不織布新書23秋(4)/帝人フロンティア/レンチンググループ/ダイワボウレーヨン/宇部エクシモ

2023年09月29日 (金曜日)

〈帝人フロンティア/好調続く短カット/「V―Lap」は用途開発〉

 帝人フロンティアの湿式不織布向けポリエステルショートカットファイバー短カットが好調だ。他素材からの代替需要も取り込みながら、さらなる拡大を目指す。今後の増設も視野に入れる。縦方向不織布「V―Lap」の用途開発にも取り組む。

 2023年度上半期(4~9月)の不織布向けポリエステル短繊維と不織布原反の商況は、自動車向けが回復基調となった。ただ、生活資材向け原綿は勢いがなく、特にふとん詰めわたは需要が低迷している。昨年までの好調の反動が生じている。

 こうした中、好調が続くのがポリエステル短カット。特に膜支持体向けが「毎年数%のペースで販売量が増加している」(堀田敏哉短繊維素材本部長)。米国や韓国に加えて、中国への輸出も拡大しており、国内市場でも高いシェアを持つ。三菱ケミカルグループがアクリル繊維から撤退したことで、フィルターやワイピング用途でアクリル短カットからの代替需要も発生した。

 このため引き続き短カットの拡販を進める。膜支持体のほか、フィルター用途にも力を入れる。生産を担うタイ子会社のテイジン・ポリエステル〈タイランド〉は22年に設備を増設しているが「次の増設も視野に入れる」。

 今期から短繊維素材本部が販売を担当するV―Lapも重点商品。これまでウレタン代替での提案を進めてきたが、加えて成形性の良さを生かしたまったく新しい用途の開発にも取り組む考えだ。

〈レンチンググループ/SPVのプロジェクト完了/不織布用特殊ビスコース供給可能〉

 レンチンググループは、インドネシアのサウス・パシフィック・ビスコース(SPV)で進めてきたプロジェクトを完了した。一般ビスコース繊維の生産設備を特殊ビスコース繊維設備へと改良し、不織布用「ヴェオセルビスコース」の展開が可能になった。「EUエコラベル」認証も取得している。

 プロジェクトは、2021年から1億ユーロを超える資金を投じて取り組んできた。改良工事完了によってオーストリアなどの拠点とともに、インドネシアが高品質特殊ビスコース繊維の主要な供給拠点となった。「レンチング エコヴェロ」と合わせ、年間最大で30万3千トンの特殊ビスコース繊維が生産できる。

 インドネシアから特殊ビスコース繊維、ヴェオセルビスコースが供給できるようになったことで不織布展開の幅が広がる。ワイパーの場合、製品に「ヴェオセル」ブランドを付けるには、不織布用リヨセル繊維を30%使用する必要があったが、ヴェオセルビスコース100%でも同ブランドが付けられる。

 今後も不織布用途の戦略素材はリヨセル繊維であることに変わりはないが、インドネシア拠点製のヴェオセルビスコースが加わったことで、日本のユーザーは選択肢が広がった。

 レンチンググループは、環境配慮型製品がそろう展示会などに出展し、次代を担う子供たちにも積極的に素材を説明してきた。12月に開催される「エコプロ2023」にも出展する予定だ。

〈ダイワボウレーヨン/機能わたで輸出強化/脱プラスチック需要も〉

 ダイワボウレーヨンは、環境配慮と機能性を融合させたレーヨン短繊維で不織布用途でも需要の掘り起こしを進める。特に現在の円安基調を生かし、輸出に力を入れる。脱プラスチックの代替需要の取り込みも目指す。

 同社の2023年度上半期(4~9月)の不織布向けレーヨン短繊維販売は、国内市場に勢いがない。一方、円安の追い風があることから輸出拡大に取り組んだ。極細繊度や備長炭練り込みなど特殊・機能レーヨンの提案を進め、フェースマスクや水解紙などの用途で成果が上がりつつある。

 湿式不織布向けのショートカットファイバーも底堅い。たばこのフィルタープラグ紙向けが主力だが、それ以外の資材用途でも提案を進めており、新たな用途開拓に取り組む。

 環境配慮素材としてのレーヨンへの注目が不織布分野でも高まってきた。このため海水中生分解性の国際認証を取得している「エコロナ」や、撥水(はっすい)機能レーヨン「エコリペラス」、廃棄綿布を原料に再利用するリサイクルレーヨン「リコビス」の不織布用途への投入も始まった。

 今後も輸出強化と“機能×環境”が基本戦略となる。極細繊度レーヨンや備長炭練り込みレーヨンに続くヒット商品の開発に取り込む。世界的に“脱プラスチック”の動きが強まっていることから、エコリペラスでプラスチック代替需要の取り込みを進める。

〈宇部エクシモ/主力分野に続く柱作る/機能や特徴を前面に〉

 宇部エクシモは、「UCファイバー」や「エアリモ」をはじめとする不織布用原綿の用途開拓に力を入れる。ベビー用紙おむつを中心とする衛生材料分野を主力としつつ、産業資材分野にも領域を広げることで全体の成長につなげる。産業資材ではフィルター用途などに目を向ける。

 UCファイバーは、2種類の樹脂を使用したコンジュゲートわた。メーンのベビー用紙おむつ用途は少子化などの影響はあるものの、「素材力の提案で、この用途を引き続き盛り上げたい」と強調する。同時に産業資材分野での拡販にも注力する方針を示す。

 産業資材分野では、機能性を訴求する。油剤レスタイプや耐久親水タイプ、抗菌性、撥水(はっすい)性など、顧客の使用目的に応じたさまざまな商品が提案できることを強みにしたい考えだ。油剤レスタイプはエアフィルターなどに使用する際に、油剤を落とす必要がないため顧客にとってコストダウンになる。

 芯鞘構造でありながら0・2デシテックスという細繊度を実現したのはエアリモだ。フィルターや衛生材料をはじめとする肌に触れる用途など、全方位で提案を進めている。顧客からはさらに細繊度のわたを求める声があり、「追求していきたい。開発に取り組む」とした。

 高張力ポリプロピレン繊維「シムテックス」は自動車関連向けなどで販売している。強度や耐薬品性といった特徴を持ち、それらを生かして自動車に続く用途を探索する。