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三陽商会 来年「猛暑対策」に軸足

2023年11月09日 (木曜日)

 三陽商会は、24春夏シーズンで「盛夏の猛暑対策に注力する」(加藤郁郎取締役兼専務執行役員)方針を示した。基幹ブランドで実施し、最新の技術と機能素材を取り入れて対応する。

ジャケットの軽量化をはじめ、家庭洗濯が可能なセットアップ、接触冷感が持続する素材を採用するなど、本物志向の装いに快適な機能を搭載する。

 猛暑対策を掲げた経緯について「今秋冬商戦は気温が高く3~4週間程度、コートの稼働が遅れている。夏の猛暑も影響している」(加藤氏)と述べた。今年、東京都心では気温25℃以上の夏日が143回を記録し、過去最多を更新(11月7日時点)。こうした傾向が続くと読み、企画に反映させることを決めた。

 また、11月上旬の時点でコート販売量は前年比の8割程度、札幌など一部の地域では10月下旬から高稼働しているものの「現時点で厳しい状況」とした。その一方で、スーツやジャケット、ブルゾン、軽衣料は好調に推移している。

 スーツやジャケットに強みのあるブランド「ポール・スチュアート」では軽量ジャケットが売れ筋に浮上。英ブランド「マッキントッシュ・ロンドン」でもブルゾン、ジャケット類が動いている。コート以外のアイテムで売り上げを補完し、秋冬商戦を引き上げた。

 24春夏では、紳士、婦人服の「マッキントッシュ・ロンドン」において約40%の軽量化に成功したジャケットを投入。家庭洗濯が可能で、軽さと上質感を備えたウール素材のセットアップを打ち出す。紳士服「マッキントッシュ・フィロソフィー」では、透けるようなメッシュ素材のカラミ織りを採用。カーディガンなどは薄く軽量に仕上げている。

 婦人服「ポール・スチュアート」では、中空糸を採用した軽量アイテム「フロータブルジャケット」を提案する。インナーには汗ジミ防止、接触冷感といった機能を備えたビジネスユースのTシャツを訴求。同ブランドの企画担当者は「体に貼り付きにくい商材をそろえる」とした。そのほかにも真夏日でも快適に過ごせるビジネスウエアを増やす。

 基幹ブランドを軸とした横断型の猛暑対策を展開するのは珍しく、今後は同業他社に広がる可能性もある。商品のシーズン性や既存のMDを覆すことも予想され、三陽商会ではスプリングコートでも積極的に機能素材を使用する構えだ。