用したマウンテンパーカ(11万円)はイチ押しだ。ニュージーランド出身の登山家エドモンド・ヒラリー卿が、1953年に世界で初めてエベレスト登頂に成功した際に着用していたのがウィンコル素材(当時は綿とナイロン使い)の衣服だった。今回は綿とポリエステルを用いて復刻したウィンコルを使用して提案する

 人気の楽な着心地のセットアップは、バリエーションを増やして強化する。軽くて伸縮性のある生地を使い、自宅で洗えてシワになりにくいといった機能性を訴求。編み地が多いがコーデュロイなども用意する。「他ブランドとの商品開発競争も激しいが、ニーズは急拡大していて伸び代がある」(担当者)と言う。

〈コイズミクロージング/ウール調で奇麗めスタイル/着回し便利なセットアップ〉

 コイズミクロージングの23秋冬メンズ企画は防寒用重衣料ではダッフル、トレンチ、ステンカラー、Pコートなど奇麗めのスタイリング提案に力を入れる。シーンを問わず活躍し春夏に大人気のボトムス「スーパーストレッチ」もテーラージャケットとのセットアップ、裏起毛パンツなど秋冬アレンジも加え通年提案する。

 今季ミリタリー、ワークテイストからタウンカジュアル寄りにトレンドがシフトしたことを受け、重衣料では特にテーパードパンツなどと合わせてビジネスシーンでも便利に使い回せるスタイリングを重視。素材にはウール調ポリエステルジャージー素材を広く採用し、軽量な快適性、イージーケアを前面で訴求する。

 レーヨン・ナイロン・ポリエステル3者混のスーパーストレッチはベルトループと腰ひもを併用し、内ひも・外ひもが切り替え可能など細部の工夫でビジネス・カジュアル問わず着回せる点が好評。セットアップ提案を引き続き強化する。布帛ライクな合繊ジャージー素材の採用で着用快適性が高く、ハリ・コシに優れビジネスシーンでも着用できるしっかりしたシルエット感が特徴のジャケットなどと合わせた通年提案も強める。