東レグループのISTEM/アフリカ・中東へ輸出好調/人口増や事業環境好転で

2023年09月26日 (火曜日)

 インドネシア東レグループのポリエステル・レーヨン混素材メーカー、インドネシア・シンセティック・テキスタイル・ミルズ(ISTEM)の織物輸出事業が好調だ。今上半期(2023年4~9月)は前年同期比増収増益の見通し。

 織物輸出事業は同社の売上高の9割以上を占め、輸出先はアフリカと中東地域が多い。アフリカは学童用ユニフォーム地が、中東は民族衣装用白生地がそれぞれ主力。数量ベースでは昨年上半期に比べ2割程度伸びているもよう。

 アフリカ学童用は、人口増加の影響で、既存の取引先などからの発注数量が昨年より増えた。中東向けは新型コロナウイルス禍の間に生地の価格を改定、新たな顧客開拓を進めた。サウジアラビアの新規顧客からのまとまった生地の発注が今上半期の輸出量増につながった。

 中東民族衣装用生地ビジネスは今年に入って、他の日系繊維企業からも好調が聞かれる。ISTEMはその背景について「コロナ流行の時期は国境を超えた移動に規制があり、ビジネスに制約ができ問屋も仕入れを抑えていた」とし、「今はその制約がなくなり、滞留した生地在庫もなくなっているので、問屋も仕入れに積極的になっている」と話す。

 インドネシア東レグループの中では比較的小規模とされる生産キャパシティーを、今後どれだけ有効に活用できるかが、通期を増収増益で終えるためのポイントとなる。

 インドネシア国内への供給はこれまで選択と集中を進め、官需の制服地案件や同社の優位性を評価する問屋向けに絞っており、限界まで受注量を絞っている。アフリカの学童用制服地発注の最盛期を迎える10~12月、中東民族衣装用生地の受注のピークとなる10月~翌年2月に効率よく生産できるかが、今後の業績の伸び幅を決めることになりそうだ。

〈東レグループのACTEM/顧客とアクリル糸開発/セーターや靴下用途で〉

 インドネシア東レグループで、アクリル紡績・糸染めのアクリル・テキスタイル・ミルズ(ACTEM)はセーター、靴下など防寒衣料用途で顧客のニーズに応じた、新たな糸の開発に力を入れる。同社は「高付加価値で、ニッチな素材を、小ロットで顧客のニーズに合わせて供給するスタンスを継続して業容を拡大する」方針。

 ウール高混率のアクリル糸やアクリル・ウール・ナイロンといった3素材混の新たな商材を顧客の要望を聞きながら現地で製造し抗ピリング性、高い保温性といった冬場に需要の高い機能を強みに販売数量を増やす。

 同社はアクリル糸、アクリル・ウール混糸が主力で用途はセーター、靴下、水回りに使われる資材向け。売上高の7割近くが日系企業向けで、靴下などの最終製品は日本で流通するものも多い。残り3割はインドネシア現地企業向けで最終製品は欧米市場で流通するケースもある。

 今上半期(2023年4~9月)は日系、現地向けの両方で販売数量を堅調に伸ばした。日本では寒さの厳しい冬が続いているため保温商品の需要が毎年、盛り上がることや在宅勤務が一般化したことも冬の保温靴下の需要拡大につながっているようだ。こうした流れを受け、今上半期も堅調な受注状況となったもよう。

 だが、24秋冬シーズンの見通しは不透明と指摘する。円安の進展で原料の輸入価格が上昇するという背景があり、糸の仕入れに弱気な取引先が増えていると言う。