不織布新書23秋(5)/東洋紡せんい/小津産業/旭化成アドバンス/バリュテック・インターナショナル

2023年09月29日 (金曜日)

〈東洋紡せんい/特性生きるフィルター/寝装分野の開拓も強化〉

 東洋紡せんいのサーマルボンド不織布(TB)が、特徴を生かしてフィルターの支持体向けで販売を拡大している。TBの生産設備は富山事業所入善工場(富山県入善町)に置いていたが、10月から庄川工場(同射水市)に移設し生産を始める。

 同社のTBはアクリレート系繊維など機能繊維や耐熱繊維など高性能繊維を含めて各種繊維を使用できるほか、多品種小ロットに対応するのが特徴。フィルムやスパンボンド不織布、織物との複合や機能加工との組み合わせも容易で受託生産も積極的に対応する。

 フィルターの支持体向けはハリコシがあるなど同社製TBの剛性の高さが評価されている。その特徴を生かして顧客、用途を広げる。

 アクリレート系繊維で高い吸湿性を持ち、アンモニア消臭機能もある「モイスファイン」を使って、寝装分野にも力を入れる。マットレスとの間に挟み込むもので、好反応を得ている。「こうした付加価値を評価される分野を今後も強化する」(マテリアル事業部の津田幸一インナー・寝装グルーマネジャー)考え。

 その一環で、PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維を使用したTBの開発にも着手した。耐熱性、耐薬品性、絶縁性などが特徴のPPS繊維を使った低目付のTBでモノ作りを進めている。耐熱性、耐薬品性を生かした工業用フィルター(バグフィルター以外)や、絶縁性を活用したセパレーター分野の開拓に取り組む。

〈小津産業/大きな柱の育成に注力/メディカル、食品に視線〉

 小津産業は、不織布の展開の幅を広げる。エレクトロニクス分野を主力としてきたが、他の大きな柱を育成することで成長につなげる。その一環として強化してきたのがメディカル分野と食品分野だ。両分野とも順調に拡大するなど、成果を上げており、前期(2023年5月期)に生産能力も増強した。

 同社は、今期(24年5月期)が「小津グループ中期経営計画2024“リープ・イントゥ・ジ・イノベーション”」の最終年度となる。2年目の23年5月期の不織布は、エレクトロニクス分野、コスメティック分野が厳しかったが、メディカル分野が順調に推移し、前年並みを確保した。

 感染症の長期化や資源価格・原材料価格の高騰など、経済環境が大きく変化していることから最終目標(収益認識基準適用前の数値)を売上高140億円(修正前170億円)、営業利益4億7千万円(同14億円)に修正した。今期は修正目標に沿って進行中だ。

 現中計の完遂と次の中計に向けて取り組んでいるのが、エレクトロニクス分野における自動車関連での成長や食品工場向けワイパーの提案、メディカル分野での感染対策製品の強化だ。中でも食品工場向けとメディカルは順調に推移している。

 食品とメディカルは大きな柱に育成する方針で、ワイパー製造設備を1台増強して2台体制とした。フル生産が続いており、来年には3台体制とする計画だ。油吸着材「オイルテイカー」の新規顧客獲得も進んでいる。

〈旭化成アドバンス/独自の商材に重点/環境配慮不織布や油吸着材で〉

 旭化成アドバンスの繊維資材事業部は、旭化成グループ独自の素材や商品の提案を重点的に進める。環境配慮型スパンボンド不織布(SB)や油吸着材などの拡販に取り組む。

 2023年度上半期(4~9月)の不織布販売は比較的堅調に推移した。SBはブラインド向けが住宅着工数減少の影響で低調だが、コーヒーフィルター向けの輸出が7月以降回復している。自動車用途以外の販売を担当する人工皮革「ディナミカ」も国内は家具、海外は服飾雑貨用途で好調が続く。

 こうした中、今年度は独自性のある商材の拡販に力を入れる。その一つがキュプラ繊維を使った環境配慮型油吸着材「B―スイーパー」と水面で使用できる「B―スイーパーアクア」。キュプラ繊維の生分解性に加えて、原料には工場で発生する端材を再利用した環境配慮型商品として打ち出す。そのほか、ポリ乳酸(PLA)繊維による生分解性・植物由来原料SB「エコライズ」も環境配慮型不織布として包材や農業資材向けに提案する。

 海外販売の拡大にも力を入れ、旭化成グループ関係会社とも連携しながら北米、欧州、アジア市場での販売拡大にも取り組む。

〈バリュテック・インターナショナル/生活資材を柱の一つに/米製熱接着シート強化〉

 開発型不織布事業を指向する専門商社、バリュテック・インターナショナル(東京都港区)はパルプ製不織布、パルプ使いのモールド製品、環境対応商品、熱接着シートの拡大に取り組む。

 パルプ製不織布は既存品に比べ粉じんが少ないのが特徴。工業用ワイパーで採用されており、現在ウエットワイパーで品質確立に取り組む。不織布製品の供給も視野に入れ、これらを武器に生活資材を柱の一つに育てる。

 パルプ使いのモールド製品は国内に試験機を導入済み。食品トレイなど各種用途から開発案件がある。環境対応商品は再生繊維使いや環境に寄与する特殊繊維使いの不織布、廃材の有効活用、CO2削減に貢献するマスターバッチ開発を進める。

 米・スパンファブ製熱接着シート「スパンファブ」は同社がアジア総代理店を務める。原反販売だけなく、国内にラミネート加工機も保有し、他素材との複合品での供給もできる。スパンファブは蜘蛛の巣状のシートで通気性・透水性を持ちながら、異素材を貼り合わせることができる。VOC(揮発性有機化合物)も発生しない。顧客の要望に応じてオーダーメードで供給できるのが特徴だ。自動車資材を主力に芯地などの衣料副資材、建材、フィルターなどに使用されるが、国内では衣料副資材の拡大も目指す。

 同社はニードルパンチ不織布製造のアーキュレフ(滋賀県多賀町)、数少ない不織布の染色加工を行うノグチ・クリエーション(群馬県桐生市)も子会社に持つ。