秋季総合特集Ⅳ(11)/Topインタビュー/北高/社長 高山 茂也 氏/各所で多彩に協業推進/プリント需要喚起する

2023年10月26日 (木曜日)

 プリント生地商社の北高(大阪市中央区)は、さまざまな協業を進めている。「プリント業界を盛り上げ、需要を喚起していきたい」との思いがある。プリントを主力とする生地商社が業界から消える、あるいは会社規模を縮小させる中、同社は残存者として踏ん張っている。高山茂也社長に、協業の先に見えてくるものを聞いた。

――貴社の“最旬”な事業や取り組みは何でしょうか。

 一社単独で何かを成すのは難しいし、限界があります。ということで、当社の“最旬”は協業です。

 当社は近年、リバティ・ジャパン(東京都渋谷区)とのプリント柄共有、同業他社のサンウェル(大阪市中央区)との生地の持ち合い、宇仁繊維(同)、リバティ・ジャパンとの3社合同展「プリント祭」の開催、大阪のシンボルキャラクターである「ビリケンさん」を介しての田村駒との協業などに取り組んできました。これからもさまざまな形で協業を進めていきます。

 今、取り組みを始めているのが、所属する関西ファッション連合(KanFA)のテキスタイル部会を通じての地域ブランドの立ち上げです。同部会の部会長を私が務めており、競合を何かの形にできないかと考えました。詳細はまだ何も決まっていませんが、われわれが立地する「せんば」を何らかの形でブランディングしていく構想です。

 大阪・関西万博に向けてもさまざまな協業を計画しています。大阪商工会議所とKanFAが共同で、繊維・ファッション関連企業が万博にブースを構えるというプロジェクトを進めています。既に、「サステナブルに基づく繊維・ファッション産業の未来共創プロジェクト」という形で申請を終えており、今年末にはその結果が発表される段取りです。申請が通れば、KanFAに加盟する繊維・ファッション関連企業が1週間ほど万博にブースを設けることになります。

 われわれ生地商社と国内縫製工場とが協業する話も進めています。縫製工場では昨今、自社で製品ブランドを立ち上げ、自社で売っていく動きが活発化しています。いわゆるファクトリーブランドですね。ただ、これまでは生地や副資材を発注者からあてがわれていたため、自分で生地や副資材を手配するノウハウがないと聞きます。われわれのような生地商社が生地を提供すればスムーズです。ある縫製組合と実際に話もしました。例えばその製品が海外市場でヒットするなど広がっていけば、生地の供給量も増えますので、両者にとって夢のある話だと思います。

 事実、当社の海外顧客からは、輸送時の二酸化炭素排出量を削減する目的で、縫製まで日本でしてから納めてほしいという要望がありますので、この取り組みが実現する可能性はあると考えています。

 何を成すにも協業の時代。目先の利益にはならないかもしれませんが、積極的に協業を持ち掛けたり、いろいろな取り組みやイベントに参画することで、どこかで何かがつながっていくと信じています。

――上半期(2023年2~7月)はどのような結果に。

 前年同期比で売り上げは横ばいでしたが、増益になりました。増益は価格改定と商品の付加価値化が進んだことが要因です。

 売り上げに関しては、2~4月は10%減と落ち込みましたが、5~7月は逆に10%増でした。分野別ではメンズ向けが伸ばしたものの、レディース向けと切り売り向けが低調でした。輸出も6%減と苦戦しました。

 プリント生地が服地市場の中で全体的に元気がないシーズンが続いていますが、これから始まる24春夏向けでの回復に期待したいところです。さまざまな仕掛けによってプリント需要を喚起しつつ、業界シェアを拡大させていくのが基本方針。その一環として来年も第2回の合同展「プリント祭」を開く予定にしています。

――通期の見通しを。

 増収増益を目指します。そのためにも輸出を伸ばしたい。パリの「プルミエール・ヴィジョン」を継続するほか、2月の「ミラノ・ウニカ」にも復活出展します。中国や中東も拡大対象です。

〈私の旬/数字に一喜一憂〉

 「最近は数字に一喜一憂している」と高山さん。自社の業績のことかと思いきや、春に受けた健康診断の結果のこと。幾つかの項目で基準値を超えるものがあったそう。以降、生活習慣を見直し、再検査では全て基準値をクリアした。ゴルフのスコアも少し良くなった。監督を務める少年野球チームは公式戦15勝9敗で勝率.625となかなかの成績。「やっぱり日々の積み重ねが数字に表れる」と実感。来年1月は同社の決算。「数字にこだわる」と気を引き締める。

【略歴】

 たかやま・しげや 2004年1月北高入社。同年4月経営企画部長、06年4月取締役、07年4月常務。11年3月から現職