秋季総合特集Ⅲ(9)/Topインタビュー/クラボウインターナショナル/社長 西澤 厚彦 氏/顧客と一体で商品開発/ベトナム縫製高度化も
2023年10月25日 (水曜日)
クラボウインターナショナルは、原料・素材からの差別化提案力の研磨に力を入れている。その成果が、ベトナム縫製の高度化や、顧客と一体となった商品開発などで表れ始めた。単なる請け負いではなく、顧客にとって有益な提案を行うことで関係性が深まり、リピートにつながる。このサイクルが確立できてきた。
――貴社の“最旬”な事業や取り組み、商品とは何でしょうか。
当社は2021年から、専任スタッフも配置しながら新規ビジネスを作り上げる作業を続けてきました。SNS、SDGs(持続可能な開発目標)、トレーサビリティー、チャイナ・プラスワン、付加価値化、独自性などをキーワードに新たな商流を生み出し、顧客と一体で新商品を開発していくことがテーマです。この取り組みの成果が具体的に表れ始めています。
例えば、以前から当社はベトナム縫製を請け負ってきましたが、チャイナ・プラスワンの流れがここに来て強まっていることを受け、ベトナム縫製の高度化を進めています。
これまでベトナムは中・大ロットの縫製地という位置付けでしたが、小・中ロットに切り替えます。中国縫製からのシフト先として活用するほか、例えば、初めはベトナムで生産し、よりQRが求められる期中追加分は中国で生産するといったセット提案にも力を入れます。
先般、ベトナム縫製に特化した内見会を開き、このスキームを顧客に丁寧に説明したところ、それを契機にこの新たなスキームに関して3~4社との協業がスタートしています。
商品開発の面でも、カジュアル、ユニフォームなど各セクションで顧客と一体になった商品が幾つも生まれ始めています。これまでは、どちらかと言えば顧客の要望を正確に製品にすることに集中していましたが、それに加えて、品質、納期、ロット、生産地などをこちらから提案できる力が付いてきたと自負しています。
オーガニックコットンや再生ポリエステル、生分解性繊維、森林保護、動物愛護といったサステイナブル関連商材の総称ブランド「エコロジック」を軸に、素材メーカー系商社として原料・素材からこだわった付加価値提案ができるようになってきました。着実に顧客からの信頼を高められていると実感しています。素材メーカー系商社を標ぼうしつつ、日本と海外の各拠点で社員研修に努めてきた結果でもあると思います。
こうして生み出した商品が売れれば若い社員の成功体験になります。売れれば単純にうれしいし、売れなければ改良して再びトライすればいい。ここにきて開発、提案の良いサイクルが生まれてきたと自負しています。これが当社の最も旬な話題です。
――上半期(23年4~9月)はいかがでしたか。
まだ半期決算を締めていませんが(取材時点)、第1四半期は前年同期比増収で、営業利益も増加しました。新型コロナウイルス禍が落ち着き、訪日外国人観光客を含む人流が戻り、その影響で受注も回復した格好です。
ただ、原材料価格の高騰や円安を背景にした価格転嫁の影響によって小売価格が上昇しているため、商品によっては販売数量が伸び悩むケースが見られ、今後の在庫調整、生産調整などが懸念されます。酷暑が続いたために秋物の一部が低調だったことも気掛かりですね。
――下半期、来期に向けた重点方針は。
引き続き高収益事業の創出を狙い、新規ビジネスを構築していきます。成長する注目企業との取り組みを深め、新商品開発力を発揮していきます。既存ビジネスは採算性の向上がテーマです。生産地や素材変更などで独自の工夫を凝らし、利益を優先したビジネスを追求します。
調達体制の再構築と現地スタッフの対応力強化もテーマです。さまざまな国を組み合わせて、小口対応、納期管理、効率化、適地生産を可能にする体制を改めて構築していきます。同時に、中国、ベトナム、バングラデシュなど各拠点に日本語、英語を話せる現地スタッフがいますので、それを強みに対応力をさらに磨きます。
〈私の旬/少し上等な家族との時間〉
「家族で少し上等な外食に行くこと」だそう。普段の外食ではチェーン店などあまりお金をかけないようにしているが、家族4人それぞれの誕生日には奮発して各自が希望するお店に皆で行く。それがここ2年ほどの旬だ。加えて、年に2回は家族旅行にも出掛ける。行き先は、別府温泉から大阪府内の近場の温泉まで幅広い。家族と過ごす時間は大切。「商社は人」として国内外各拠点に散らばる社員を大切にする西澤さんらしい旬。
【略歴】
にしざわ・あつひこ 1982年クラボウ入社。テキスタイル第一部長などを経て2013年執行役員タイ国担当兼タイ・クラボウ社長兼サイアム・クラボウ社長。16年6月常務執行役員繊維事業部繊維製品事業担当、同年9月から現職