別冊ユニフォーム総合(6)/A+A2023/持続可能性さらに前へ

2023年11月24日 (金曜日)

〈技術力で海外勢と差別化〉

 欧州の有力なユニフォーム、素材メーカーなどが多数出展した「A+A2023 国際労働安全機材・技術展」は日本企業にとっても海外販路を広げる上で効果のある展示会だ。2019年開催時の日本の出展企業は海外の日系企業含め28社、前回の21年時は新型コロナウイルス禍だったこともあり8社と減少したが、今回展は33社とコロナ禍前よりも伸び、過去最多となった。

 高機能性は日本企業の強みだ。今回展でも日本勢は独自の技術力を来場者にアピールした。

 東レは難燃素材の「ナフレム」を展示した。従来の難燃作業服には固くて動きにくい素材の採用が多かったが、ナフレムは「ストレッチ性と難燃性を併せ持つ」(トーレ・インターナショナル・ヨーロッパの松下達マネージングディレクター)ことが特徴。その機能性は注目を集めた。

 帝人はメタ系アラミド繊維「コーネックス」、パラ系アラミド繊維「トワロン」など、熱、火災などから人体を守る防護衣料向け素材を紹介。東洋紡エムシー(大阪市北区)は展示テーマを「カットレジスタンス」とし、高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」を訴求した。

 環境配慮、サステイナビリティー対応は、欧州ではもはや必須だ。その中で一歩進んだ環境配慮型の取り組みが求められる。カネカはモダクリル繊維の難燃剤として一般的に使用されるアンチモンを使用していない“アンチモンフリー”の難燃素材を前面に出してアピールした。

 さまざまな業界で職場の安全性を重視する傾向が強まる中、今回展では高視認性安全服の展示が多く見られた。日本企業もこの流れを意識する。

 田村駒は高視認商材をメインに展示。“メカニカルストレッチ”、高通気、高速吸汗速乾機能などの機能を持つ高視認生地を提案した。併せて縫製品も展示し、生地から製品まで対応できる点も発信した。

 日本企業の中では最多とみられる、18回目の出展を果たしたユニチカスパークライト(京都府南丹市)。イエローグリーン、ピンク、ブルーなどのカラーをそろえる蛍光タイプの反射材や、さまざまな柄を施すことができるセグメント加工による反射材など、再帰反射材のバリエーションの豊富さをアピールした。

〈海外開拓の足掛かりに〉

 海外販路開拓を目指し、今回展でも日本企業が複数初出展を果たした。服飾資材国内大手のSHINDO(福井県あわら市)は「ワークウエア分野は今後伸びる素地がある」とみる。展示品はワーク向けに特化。ニットゴムに使われる素材としてポリウレタンなどが主流の中、ワークの厳しい環境下でも劣化しにくい、シリコーン糸を採用したものを展示した。

 「市場調査とともに市場開拓のチャンスを探すため」に出展したのは総合商社の野村貿易(大阪市中央区)。生地販売のZERO―TEX(ゼロテックス、東京都渋谷区)が展開する環境配慮型多機能素材「ゼロテックス」とともに、ベトナムの自社縫製工場で素材から縫製まで一貫で手掛けられる強みを発信した。

 安全衛生関連用品・機材を製造販売するミドリ安全(同)は電動ファン(EF)付きウエアを披露。日本国内では初となる、爆発や火災リスクの高い防爆エリアでも使用可能なEFウエア「クールファンEP」をアピールした。欧州ではまだ認知度の低いEFウエアだが、世界的に温暖化が進む中、「今後需要が出てくる」とみる。

 興和も今回が初出展となる。帯電防止機能を持つ防じん服のほか、和紙糸使いのウエアのような“日本らしさ”を意識したアイテムを展示するなど、来場者の目を引いた。

〈常連の手袋メーカー〉

 日本の出展企業で手袋メーカーは常連だ。継続出展しながら海外向けビジネスを拡大させている。

 ハンボ(東京都新宿区)の國本浩嗣社長は「A+Aは販路開拓に大きな効果がある」と説明する。今回は展示テーマを「SDGs」(持続可能な開発目標)とし、糸にトウモロコシ由来の繊維を採用するなどした生分解性を持つ手袋などを展示。炭素系超高分子技術を応用したポリエチレン繊維「メタルキュー」を採用した手袋など、高機能手袋もアピールした。

 東和コーポレーション(福岡県久留米市)は11回の出展実績を持つ。今回展ではテーマを「サステナビリティ」とし、VOC(揮発性有機化合物)フリーで、ゴムに空いた無数の細かい穴が吸盤のような役目をし、高いグリップ力を発揮する滑り止め技術の「ナノフィニッシュ」を発信した。

 アトム(広島県竹原市)は「配合技術によって、マイナス20℃の環境下でも硬くならない」(森下哲樹営業部海外営業課長)ニトリル手袋を、デモ品を用いながらPR。ショーワグローブ(兵庫県姫路市)は耐切創手袋のほか、生分解性ニトリル技術の「エコ・ベスト・テクノロジー」搭載の環境に優しい手袋を披露した。

 140カ国から6万2千人の来場があったA+A2023。次回は25年11月4~7日に開催される。