別冊ユニフォーム総合(22)/素材・副資材/クラボウ/モリリン/シキボウ/おたふく手袋

2023年11月24日 (金曜日)

〈クラボウ/感性くすぐる合繊使い多彩に〉

 クラボウは、合繊使いの素材開発を加速している。徳島工場(徳島県阿南市)の加工技術を駆使し、合繊メーカーにはできない綿紡績ならではの多彩な素材感によって市場開拓を加速する。

 高い防炎性能と洗濯耐久性を持つ「プロバン」では、これまで綿100%素材が中心だったが、さらに強力なポリエステル混やナイロン混を開発。耐スパッタ(火の粉)性能の高さとともに耐摩耗性などハードな作業現場へも訴求できる。

 電気・電子技術分野の国際規格であるIEC(国際電気標準会議)に対応した高制電素材「エレアース」では、ポリエステル100%のニット素材を開発。ポリエステル・綿混が中心だったバンジーテックでも、ポリエステル100%使いでありながらも綿ライクでマットな質感に仕上げた素材を打ち出す。バンジーテックでは企業別注向けに1社で10万メートル以上の受注が決まるなど販売が堅調で、ポリエステル100%素材の展開でより幅広いニーズをつかむ。

 環境配慮にも力を入れ、裁断片などを独自の開繊・反毛技術で再資源化する「ループラス」をユニフォームへも本格的に提案。徳島工場をこれまでサステイナブルファクトリーとして発信してきたが、ループラスの生産に関わる紡織の安城工場(愛知県安城市)もサステイナブルファクトリーとして存在感を高める。

〈モリリン/再生・循環型サステ素材軸に〉

 モリリン繊維資材グループは再生・循環型素材ブランド「エバーサークル」を軸に訴求を図る。「ずっと続ける、ずっとつながる」をコンセプトに、差別化した製法や独自の循環経路を強みにした素材のブランディングを強化する。

 国内1600カ所以上の回収ボックスに集まるペットボトルから再生した高純度ペレット「ボトリウム」使用の繊維製商材は注目度が高い。資源回収・再生のトムラ・ジャパン(東京都中央区)と協業し、回収資源の輸送から再生まで、環境負荷の少ない方法で行う。

 廃棄した衣料品を繊維に再生する仕組みを打ち出す。繊維製品の回収を手掛けるBPLab(ビーピーラボ、東京都港区)と協業。循環プラットフォーム「ビオロジックループ」で回収した衣料品を原料に、新たな糸・生地・製品を展開していく。綿は反毛し、ポリエステルはチップに再生する。

 この再生素材を「彩來溜(さいくる)」と名付け、独自の回収・循環システムとともに構築を進める。バージン原料やボトリウムなどとの組み合わせも可能。異素材を掛け合わせることで、独自性と付加価値を高められる。

 鉄鋼所でスチール製造時に排出されるガスの、炭素原子を含む物質を繊維化する「クークル」もアピール。原着ポリエステル「モコフィーロ」と、ナイロン糸製造工程でチップに添加し、微生物による生分解性を促進する「シクロ」を合わせた「モコフィーロウィズシクロ」も訴求を強める。

〈シキボウ/連携通じ価値高める〉

 シキボウは10月1日にブランド戦略プロジェクトを立ち上げた。ファッションブランド「アンリアレイジ」との連携などを通じて企業価値やブランド価値を高める。同ブランドを率いる森永邦彦デザイナーの発想を生かし、独自技術を思いもつかなかった製品やビジネスへとつなげるのが狙い。ユニフォームの企業別注向けで同ブランドの提案も進んでいる。企業イメージの向上につながるようなユニフォームの供給にも力を入れる。

 今月にはユニチカトレーディング(UTC)と合同総合展を開き、課題解決型の素材を中心に発信。ユニフォーム用途で広がりを見せる、UTCの特殊複重層紡績糸「パルパー」を使ったシキボウの校倉(あぜくら)造構造織り組織高通気生地「アゼック」などを中心に100点近くの生地サンプルを展示した。

 UTCの高遮熱性クーリング素材「こかげマックス」を使い、シキボウの校倉構造組織「すだれ編み」を組み合わせた素材は、高通気でありながらもUVカット、温度上昇の抑制、透け防止機能もある。アゼックにUTCのプラズマによる耐久性防汚加工「デュアルプラスEM」を組み合わせたサンプルでは未加工品に比べ実際の汚れの違いが一目瞭然。フッ素フリーの流れが強まる中、有効的な訴求ができる。

〈おたふく手袋/素材にこだわりユーザーの心つかむ〉

 作業用手袋製造卸のおたふく手袋(大阪府箕面市)は、「ボディタフネス」ブランドを軸にインナーの販売に力を入れている。上半期(4~9月)のインナー販売は高い接触冷感性能を持つインナーの完売などで、前年同期比30%弱の増収だった。デザイン性だけでなく素材にこだわった商品開発が功を奏している。

 上半期は23春夏向けに投入した、ナイロンより接触冷感性能に優れるポリエチレンを使った「冷感3Dファーストレイヤー UVカットスリーブ クルーネックシャツ」の販売が堅調。中でもブラックの長袖が完売した。

 「フーバー」ブランドのオーバーサイズ5分丈クールTシャツも販売量が前年比で倍増。外側に綿、肌側に接触冷感と吸汗速乾に優れたポリエステルを配した2層構造の生地を使い、快適な着心地を追求した。さらに透けにくく、ポケット付きで使い勝手の良さを「評価された」と言う。

 23秋冬から発売する蓄熱効果の高い「サーモEVO」シリーズのインナーでは蓄熱粉末素材を練り込んだポリエステル糸を使用。その糸に吸汗速乾加工を施し保温性と吸汗性を両立させた。

 今後は抗菌防臭や反射、高いストレッチ性など「価格が上がっても買ってもらえる理由」を追求した商品開発を強め、主力の手袋でも差別化を図る。