帝人/改革実行に手応え/北米市場にリスク要因も

2023年11月08日 (水曜日)

 帝人の内川哲茂社長は現在取り組んでいる課題3事業(アラミド、複合成形材料、ヘルスケア)に対する「収益性改善に向けた改革」に関し、「依然として北米市場にリスク要因があるが、全体として予定通りに進捗(しんちょく)しており、今期での改革実行は達成できる」と手応えを示した。

 収益性改善策では課題事業の構造改革を断行し、2024年3月期までに300億円以上の収益改善を計画する。特に課題の多い複合成形材料は設備故障からの復旧と安定稼働に若干の遅れが生じているが、低採算品からの撤退や価格改定、購買集中化などによる利益率改善を進めた。中国事業からの撤退や国内子会社の譲渡など選択と集中も断行したことで「おおむね計画通りに進捗している」と言う。

 アラミドは、原料工場火災の影響からの回復を前倒しで達成した。高騰した燃料(天然ガス)も先物予約の活用で計画よりも低い水準の価格で調達できている。特殊補修部品の納入に時間を擁していることで生産安定化には若干の影響が生じているが、こちらも収益性改善はおおむね計画通りに推移している。

 一方、内川社長は特に複合成形材料で北米市場にリスク要因が残ると指摘する。昨年度に発生した品質問題に対する補償費用や、工程安定化のための外部エンジニアリング委託費用の増加、全米自動車労働組合(UAW)によるストライキの影響などがある。こうしたリスク要因に対して内川社長は「一部は前回見通しに織り込み済み。その上で新たな対応策を進める」と話す。

〈繊維・製品は大幅増益〉

 帝人の2023年4~9月期連結決算は売上高5065億円(前年同期比0・8%減)、営業利益99億5100万円(30・1%減)、経常利益100億円(49・8%減)だった(短信既報)。マテリアル事業の複合材料で中国から撤退したことに関する損失計上などがあり純損失5億4100万円(前年同期は純利益75億7500万円)となった。

 マテリアル事業は売上高2155億円(3・2%減)、営業損失53億2200万円(前年同期は57億6800万円の損失)だった。アラミド繊維は価格改定と天然ガス化学の低下で利益率が改善したが、昨年発生した原料工場火災の影響が一部残ったことなどで減収増益だった。炭素繊維は航空機向けが回復基調も需要家の調達制約の影響で販売増に至らず減収・微減益だった。

 繊維・製品事業は売上高1585億円(前年同期比横ばい)、営業利益70億4500万円(38・0%増)と大幅増益だった。衣料分野は、北米や中国向けテキスタイル・衣料品の販売が好調に推移し、国内向けも衣料品の販売好調が継続した。産業資材分野は、水処理フィルター向けポリエステル短繊維や人工皮革、インフラ補強材が好調だった。

 通期は連結売上高1兆300億円(1・1%増)、営業利益350億円(172・1%増)、経常利益310億円(240・7%増)、純利益130億円(前期は176億円の損失)を見込む。