繊維ニュース

クローズアップ/東レ 参事生産本部〈繊維技術・生産〉担当 黒川 浩亨 氏/北陸産地と一体に

2023年11月22日 (水曜日)

 東レはこのほど、福井市内で東レ合繊クラスター会員企業向けの繊維新製品報告会を開催した。2年ごとに開催しているもので、当日は繊維の研究開発部署(フィラメント技術部、産業用フィラメント技術部、ステープルファイバー技術部、テキスタイル機能資材開発センター、繊維研究所)が新技術を報告し、高い関心が寄せられた。報告会の概要と今後の産地との取り組みについて、参事生産本部の黒川浩亨氏に聞いた。

 ――報告会で紹介した商品は。

 環境配慮型製品と革新的複合紡糸技術「ナノデザイン」を紹介しました。環境配慮型製品はナイロン56、510、610などのバイオマス原料由来繊維、マテリアル/ケミカルリサイクル、PFAS(有機フッ素化合物)フリーといった有害物質を抑えた技術などです。

 ――「ナノデザイン」も好評です。

 ナノデザインのような素材を料理していただける北陸産地と一体になり、原糸の特徴と産地のノウハウを組み合わせて世界にない高機能商品を発信していくことが重要です。報告会後の声を聞いてもそういった取り組みへの期待が大きかった。クラスターの各分科会と連携を強化して開発を進めていきます。

 ――ナノデザインの強みは。

 ナノデザインは、単成分でなく複数のポリマーを高度に合わせ込むことがポイントです。複合の形状や機能などを改良、改善していくことでまだまだ可能性があります。汗染み防止など新しい機能もそうですし、ポリマーから変えることで環境負荷のさらなる低減につなげることもできます。リサイクルが難しかったものでも、ナノデザインにすれば口金を変えなくても可能になることが確認できており、環境とナノデザインを組み合わせた開発に注力します。

 ――産業資材用の素材もあります。

 液晶ポリエステル「シベラス」などを紹介しましたが、取り組みたいという声を多くいただきました。今は衣料用の長繊維を使っていただいているところが多いのですが、産業資材用や短繊維での協業もさらに広がるとみています。

 ――今後の北陸との取り組みのポイントは。

 当社はポリエステル、ナイロン、アクリルの全ての素材を日本で生産しています。日本の拠点を守っていくにはさらなる高度化が必要で、日本にしかできない原糸・原綿を追求していきます。北陸産地は糸加工、織り・編み、染色加工など各段階で優れた技術を保有しています。その会社でないとできない技術も多くあります。それぞれの得意技術を磨き、高度な原糸・原綿と高次加工を組み合わせることで日本の繊維産業を盛り上げていきたいと考えています。