特集 アジアの繊維産業(4)/中国・東レグループ/繊維が中国事業をけん引

2023年09月27日 (水曜日)

 江蘇省南通に拠点を置く長繊維生地製造販売の東麗酒伊織染〈南通〉(TSD)と、合繊長繊維メーカーの東麗合成繊維〈南通〉(TFNL)、研究開発拠点の東麗繊維研究所〈中国〉(TFRC)に、東レの差別化素材を使った生地や紡績糸のコンバーティングを手掛ける東麗国際貿易〈中国〉(TICH)を加えた4社が、製品とビジネスの高度化と現地化を進め、成果を上げている。4社による繊維事業が、東レの中国事業全体をけん引している。2023年度も前年度比増収増益を視野に入れる。

〈製販一体でブランディング強化/TSD〉

 TSDの23年度上半期は、前年同期に比べ増収増益の見通しだ。欧米向けが芳しくなかったが、中国内販を拡大した。地場大手スポーツ向けが中心の内販については、顧客の高度化ニーズへの対応や、春夏素材の新規開拓が功を奏し、好調を維持。欧米向けは、顧客の在庫増や欧州景気の低迷が響いた。

 アイテム別では、特に編み物が好調だった。差別化した原糸使いや、特殊な編み機を使った機能性編み物が売れている。「ボトムが強みの地場メンズや地場スポーツ大手への差別化原糸使いの販売が伸びた」と、秦兆瓊総経理は説明する。

 車両資材はエアバッグ基布が今年前半、新車販売が落ち込んだ影響で苦戦したが、第2四半期から回復し、足元は前年同期並みで推移する。TICHから受託するウルトラスエードの染色加工は絶好調が続く。加工量ベースで、上半期は前年同期比2桁%で伸長している。

 今年から製販一体となったブランディングの強化に取り組んでいる。防水透湿素材「ダーミザクス」やストレッチ軽量素材「プライムフレックス」など四つの素材ブランドを「グローバル・メイン・ブランド」と位置付け、日本本社と連携した共同開発を進めている。

 下半期は、これらを核にした商品開発、品質改善、ブランディングを加速する。こうした施策により、目標の前年比4%増収を達成する。

〈7期連続過去最高益へ/TICH〉

 TICHの23年度上半期は、前年同期に比べ増収増益になる模様だ。テキスタイルの中国内販などがけん引した。下半期もこの勢いを維持し、「7期連続の過去最高益を目指す」と溝淵誠総経理は話す。

 テキスタイルはこれまで好調だった欧米向けが一転、苦戦した。メイン顧客の北米スポーツブランドの在庫調整が響いた。

 一方、中国内販は「ゼロコロナ」政策の解除によって、華南エリアを中心に一部顧客向けが回復した。東レの差別化原糸・原綿を使い現地でコンバーティングするブランド「EVOTRUTH」(エボトゥルース)や、しなやかな風合いとコンパクトなかさ高性を併せ持ったテキスタイル「uts―FIT」(ユーティーエス フィット)使いなど、新しい開発品を積極投入したことも功を奏した。

 OEMは、日系大口顧客が中国からASEAN地域に生産をシフトした影響を受け、芳しくなかった。

 ファイバーは堅調だった。中でも内販と日本向けの双方を手掛ける紡績糸が貢献。日本から原料を輸入し、中国で加工するバリエーション豊かな差別化糸が顧客から評価されている。

 スエード調人工皮革「ウルトラスエード」は、電気自動車(EV)メーカー向けの好調が続いた。

 産業資材は発電所や工場のフィルター向け日本製原料販売が苦しんだが、自動車や水素産業向けの加工品販売は好調だった。

〈バイメタル構造糸が好調/TFNL〉

 TFNLの原糸事業は、22年からポリエステルのストレッチ素材に使われるバイメタル構造糸の生産能力拡大に取り組んでいる。同糸の紡糸ラインを昨年増設し、生産能力は19年比で2倍弱となった。来年4月にはさらに増設し、15%の能力増強を実施する。

 バイメタル構造糸の需要は世界的に拡大している。「グループ会社と連携し、中国で販売するほか、日本、タイ、マレーシアに輸出している」と寺澤裕之董事長は説明する。

 23年度上半期もポリエステルはバイメタル構造糸の好調が続き、前年同期比増益の見通しだ。一方、ナイロンは4~6月は芳しくなかったが、7月から超細番手のパンスト向け差別化糸の生産を本格化し、挽回した。上半期は増益で着地する見通し。

 下半期は、ナイロンの仮撚り加工糸(DTY)の生産を本格化する。従来からポリエステルはDTYを生産していたが、ナイロンは生糸(FDY)にとどまり、パンスト向けをメインに手掛けていた。ところが、新型コロナウイルス禍を機にFDY相場が大幅に下落したため、超細番手の生産にシフトし、さらにDTYに参入することになった。

 細番手は現在、高級パンストを手掛ける地場ブランド向けが伸びている。そのため、生産能力の増強を検討している。DTYは、TSDと連携して拡販していく。

〈研究開発の花咲かす/TFRC〉

 TFRCのさまざまな研究開発が今年、花を咲かせている。グループの利益に貢献する黒子としての存在感を増している。

 ここ数年、サステイナブル原料を使ったバッチ重合・チップ紡糸など、サステ関係の開発に注力している。今年は、東レが生産するポリエステル使いの差別化糸へのリサイクル材料の適用技術を完成させた。

 「(同技術を使って)日本、韓国、ASEANの各拠点で生産している。そろそろ製品が店頭に並ぶころだ」と清水敏昭総経理は話す。

 バイオ材料を用いた合繊素材の製造方法についての研究も進んでいる。日本本社から受託する部分的なテーマの研究に加えて、中国で現地調達する原材料を活用しての独自の研究も展開している。

 大きな成果を上げるのが、環境インフラ向けの素材だ。同社が開発した素材が、現地のプロジェクトに倍々ゲームで採用されている。

 19年から始めた短繊維素材の研究開発も順調だ。「立ち上げ時は苦労したが、この半年でさまざまな顧客に研究開発品が採用されている」(清水総経理)。

 同社が研究開発に関わった製品の利益貢献額は、21年度が過去最高だったが、22年度は市況減速の影響を受け、前年から横ばいとなった。今年は相次ぐ大型商品の投入で、過去最高を更新する可能性がある。

〈インタビュー/在中国東レ代表 東麗〈中国〉投資 董事長 沓澤 徹 氏/世界最大市場に今後も注力〉

――「ゼロコロナ政策」が昨年末に解除されたにもかかわらず、中国景気が振るいません。

 足元ではかなり減速感が広がり、経済指標も芳しくありません。不動産業界の不振が経済全体の足を引っ張っています。若年層の失業率が高止まりし、データの公表が先月休止されました。消費は、旅行や飲食などは悪くありませんが、消費財に対しては財布のひもが緩みません。特に自動車や家電が厳しい。輸出も芳しくありません。自動車以外は、軒並み前年同期割れです。

 こうした中、政府の景気刺激策への期待が高まっていますが、地方政府の過剰債務問題を背景に大型財政出動を控えています。ただし、この状況を放っておくことはできないため、今後何らかの景気浮揚策が出されるとみています。

――中国・東レグループの23年度上半期(23年4~9月)は。

 事業によって凸凹はありますが、全体的には健闘しています。前年同期並みは確保できそうです。事業別では、繊維が好調です。TSD、TFNL、TICH、東麗〈香港〉(THK)が頑張っています。繊維以外では、水処理関係やケミカル合弁事業が健闘しています。

――繊維事業の中国内販と輸出の市況は。

 内販の環境はそこそこ上向いてきていますが、輸出は厳しいです。全体的にそれほど芳しくないですが、その中で内販の勝ち組の顧客と取り組むための手を打っています。

 8月末に開かれた「インターテキスタイル上海」では、TSDとTICHのブースがともに好評を得ました。EV(電気自動車)向けが主力のスエード調人工皮革「ウルトラスエード」は先日、専門のショールームを上海市内に開業しました。

 心配しているのが、不織布です。出生率の低下や不織布の供給過剰を背景に苦戦しています。商品を高度化し、挽回していきます。

 産業資材は、エアバッグ用基布の生産のフル稼働が続いています。産業資材はもっともっと伸ばせそうです。

――繊維事業では、サステイナブルなどをテーマに内販を意識した商品開発を進めています。

 サステに対する意識が間違いなく高まっており、それに合わせた商品作りを強化しています。マーケットが求める商品が高度化していることに対応し、東レ独自の革新複合紡糸技術「ナノデザイン」の原糸使いの開発にも力を入れています。

――下半期にどう臨みますか。

 下半期も事業環境の大幅な改善は期待できませんが、23年度通年も前年度比増収増益を目指します。中国は経済が良くないといわれながら、世界最大市場であることに変わりはありません。今後も引き続き力を入れていきます。

 米中対立が深刻化していますが、全体的なデカップリングは起こり得ないと思います。各国の経済のつながりが急速に弱まることはないでしょう。

 繊維事業は中国でさまざまなサプライチェーンの構築に成功しています。これを他の事業にも応用していきます。東レブランドの強化にも取り組み、現地での存在感をさらに高めていきたいです。