秋季総合特集Ⅳ(12)/Topインタビュー/デビス/社長 デビス・ハニ 氏/ウェルネス分野を開拓/スポーツとファッションの融合も

2023年10月26日 (木曜日)

 2021年4月に兄・スービ氏の後を継いで社長に就任したデビス・ハニ氏は、矢継ぎ早にさまざま施策を打ち出してきた。その大半が軌道に乗り、前期(22年12月期)は業績を大きく拡大させることにも成功。今後の拡大対象は中東、スポーツ、ウェルネス。既にそれぞれで成果を出しつつある。ハニ社長に“最旬”の取り組みを聞いた。

――貴社の“最旬”な事業や取り組みは何でしょうか。

 生地選定からプリント企画、マス見本発注までを簡単にウェブ上で行えるオンラインプラットフォーム「エアダイ・ドットイオ」や、イスラエル・コーニット社のデジタル顔料捺染機「プレスト」を活用したオンデマンドプリントサービス「テックスポッド」、中東向け開拓の進展などいろいろありますが、最も旬な取り組みとしては、卵殻膜繊維「オボベール」の編み地販売を始めたことでしょうか。

 当社はウェルネス関連事業への進出とハイイノベーション素材(高機能性素材)の開発、販売の拡大を方針に掲げています。オボベールはその一環です。

 オボベールは、機能性食品開発・販売大手、ファーマフーズ(京都市)の開発商品です。卵殻膜とは卵の内側の薄膜のことで、日本国内では年間1万㌧が排出され、そのほとんどが廃棄されます。これを使用することで環境に配慮します。

 ファーマフーズは卵殻膜が持つ紫外線カット、抗菌・抗ウイルス、保湿バリア機能、pHコントロールといった天然の機能性に着目しました。そして、加水分解した卵殻膜を独自技術で再生セルロース繊維に10%配合することでオボベールの開発に成功しました。

 肌のバリア機能の維持、肌の潤いの向上などが数値として実証され、しっとり感やすべすべ感など体感の面でも優位性が確認されています。

 当社の生地販売先構成は海外が95%を超えていますが、ハイファッションブランドでもウェルネスや高機能に対するニーズが増してきていることを実感しています。

――テックスポッドの状況はいかがですか。

 今年4月にスピードが従来機比2倍になり、白顔料が使え、立体プリントもできる機種にアップグレードしたこともあり、受注は堅調でフル稼働です。ほとんどが日本のアパレルや同業の生地商社からの依頼です。レディースエレガントからストリートカジュアル系のブランドまで、幅広くこのサービスの認知度が上がっており、浸透を感じます。中東の既存顧客からシューズ向けの染め依頼が来たこともあります。今後は同業他社との協業に力を入れていきます。

 エアダイ・ドットイオも活用が増えています。現状では中東からの依頼が多いですね。民族衣装のアバヤにデニム調や先染めチェック調などの色柄を付けるというのが大きなトレンドになっており、その受け皿になっています。今後はこのサイトの中でテックスポッドのサービスも受けられるように改良していきます。

――イアリアの服地展「ミラノ・ウニカ」にも出展しました。

 「デビスポーツ」としてスポーツとファションを融合させた生地を強く訴求しましたが、意義があったと思います。

 パリの「プルミエール・ヴィジョン」(PV)その他、契約エージェントが開く展示会などにも積極に出展を続け、さらなる欧米向け拡大に臨みます。

――上半期(23年1~6月)の商況は。

 売上高が前年同期比6%減収でしたが、為替の追い風や効率化によって営業増益となりました。

 前期が過去最高売上高を大幅に更新するなど「異常な決算」だったことの反動を想定し、期初には大幅減収もあり得るとみていましたが、微減にとどめられました。欧州向けは減少しましたが、中東向けのプリント生地が順調に拡大しました。中東向けは全体売り上げの10%を超えました。全体通期では前期比5%減収を見込んでいます。

――前期は業績を大きく拡大させましたが、増員も必要では。

 必要です。特に、繊維のモノ作りが分かる業界経験者で30代ぐらいの企画開発スタッフを求めています。

〈私の旬/道なき道を行く〉

 「冒険に夢中です」と即答するハニさん。ハイキングやただの登山ではなく秘境。月に1回ほどのペースで友人3、4人と連れ立って(たまに奥さんも)、日本中の秘境を巡る。連休を利用して北海道まで足を運んだこともある。兵庫県姫路市の山奥にある、日本で唯一の“坑道ラドン浴”「富栖(とみす)の里」にも行った。「道なき道を行くのが楽しい」。世界中に販路を持つデビス。そこにはハニさんのサバイバル精神も関係していそうだ。

【略歴】

 デビス・ハニ 1996年デビス入社。2008年取締役副社長、21年4月代表取締役社長