ワン・エニー/海島綿使ったデニム開発/海外高級ブランドに提案
2023年10月18日 (水曜日)
デニムを主軸にテキスタイルの企画・販売やOEM生産を行うワン・エニー(岡山市)は、独自開発のテキスタイルの提案に力を入れる。今打ち出しているのが、超長綿の中でも最も繊維が長いとされる海島綿を使ったデニムだ。中南米・カリブ海地域産や米国産の海島綿を用いたデニムを用意して、海外の高級ブランドなどに提案している。
現存する超長綿の源とされるカリブ海地域産の海島綿(ウエストインディアン・シーアイランド・コットン)は、わずかな量しか採れない。清大輔社長は「超長綿のギザ綿やスビン綿なども原種はカリブの海島綿で、現地種を交配させて開発された」と指摘。その上で、「価値や希少性が高いデニムとして提案している」と話す。
カリブ海地域産の海島綿は17世紀ごろ英国が同地域を領有した際に、王室に献上されたことがきっかけで英国王室御用達となった。その後、英国から長きにわたり門外不出となったといわれる。だが1785年ごろ、カリブ海諸国で栽培されていた海島綿の種子が米ジョージア州シーアイランド地方に持ち込まれた。そこで栽培された綿花がその地名を由来としてシーアイランド・コットンと名付けられた。
この海島綿はしばらく米国で生産されたが、1929年ごろに大量発生した害虫被害で壊滅。その後、米ニューメキシコ州立大学が栽培方法を確立し、2017年にアメリカン・シーアイランド・コットンとして復活した。
同社が提案するもう一つの海島綿を使ったデニムは、この復活した米国産を使用している。同海島綿100%のデニムのほか、落ちわたとバージンの海島綿を高混率で混紡したものもそろえる。落ちわた使用のデニムは「第2次世界大戦のころのデニム製品を再現した『大戦モデル』を意識して作った」(清社長)と言う。
海島綿を用いたデニムの特徴について、清社長は「染色性が非常に高くて色が深く染まる」と説明。さらに「繊維が上質ではきこむと肉厚なのにすごく柔らかくなる。光沢感も魅力だ」と続ける。
同社のデニムは海外ブランドからの評価が高い。全体に占める海外の売り上げは7割程度という。
「今は海外のデニム人気と円安が後押しし業績は好調だが、デニムブームが落ち着いた時にどう対応していくかが課題」と清社長。国内ではデニム製品のOEMも手掛ける。「将来的には自社ブランド製品の開発にも取り組みたい」と考えている。