次の一手を求めて  JFW―JC・PTJレビュー( 8)

2023年11月28日 (火曜日)

他産地協業で新たな価値

 「JFWジャパン・クリエーション」(JFW―JC)の栃尾織物工業協同組合のブースには、かざぜん、木豊工場、白倉ニット、栃尾ニット、ハセック、山信織物の6社が出展した。目を引いたのは他産地との協業によるモノ作りだった。刺しゅうやボンディングと栃尾の生地を組み合わせて新たな価値を生み出した。

 同産地では、今年5月に染色・加工のいずみ染工が破産手続き開始の決定を受けるなど、地域内で全てを完結することが難しくなっている。今回のJFW―JCで他産地との協業が目立つのもそうした背景があるが、それによって従来にはなかった生地が生まれているのも事実と言える。

 刺しゅうでは、洋装用の幅の広い織物に対応する刺しゅうミシンを持つ企業と連携し、和装用の小幅織物に加工を施した。穴を開けてかがるなど、和装にはない手法を取り入れた。ボンディングは大阪市の企業と協業し、ニット生地に防水や防寒をはじめとする機能を付与した。

 東レ合繊クラスターは、2014年に当時の環境配慮型素材分科会が参加して以来9年ぶりの出展で、4回目を数える。今回展で重点素材の一つとして紹介したのが、100%バイオマス由来ナイロン510原糸を使った、目付けが約40㌘という軽量素材だ。

 軽量であることから生地の生産時に使用する染料や加工薬剤が少なく、染色後の乾燥に要する時間も短縮できる。その後の輸送時にかかる燃費も抑制されるため、総合的に環境への負荷が低減される。

 そのほか、製品全体の重量比50%以上に環境配慮型原料を使った「シンセティックマジック」、ポリエステル生地で麻調の「パリネ」、ウール調の「エフレンディ」などを提案。今回はエンドプロダクツ分科会が初参加し、防災関連用のアイテム(縫製品)を見せた。

 成和ネクタイ研究所は、ネクタイの生地製織を主力とするが、現在は他用途の開拓に力を入れており、JFW―JCでも服地向けの生地を並べた。服地に対応する織機とネクタイ用織機でモノ作りを行うが、ネクタイ地で培ってきた技術とノウハウを生かした開発で差別化を図っている。

 得意のシルクを軸としつつ、緯糸のバリエーションを広げることで変化を持たせた。例えば、経糸はネクタイ地に使用する生糸を用い、緯糸に綿や細番の防縮ウール、PTT(ポリトリメチレン・テレフタレート)繊維、PTT繊維とシルク混紡糸などを用いた。

 24春夏で国内ドメスティックブランドに採用されるなど、服地の開拓は着実に進んでいる。「ネクタイ織機で織った生地は経糸の本数が多く、一般的な服地とは違う表情を付与できる。世の中にない商品を作りたいと考える顧客からの評価が高い」と話す。