繊維ニュース

東レ サステ領域深耕で収益力向上

2023年11月28日 (火曜日)

 東レは、サステイナビリティー領域の深耕によって収益力を高める。リサイクル繊維の事業ブランド「&+」(アンドプラス)で生地・縫製品までの一貫提案強化が利益率上昇につながるなど、取り組みの成果が見える。高い利益率を誇り、現中期経営課題の柱でもあるサステ領域の収益力向上で持続的成長を図る。

 2026年3月期が最終の中経では、「東レグループサステナビリティ・ビジョン」の実現に貢献する事業・製品群を集積したサステナビリティイノベーション(SI)事業、半導体製造・検査装置などデジタル技術に関連する領域のデジタルイノベーション(DI)事業を成長分野に設定。2事業で連結売上収益の約6割を占める規模に育成する。

 繊維もSI事業に重点を置き、中経では環境配慮型素材の販売拡大に力を入れている。再生ポリエステルの原料であるペットボトルの価格が高水準であることなどからアンドプラスの24年3月期は販売数量で前年比20%ほど減少する予想ながら、利益率は上昇するとみている。

 27日に東京都内で会見した大矢光雄社長は「ペットボトル価格が上昇すれば利益が損なわれる」のは事実とした上で、「特品(高付加価値品)の生産、生地・縫製品までの一貫生産で利益率が高められる」と説明。三木憲一郎専務執行役員も「モノを変えて販売し、それによって利益を得る」と強調した。

 繊維のSI事業関連では、バイオマス由来材料への転換によって化石燃料からの脱却、温室効果ガス排出量削減に貢献する。部分バイオPET繊維の浸透のほか、100%バイオナイロン繊維の本格販売開始、100%バイオPET繊維の量産化、非可食糖の生産拡充などを目指す。

 SI事業全体では、水素社会実現に向けたソリューションとして先端素材を提供するなど、年率7・6%の成長を計画。DI事業は年率15%の拡大を見込む。両事業に設備投資費と研究開発費を合わせて約4500億円を投下するとし、レギュラートゥ炭素繊維の生産能力増強などを決めた。

 東レの事業全体を取り巻く環境について大矢社長は、「中国は不動産不況に伴う内需の減速は当面続き、下半期も基調は変わらない」との認識を示す。ただ、電気自動車や水素関連、半導体といった事業は拡大基調にあり、需要を確実に取り込む。ポリプロプレンスパンボンド不織布などは改善策を講じるとした。