紡拓会 黄偉基秘書長に聞く/輸出市場の分散化へ/TITASを終えて
2023年10月23日 (月曜日)
17~19日に台湾・台北で開かれた素材・繊維機械展「第27回台北紡織展」(TITAS)は、海外バイヤーやエージェントも多く、新型コロナウイルス禍前の活気を取り戻した。主催者の紡拓会の黄偉基・秘書長に、今回展の成果や台湾繊維産業の現状について聞いた。(台北=岩下祐一)
――今回展は盛況でした。
昨年はコロナ禍の影響が残り、来場者数が伸び悩みましたが、今回は海外からの来場者が復活し、コロナ禍前の水準にほぼ戻りました。
――革新的なサステイナブル素材が出展されました。
代表的なのが、遠東新世紀(ファーイースタン・ニューセンチュリー)の「FENC TOPGREEN BIO3」です。工場から排出される二酸化炭素をポリエステル素材にリサイクルする循環型生産と、原着技術を組み合わせた編み物で、欧米顧客からの反応が良いと聞いています。
――工場の端材や回収衣類からポリエステルをリサイクルする提案も注目を集めました。
ファーイースタン・ニューセンチュリー、力麗(リリー)グループ、新光合成繊維(シンコウ)
、南亜塑膠工業(ナンヤプラスチック)など、大手各社が打ち出しました。循環生産のポリエステルはこれまで割高で、欧米ブランドは様子見をしていました。各社が参入し、技術が成熟化することで値段が下がれば、普及が進みそうです。
――各社がサステ素材の開発を加速する背景の一つが、欧米ブランドの二酸化炭素削減目標です。
ナイキとアディダスを筆頭に、各ブランドが2030年までの目標を掲げています。ナイキは、サプライチェーン全体で30%の削減を目指しています。主要サプライヤーである台湾企業はこれに対応していく必要があります。
――アスレジャーのトレンドは、台湾企業にとって追い風です。
これまでスポーツ・アウトドアブランド向けの(合繊長繊維を使った)生地を得意としてきましたが、アスレジャーの流行でファッションブランドにも生地が採用されています。欧州ブランド向けを手掛ける韓国の縫製企業がここ数年、台湾製生地の仕入れを増やしているのも、アスレジャーのトレンドが背景です。
――今年の商況は厳しいです。
厳しい中で各社が生産のデジタル化や、海外工場の拡大、品質管理のアップグレードに取り組み、来年、再来年の復活を準備しています。ただし、イスラエルとハマスの衝突で、先行き不透明感が増しています。
――国際情勢が複雑化しています。台湾繊維産業の対応は。
これまでは、米国を中心とした欧米向けが主力でしたが、特定の市場に依存するリスクを実感しています。ラテンアメリカや中東などの市場も開拓し、分散化を進めます。来年はブラジルの展示会に台湾パビリオンを設ける予定です。トルコやドバイの展示会も検討しています。