ユニフォームの 未来はいかに  A+A2023 (9)

2023年11月17日 (金曜日)

多角化し強くなる

 働き方が多様化する中、欧州メーカーでも女性向けを強化する動きが目立った。ドイツのキューブラーは売上高の9割が男性向けだが、今後女性向けの拡大が「成長の鍵を握る」として企画を強化。パンツではフェミニンカットを取り入れ、女性をスタイリッシュに見せるとともに、フィットしながらも動きやすいシルエットを追求した。

 イタリアのディアドラは、女性の足の形状に合わせ、人間工学に基づき開発された女性専用のワークシューズ「アテナ」を披露。インソールは足底圧を最適に分散、ミッドソールはクッション性にこだわり長時間履いても疲れにくい。女性の体に合わせて設計しフィット感を重視したウエアも豊富にそろえた。

 今回のA+A2023で特筆すべきことは、一部の企業がブースをクローズドにしていたことだ。特に毎回多くの来場者でにぎわうデンマークのマスコットは「商品をコピーしようとするケースが相次いだことからこのような対策を取った」(国際マーケティング部長のシッコ・ステーンフイセン氏)と言う。

 同社は現在、欧州市場でシェアが高いワークウエアメーカーの1社といわれ、新型コロナウイルス禍でも成長してきた。700を超えるオリジナルアイテムの大部分は、ベトナムとラオスの自社工場で生産。顧客サービスや効率的な物流、安定した供給保証を重要な運用戦略と位置付ける。新たに「フロントライン」と呼ばれるスーツスタイルのコーポレートウエアも展開。ユニフォームの総合メーカーとしての歩みを強める。

 「30年前、最初はガレージでの作業服販売からスタートした」というチェコのチェルバは、東欧を中心に市場を広げ、イタリアのワークシューズメーカーのパンダや、オーストリアのワークウエアメーカーのリッツを買収。現在はグループ全体で年間売上高60億コルナ(約400億円)以上を誇る。同社の成長の源泉は東欧ブランドだけに価格訴求力もあるが、やはり商品の企画力。取り外し可能なフードが付いた反射デコプリントのソフトシェルジャケットなど、斬新なデザインの商品をそろえる。

 スウェーデンのハルタフォースグループはワークウエアの「スニッカーズ」、フットウエアの「ソリッドギア」、工具の「ハルタフォース」など事業を多角化してきた。21年にはワークウエアの「フリスタッド」「カンザス」なども買収。コロナ禍前2億ユーロだった売上高は、直近で6・5億ユーロまで拡大した。

 サステイナビリティーだけでなくトレーサビリティーの面から「透明性が求められるようになってきた」と、営業開発部長のヘンリー・ランドバーク氏は話す。25年までにグループ全ての生産施設で環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001認証を取得するとともに、30年までに自社の事業を100%再生可能エネルギーに切り替えるといった目標を掲げる。成長とともに真の持続可能性を目指す動きは、日本に比べ一歩も二歩も先を行く。

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 次回の「A+A2025」は2025年11月4~7日に開催を予定する。

(おわり)