シリーズ事業戦略/クラボウ/取締役兼専務執行役員 繊維事業部長 北畠 篤 氏/独自技術とコト売りで基盤作る/柔軟性持った組織へ
2023年09月12日 (火曜日)
クラボウの繊維事業は、原綿改質による機能糸「ネイテック」や羽毛代替となる中わた材「エアーフレイク」、裁断くずなどを開繊・反毛技術で再資源化する「ループラス」といった独自技術で新たな販路を広げつつある。北畠篤取締役は「独自技術とコト売りを浸透させ、基盤を作りながら収益力を高める」と話す。3カ年の中期経営計画の折り返し地点に近づく中、環境に左右されず、柔軟に対応できる組織への転換を図る。
――繊維事業の第1四半期(2023年4~6月)は減収、営業損益が赤字に転落しました。
前期の売上高は中計最終年度の25年3月期に目標としていた540億円を超えるほどでした。特に第1四半期は堅調で、今期と比較するのはしんどい状況です。
一昨年に新型コロナウイルス禍によるベトナムの都市封鎖を受けて生産・物流の混乱を想定し、多めに在庫を持つ動きが活発になりました。異常値と言えるほど受注が増えましたが、その反動が出ています。
ただ、予算ベースで見ると4~6月は各事業とも健闘しています。原糸販売は、若い営業担当者が成長しており、成果を出しています。安城工場(愛知県安城市)の稼働率も向上し、原綿改質による機能糸「ネイテック」など、高機能糸の販売は堅調です。
カジュアルは衣料消費の回復を受け、売れ筋となっている商品に向けて追加発注が来ており、予算、前年同期比でも増収増益になっています。5月の展示会では徳島工場(徳島県阿南市)の職人の技で作り上げる合繊素材シリーズを打ち出しました。従来当社に持たれていた厚地、ポリエステル・綿混というイメージを払拭(ふっしょく)しつつあり、新しい時流に合った素材を打ち出せている点が奏功しています。
――ユニフォーム地の販売では紡績各社とも利益面で苦戦しています。
コストアップ分をまだ吸収しきれていません。出荷ベースでは前年同期を下回っていますが、契約ベースでは増えているので下半期から期待しています。5月から徳島工場で後加工難燃「プロバン」の量産を開始しました。モダクリル・綿混を中心とした素材難燃「ブレバノ」と合わせて市場開拓を進めています。
昨年、体調管理システム「スマートフィット・フォー・ワーク」を旧事業推進部からユニフォーム部に移管しました。ユニフォーム部隊との連携や、スマートフォンを介さずにデータの送受信ができるスマホレス型ウオッチの投入で、大口案件が決まるなど成果を挙げています。
暑熱作業時のリスク管理のみならず、転倒・転落検知といった機能を備え、働く人の快適と安心を提供できるツールとして、「健康経営」を意識する企業への関心は高いです。7月から作業員一人一人の体調の改善結果を“見える化”したサービスを開始しました。より利便性を高めることで販路を広げていきます。
サポーター一体型タイプのアシストスーツ「CBW」も着用しやすいことや、コーポレートカラーに合わせた生地提案などカスタマイズができるといった点から、当社ならではの強みを生かし販売に力を入れていきます。
――売上高520億円、営業利益4億円の通期(24年3月期)計画の達成には、下半期からの巻き返しが鍵となります。
衣料品の需要の回復傾向が明確になり、在庫調整が終わってくれば再び受注が活発化してくるものとみています。ただ、為替や綿花相場の先行きが読みづらい中、何事にも俊敏性を持って対応していかなければ。
カジュアルでは売れ筋を中心に突発的な注文も出るとみられ、短サイクルで対応力をいかに持つかが重要。当社の海外拠点と外注工場の連携を深め、瞬発力で注文を受けられる体制を構築していきます。さらに独自技術とコト売りを浸透させ、基盤を作りながら収益力を高めていきます。
――独自技術ではネイテックや羽毛代替の中わた材「エアーフレイク」の販売を拡大しています。
ネイテックは、インナー用途が中心でしたが、寝装やアウター、織物など横展開を広げていきます。エアーフレイクは、特殊な形状から課題だったわたの充填(じゅうてん)技術を来秋冬に向けて確立していきます。
――コト売りでは裁断くずなどを独自の開繊・反毛技術で再資源化する「ループラス」が広がっています。
海外向けを含めて引き合いが増えており、工場のある安城市など行政との共創も出てきました。製品回収まで含めてどう仕組みを形作るかを模索しています。生産面では国内やベトナムだけでなく、タイ・クラボウでも反毛機を導入し、対応できるようにしていきます。
――中期経営計画の最終年度(25年3月期)には営業利益8億円を目標にしています。
どう収益を上げていくか。先述したように為替や綿花相場など、次に何が起こるか全く先行きが読めない状況にあります。それでも環境が変わればすぐ対応できるようにしておかなければいけない。柔軟性を持った組織へと転換していきます。