秋季総合特集Ⅱ(12)/Topインタビュー/ダイワボウレーヨン/社長 庄野 栄作 氏/環境配慮に機能を付与/今はターニングポイント

2023年10月24日 (火曜日)

 「レーヨンが持つ生分解性など環境に優しい特性にさまざまな機能性を付与していくところに強みがある」とダイワボウレ―ヨンの庄野栄作社長は強調する。一方、日本で唯一のレーヨン短繊維メーカーとして、国内の生産基盤を道のように維持していくのかも同社に課せられたテーマ。「今はまさにターニングポイント」と話す。

――ダイワボウレーヨンにとって“最旬”の商品や取り組みは何でしょうか。

 やはり機能レーヨンです。防炎・難燃レーヨンは現在でもしっかりと輸出できています。吸湿発熱素材向けの特殊なレーヨン短繊維も大きな販売規模になっています。最近では防虫機能を実現した「バグノン」なども海外から引き合いが増えてきました。レーヨンは元々、天然由来の化学繊維であり、生分解性もあるなどサステな素材。そこに機能性を付与することでレーヨンの用途を拡大してきました。

 近年、繊維産業の環境負荷の大きさが世界的に批判されていいます。特に衣料品は廃棄も多いとされており、大手アパレル・流通もリサイクルへの取り組みを強めています。このためリサイクル原料を使った素材への引き合いが増しており、当社のリサイクルレーヨン「リコビス」への注目も高まってきました。今後は繊維廃棄物の回収をどうするのかが次のテーマになっています。

 ただ、当社にとって大きな課題は、国内でのレーヨン生産を守るためにも製造設備をどのように維持していくかです。高経年設備ですからリフレッシュが必要。燃料や薬剤価格が高騰し、省エネルギーや高効率な生産が不可欠です。何より二酸化炭素排出量削減など脱炭素への社会的要請にも応えなければなりません。そのために製造設備の改造も不可欠です。

 しかし、これらを実行するためには大きな投資が必要です。それでも採算を維持するためには、利益率の高い商品へのシフトを進めなければなりません。こうしたことも踏まえ現在、さまざまな検討を進めています。その意味で今は当社にとってもターニングポイントの時期だと考えています。

――2023年度上半期(4~9月)も終わりました。

 売上高、販売数量ともに計画を上回りました。特に乾式不織布向けが好調です。利益率の面では満足できる水準ではありませんが、まとまった数量の販売ができています。また、湿式不織布向けのショートカットファイバーも海外向けで販売量が伸びました。こちらは円安の追い風もあります。紡績用は機能わたが堅調でした。一方、防炎レーヨンは主力市場である米国の寝装用途が金利上昇による住宅着工件数減少の影響などで勢いがありません。

 ただ、主原料、副原料、燃料、薬剤いずれも価格が大幅に上昇した影響で利益面が圧迫されました。値上げも実施しましたが、利益は計画を下回っています。この傾向は下半期も続くとみていますので、引き続き価格転嫁による利益率の改善に取り組まなければなりません。

――物流の「2024年問題」への対応も大きな課題です。

 当社は益田工場(島根県益田市)で調達と出荷合わせて月に1万トン以上の物流量がありますから、影響は非常に大きい。コスト増や納期問題に直結します。ソフト、ハードの両面で対応するしかありません。例えば梱包(こんぽう)やリフトの自動装置を入れるなど積み込み関連の新規設備も導入します。

――下半期に向けた課題や重点施策は。

 市況がやや軟調なため売上高、利益ともに上半期よりは若干下振れする可能性があります。そこでテコ入れとして原料調達の見直しによるコストダウンと、海外販売の強化に取り組みます。特にコスメティック向けなどに力を入れます。ここに来て引き合いが強まっている消臭機能レーヨンの拡販も進めます。

 今期は中期経営計画の最終年度ですから、来期から始まる次期中計の中身も具体的に作っていかなければなりません。また、現在のビスコース法以外の製法、例えばイオン溶液法といった新しい再生セルロース繊維製造法についての研究にも取り組みます。

〈私の旬/趣味の自転車は本格派〉

 大阪の本社と益田工場の往復生活を続けている庄野さん。土日はマウンテンバイクで益田の郊外を走るのが趣味。若い頃はヒルクライムをやっていた本格派だ。「今は体形維持を目的に決まったコースを1~2時間走るだけですが、益田は自然も豊かなので気分転換になります」。今は気候も最高の時期。“冬になったらどうするのですか”と聞くと「雪が降っても防寒すれば乗れますよ」と言うから、やはり本格派。

【略歴】

 しょうの・えいさく 1985年大和紡績(現・ダイワボウホールディングス)入社。96年ダイワボウレーヨン入社。生産技術部長、益田工場長、営業第一部長、大和紡績出向などを経て2022年取締役、23年6月から社長