繊維ニュース

環境配慮素材や機能素材/法令順守は絶対条件/景表法や薬機法に注意を

2023年11月21日 (火曜日)

 環境配慮素材や機能素材を活用した繊維製品の普及が進む中、特性や機能の表現に関して景品表示法(景表法)や医薬品医療機器等法(薬機法)など法令に抵触しないように注意することが絶対条件となる。(宇治光洋)

 景表法は、事業者が消費者に対して商品・サービスが実際よりも著しく優良であると示して販売することを「優良誤認表示」として禁止している。薬機法は、医薬品・医療機器として登録されたもの以外が疾患・症状に対する効果・効能をうたうことを禁止している。

 近年、環境配慮素材の採用が増える中、繊維に限らず多くの素材で環境配慮につながる特性をうたうケースが増加した。新型コロナウイルス禍を契機に衛生関連の機能素材・加工を採用した製品も増加し、機能性を表示した商品も広く流通するようになった。こうした中、景表法や薬機法に抵触することが疑われる商品も増加しており、当局は監視を強めている。

 その一例が環境配慮素材の特性として注目される生分解性。生分解性は分解される環境や条件によって「コンポスト中生分解性」「土壌中生分解性」「海水中生分解性」に大別されるが、この違いを無視した表示が少なからず存在する。消費者庁も事態を重く見ており、2022年12月にはコンポスト中生分解性しか確認していないにもかかわらず土壌中や海水中での生分解性をうたう商品を販売したとして釣具などプラスチック製品の販売業者10社に措置命令を出した。

 こうしたリスクを回避するためには、やはり国際標準化された試験方法による生分解性試験を経て、国際的な第三者認証を取得することが望ましい。例えばダイワボウレーヨンはレーヨン短繊維で、丸三産業は晒綿とスパンレース織布で海水中生分解性をうたう商品を販売しているが、ともにASTM規格に基づく海水中生分解性試験をクリアし、第三者認証である「OKバイオディグレイタブル・マリーン」を取得している。

 近年、抗ウイルス加工の商品も急増したが、やはり機能のうたい方によっては薬機法に抵触する危険性がある。こうしたリスクを回避する方法の一つが、繊維評価技術協議会(繊技協)が認証する「SEKマーク」を取得した素材や加工を使用することだ。SEKマーク認証のための試験方法は国際標準化されており、表示規定も厚労省に相談した上で薬機法に抵触しないよう配慮された。

 繊技協は現在、アレルギーの原因物質である花粉・ダニ由来タンパク質を低減する加工のSEKマーク創設にも取り組んでおり、こちらも厚労省に相談しながら薬機法に抵触しないようにマークの名称などを設定することになる。

 加えて、個別企業レベルでの法令順守は当然ながらサプライチェーン全体でコンプライアンス尊重の意識を共有することが欠かせない。繊維業界全体で意識を高めていくことが求められている。