シキボウ/取締役常務執行役員 繊維部門長 加藤 守 氏/海外戦略一気に加速/適地生産・販売を明確化

2023年09月07日 (木曜日)

 シキボウの繊維部門は今期(2024年3月期)、売上高207億円(前期比3.8%増)、営業損失1億5千万円(前期は6億900万円の損失)を計画する。赤字が残るものの、グループ会社の新内外綿と連携しながら海外を軸に新たなビジネスを一気に加速する。加藤守取締役は、下半期から「いろいろな戦略が多少現実的な数字となって表れてくる」と話し、さまざまなビジネスを成長軌道に乗せていく。

――第1四半期(4~6月)は売上高47億4800万円(前年同期比12・2%増)、営業損失2億900万円(前年同期は2億2500万円の営業損失)でした。

 特にユニフォームは売り上げだけ見れば新型コロナウイルス禍前までに戻っていますが、利益面で苦戦しました。原材料や原燃料のコスト高が継続しており、価格転嫁をしきれていません。値上げ要請が終わってからのコストアップが激しく、引き続き価格改定をお願いしていくしかありません。

 それでも赤字幅が縮小したのは中東向けの民族衣装用生地輸出や、カジュアル向けのニット製品が好調だったことがあります。

 原糸販売や寝装も苦戦しています。原糸販売は原綿相場が下がり、手持ちの在庫との価格差が大きく、販売価格を下げると赤字幅が大きくなるため、どうしても動きが鈍くなってしまいます。生活資材では寝装が店頭在庫のだぶつきで低調になっており、秋冬の見通しも良くありません。

――海外拠点を軸にビジネスの構築が進んでいます。

 インドネシアのメルテックスを含め、ベトナム、タイ、台湾の海外拠点で“適地生産、適地販売”によるビジネスの拡大を加速しています。

 メルテックスではポリエステル・綿混糸、CVC(綿混率50%以上)、二層構造糸、ベトナムでは中番手を中心とした綿糸、グループ会社である新内外綿のタイの商事子会社JPボスコでは杢(もく)糸や「テンセル」モダール糸、台湾では合繊糸を供給できます。メルテックスで綿100%糸、ベトナムでポリエステル・綿混糸も生産でき、リスクも分散させています。

 国内では紡績の廃業や設備の海外移転が増えていますが、当社には紡績の富山工場(富山市)や織布・染色加工のシキボウ江南(愛知県江南市)、グループ会社の新内外綿の紡績工場であるナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)から原糸や生地を供給できます。今後、時代の変化によって国内外の工場の在り方が変わってくるかもしれませんが、国内の生産を死守し、マザー工場を持つ強みを発揮していきます。

――新内外綿との連携も強化されています。

 営業、生産双方で連携を強めており、廃棄繊維のリサイクルシステム「彩生」では販売実績を積んでいます。ナイガイテキスタイルでは3月に反毛設備を増強しました。

 タイ国内では当社の協力会社からJPボスコを通じて日本向けのビジネスも組み立てています。

 コロナ禍前には新内外綿が単独でタイからエージェントを活用し対米輸出をしていましたが、改めてそのエージェントと当社も契約を交わし、シキボウの素材を絡めた対米輸出の拡大をにらんでいます。

――ベトナムでも製品ビジネスを拡大していました。

 ベトナムでモノ作りし、現地の商社を通じて日本へ最終製品を持っていきますが、当社がベトナムで売買できるようにするため、年内にも現地法人を立ち上げます。

――アンリアレイジとの取り組みは。

 大手企業の別注ユニフォームでいろいろと案件が出てきました。デザイナーの森永邦彦氏には企業哲学や理念をユニフォームとして表現するクリエーターとしての魅力があります。その魅力を当社の素材を通じて差別化や付加価値につなげていければと思います。

――ユニチカトレーディング(UTC)との連携も進んできました。

 UTCさんが繊維製品を回収し、当社が糸に生産する彩生の仕組みで連携できないか、模索しています。

――下半期の見通しは。

 いろいろな戦略が多少現実的な数字となって表れてくれば、利益も水面下から水面ギリギリのところまで行けるのではと思っています。

 その中でもユニフォームの価格改定が一番の課題です。単に値上げすれば販売数量が落ちますから、環境配慮型素材や合繊と機能加工を組み合わせるといった特色を持った提案がどれだけできるかも重要になってきます。

――中期経営計画の折り返し地点に近付いています。

 定性的な取り組みは進んでいますが、数字的には思うように成果が出ていないところも多い。コロナ禍で計画が遅れたこともあります。海外展開を一つの柱として、本格的に動き始めてきた中で、その成果をこれからしっかりと出していければと考えています。