帝人と日揮HD/衣服回収実態を報告/業界初の調査も
2023年09月14日 (木曜日)
帝人と日揮ホールディングス(HD)は、報告書「衣服回収の実態とLCA事例調査」を発表した。行政が回収した衣服の原料組成に関する調査結果に加え、ショッピングモールやファッションイベントで回収した衣服の回収量や衣類の傾向なども業界で初めて調査し、結果を報告している。
報告書では、衣服回収の実態とライフサイクルアセスメント(LCA)事例について次のようにまとめた。回収方式に関しては、それぞれで回収可能な衣服の質・量に違いがあり、回収主体や回収を実施する目的によって適切な方式を選択する必要があると説いた。
今回の実証条件においては、一般消費者から衣服を回収した際には綿100%の衣服が20%程度、PET(ポリエチレンテレフタラート)100%の衣服が10%程度の割合で含まれていた。環境負荷削減の寄与効果はリユース、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルの順で高いとされるが、慎重な検討がいるとした。
こうした調査結果を踏まえ、循環型ファッションの実現には四つの重要課題があるとする。中でも回収・分別・リユース・リサイクルまでの最適化された一連のエコシステムの醸成が最重要課題とした。リサイクルには製品が単一素材であることが望ましいが、各種技術を考慮した上で回収要領を決めなければならないとする。
また、消費者と業界の各界各層が重要性を理解し、行動変容につなげる「ナッジ」「ブースト」だけに頼らない具体策が求められる。同時に循環システムを国内で実装するには業績の全面的な支援も要求されるとした。
帝人と日揮HDは、東京大学と共同で持続可能な繊維産業のエコシステム構築に向けた産学連携ワーキンググループ(WG)で衣服の回収に焦点を当てた調査を実施し、今回その結果を2022年度の報告書としてまとめた。WGには企業や大学、環境NPOなど、10社・団体が参画している。