繊維ニュース

素材メーカー・ユニフォーム地/値上げ巡る綱引き続く/学販向けも本格化

2023年11月17日 (金曜日)

 素材メーカーによるユニフォーム地の値上げは今年で終わりそうにない。原材料・原燃料の高止まりや円安が続く中、ワーキングやサービスなどビジネスユニフォーム向けでは一部のメーカーが年明けから値上げする。学販向けでは2025年入学商戦に照準を合わせ、来春から値上げが本格化しそうだ。素材とアパレルのメーカー双方で採算が悪化しつつある中で、値上げを巡る綱引きが続く。

(於保 佑輔)

 素材メーカーの多くは年初に為替を1ドル=130円台前半と想定していた。しかし、想定以上に円安が進み採算が悪化。紡績企業は昨年急騰した原綿の在庫を抱えていることに加え、原燃料価格の高止まりで「値上げしても追い付かない」状況で、価格転嫁の遅れが業績の足を引っ張る要因にもなっている。

 日清紡テキスタイルは来年1月出荷分から平均で10%以上の値上げを想定する。国内の協力染工場で採算が悪化していることに加え、予想以上の円安で「耐えられない状況になってきた」(米本克彦テキスタイル事業部長)ことを理由に挙げる。

 クラボウやシキボウでは下半期(23年10月~24年3月)から、これまでの値上げ効果による収益改善を期待。クラボウの北畠篤取締役は来年以降の値上げについて「何も決めていないが、これ以上の円安が進み、エネルギーコストが上がれば考えざるを得ない」と話す。シキボウの加藤守取締役も「円安が進めばお願いをしなければいけない」と述べる。これ以上改定が難しいカタログ定番商品向けでは「新しい商材を提案する」と切り替えも検討する。

 ユニフォームメーカーの在庫調整の機運も高まり、値上げによる販売減という悪循環に陥る中、素材メーカーは自社の商材を見直す時期に差し掛かる。「この状況下でも値上げが通らないなら、逆に売ってはいけない商材」と指摘するのは東洋紡せんいの清水栄一社長。利益が取れて売れる理由が説明できる「“利(理)”のある商材を売らなくてはいけない」と強調する。

 一方でLGBTQ(性的少数者)に配慮したブレザー化への制服モデルチェンジが高水準で続く学販向けは、セーターなどのニット製品で値上げが本格化。学生服地でも素材メーカーの一部が来春に向けて値上げを打診しており、学生服メーカーとの交渉に入った。

 東亜紡織は来年4月出荷分から生地を10%値上げする。製品と夏物用の生地は6月から。協力工場からの加工料金値上げ要請への対応とともに、自社工場も原燃料高や最低賃金の上昇を受けて人件費が高騰、ウールをはじめとした原材料費も高止まりを続けており、高村和宏執行役員は「苦渋の選択で、やむを得ないと判断した」と話す。

 ニッケは15日、来年4月出荷分から学生服地の10%値上げを発表した。工場では人件費の上昇とともに人手不足も深刻化しつつあり、金田至保常務執行役員は「(業界の)構造的にも値上げをしていかなければ存続が難しい状況になりつつある」と説明する。

 一部の学生服メーカーは25年入学商戦から製品を値上げする意向を示す。ただ、制服のブレザー化によって柄物の増加による多品種小ロット生産の頻発、地域によっては旧制服と新制服が共存する、いわゆる“第3の制服”で採算が悪化。物流の2024年問題も絡み、素材メーカーとの交渉で激しい攻防が予想される。