別冊ユニフォーム総合(15)/新たな領域に仕掛け、成長へ/ユニフォーム流通/アグロワークス/HARADA/カマタニ

2023年11月24日 (金曜日)

〈アグロワークス/社長 安黒 千能 氏/服好き職人に良い品提供〉

 兵庫県と大阪府にユニフォーム関連ショップ「キーポイント」12店を構えるアグロワークス(神戸市)は2024年3月期決算で、売上高19億円(前期比5・6%増)を見込む。

 同社は「服好きな職人に良いものを提供していく」ことをコンセプトにしており、新規出店にも余念がない。昨年10月に初めての大阪市内店舗としてオープンした、職人のオフスタイルまでを提案する新業態「キーポイントネクスト西淀店」(大阪市西淀川区)は開店以来堅調な売れ行きが続く。SNSの発信も奏功して遠方からの来客も多いと言う。

 今年10月1日には12店舗目となる「キーポイントワールド西神戸店」(神戸市)を新たに開設した。約500平方メートルで、キーポイントとして最大の広さ。新商品から在庫処分品までバラエティーに富んだ品ぞろえを特徴とする。

 さらに来期中に大阪府内に5店舗を開設する計画を持つ。全て、職人のオフスタイルに焦点を当てたネクスト形態とする予定。ユーチューブやインスタグラムなどによる情報発信に力を入れて新店舗への集客に努めつつ、ネット通販の比重を上げていく考えだ。

 ユーチューブでのコーディネート提案などSNSによる発信とともに力を入れているのが、自社ブランドと、メーカーとの協業品。自社ブランドは「ファイブス」に絞って展開しており、売り上げ全体に占める同ブランドの比率も徐々に高まっている。来年はスタイリッシュさをより重視した新ブランドも立ち上げる予定。協業はバートルやアイズフロンティアなどと進めている。今夏も電動ファン付きウエアのファンユニットをキーポイント限定商品として販売したところヒット商品になった。

〈HARADA/社長 原田 栄造 氏/新ブランド「リュクス」発売〉

 HARADA(山口県防府市)の2023年7月期売上高は、別注ユニフォームの「オーダーユニフォームカンパニー」(OUC)事業の拡大などで前期比22・7%増の28億6千万円だった。今期もOUC事業を軸に拡大し、売上高32億円を計画。10月には福岡に拠点を設け、九州でもOUC事業を広げる。

 販路を広げるとともに、新たにアイトス(大阪市中央区)やTSデザイン(広島県福山市)など、ワークウエアメーカーの定番商品に刺しゅうやプリントなどアレンジを加えるカスタムラインを本格化。別注への敷居が高いと感じるユーザーを中心に10セットから供給できる気軽さから受注が拡大した。

 今期もOUC事業を軸に成長を目指す。カスタムラインではショップでも対応できる仕組み作りを進める。OUC事業では今期16億~18億円(前期14億円)の売り上げを見込む。

 12月から新たな自社ブランド「リュクス」を発売する。第1弾として、既存のワークウエアとは一線を画すデザインやコンセプトによる「アパレルユニフォームという新しい概念」(原田栄造社長)を取り入れた新感覚のリバーシブルジャケットを開発。12月から社員が着用するとともに、ショップや企業納入、インターネットで販売する。

 1万9800円の高価格帯ではあるが、デザインだけでなく高品質な生地を使うなど細部にこだわり、「販売しながら新たなマーケットを作りたい」。

 原田社長は「ユニフォームは嗜好(しこう)品ではないが、その要素を取り入れなければ、良い人材、面白い人材の雇用につながらない」と指摘。来年の夏以降に第2弾の新商品の投入も予定し、「新たなユーザーを掘り起こす」きっかけを作る。

〈カマタニ/専務 鎌谷 成行 氏/仕入れ先拡充し足で稼ぐ〉

 50万人都市の兵庫県姫路市に密着した事業展開で、ユニフォーム製造販売を手掛けるカマタニ(姫路市)の2023年12月期は、前期売上高41億円から横ばい、または微増になりそうだ。来期も大型案件が既に決定するなど堅調で、40億円台を見込む。

 安定的な売り上げを確保する要因は、仕入れ先の拡充と足で稼ぐ営業活動にある。自社工場で製造する官公庁向け制服の需要は、警察の「合服」が減少するなど低調になりつつある。一方、メーカー製ユニフォームの販売はワークウエアと病院白衣を中心に伸長。さまざまなメーカーとジャンルのカタログを用意し、数多くの営業先に足しげく通う営業活動が奏功した。

 同社は、「姫路市でユニフォーム販売のシェアが50%に及ぶ」ユニフォーム販売大手。1919年に洋品雑貨店として創業した。その後官公庁の制服の製造を開始し、警察やJRなどの制服を本社に隣接する自社工場で製造し販売する。現在では、メーカー製のユニフォーム販売に加え、イベント用短期ユニフォームのレンタルや病院白衣と寝具のリース、クリーニングなども手掛ける。

 鎌谷成行専務は「リーマンショックがあった2008年ごろは、売り上げが底だった」と言う。テコ入れのため、仕入れ先の拡充と足で稼ぐ営業活動を開始。17年には、売上高は40億円台に達した。

 成長分野のワークウエアでは、軽量でストレッチ性を備えるワークウエアが好調。綿100%でも捲縮(けんしゅく)糸により伸縮する素材の採用したウエアへの引き合いが強い。来期は顧客から問い合わせの多かった水冷式暑熱対策ウエアの販売にも取り組む。

 もう一つの成長分野は、シキボウが開発した制菌加工生地「ノモス」を使った病院白衣と寝具。昨年11月にリネンサプライの会社をM&A(企業の合併・買収)するなど攻勢を強める。