特集 タオル製品(1)/生き残りへ模索続く
2023年11月28日 (火曜日)
タオル製造卸によると、2023年は新型コロナウイルス禍からの回復基調が継続したものの円安に振れた為替動向の影響、それに関わる原料や運賃など各種コスト高、労働力不足と人件費上昇など課題も多かった。贈答文化など既存の主要販路に大きな変化が表れているほか、新たな成長分野と見込まれているネット通販や直販も含めた異ジャンルの市場開拓などにどのように向き合うかが問われている。
製造卸各社の景況感は良くなっている。今年の各段階の業績においても増収増益との回答が目立ち、コロナ禍の影響による最悪期は脱した感がある。
業績回復に寄与したのは価格改定などを含めた財務面の見直しによるところが大きく、定番品を中心に店頭販売が増加している手応えはやや薄いようだ。
ただし音楽やスポーツなどイベント用途や冠婚葬祭用途は人流が回復したことで受注も増えているもよう。ただし、ビジネス1件ごとの生産数の減少や価格交渉の難しさなど、用途は同じでもコロナ禍前と異なる内容になっているとの指摘が目立つ。
物価上昇の影響を受け、買い控えが続いている店頭販売のタオルだが、インバウンドや高価格帯の特別感のあるタオルはプレゼント需要などで販売が増えている――との声が複数の製造卸から聞かれる。全体の売上高に占める割合は、それほど大きくはないが店頭販売の方向性の一つとして注視されているようだ。
名入れタオル分野には印刷業者などの新規参入もあるが、タオル専業の製造卸は提案力や納期対応の早さなど自社のメリットを示すことで新規顧客の獲得に取り組む。
生機の備蓄をはじめとする国内産地との連携など国内外の生産基盤の分厚さや物流品質の高さなど既存の強みを生かせると見込んでいる。これらの強みを「問屋の本来の姿である」とする製造卸もあり、大口の別注などへの対応力を維持していく方針を示す。
自社での直販を含めた新販路開拓も進む。クラウドファンディングを含むネット通販やコロナ禍以降に来場者が急回復した見本市を通じたアピールの効果を指摘する声も目立つ。
独自ブランドを前面に打ち出すケースもあり、丁寧にコンセプトを説明することで、アパレルメーカーや地方にチェーン展開する小規模な日用品ショップなど、過去に接点のなかったジャンルからの引き合いが来ていると言う。拡大に向け、自社での商品開発や販売部門の強化を進める動きが続いている。
《こだわりのイチ押し商品》
消費者の志向の細分化、購買手法の多様化により製品提案も多彩になっている。各社のイチ押し製品を見る。
〈プレーリードッグ「アフリカ」タオル〉
アフリカ大陸のジンバブエ、ブルキナファソの2か国で栽培されている綿花を使った糸を採用したタオルを販売する。
いずれも中長綿でタオルに向き、ブルキナファソ産綿花は10番単糸にしてしっかりとした風合いに、ジンバブエ産は甘撚りの16番手糸にしてしなやかさを強調する。織布は愛媛県・今治産地で行う。
フェース、ハーフバス、ビッグバスの3サイズ展開で途上国支援などSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みやアフリカ綿の用途拡大などもアピールする。
〈スタイレム瀧定大阪/トリポーラス使いの「今治謹製」〉
ソニーグループと連携して開発した多孔質カーボン素材「トリポーラス」使いの「今治謹製」タオルを展開している。素材由来の黒系の色使いを生かしたシンプルなデザインや消臭抗菌機能をアピールする。フェース、バスだけでなくハンカチやスポーツタオルなどサイズを充実させ、アイテムを拡大している。もみ殻をリサイクルして作る素材であることからSDGs(持続可能な開発目標)に即した提案も進めている。ギフト用途ではリサイクルに適した紙製でブランドイメージに沿った黒系のシンプルなワントーンのギフトボックスを用いている。タオル以外でもトリポーラス使いのインナーウエアが国際宇宙ステーションに搭載されることが決まるなどの話題もあり、新たな切り口を持った素材として幅広いアピールを継続する。
〈ナストーコーポレーション「転写プリントオリジナルタオル」〉
写真などの画像データをもとに転写プリンターを用いて高精細な別注タオルを短納期で作れるサービスを展開している。サイズは25×25センチから60×120センチまで7種をそろえる。
データがあれば短時間で図案の作成が社内ででき、ネット経由で複数の完成イメージを伝えるなど「発注者が決断しやすい」提案を行っている。スポーツイベントや年始あいさつの配布用など既存の用途に加え、不動産仲介業などへの販路開拓も進めている。
国内産地と連携して生機を備蓄するなど即納体制も生かし、2022年には370万枚を販売している。
〈小杉善「コーデアワーズ」〉
衣料品と同じようにタオルでも毎日のファッションに合わせてコーディネートできるよう提案する。タオルの色柄の組み合わせを楽しめるようボーダーやチェック、鮮やかな淡色から重厚な濃色まで幅広くラインアップする。自社での販売に限定した商品だが、コンセプトに共感するアパレルメーカーから協業商品の問い合わせが寄せられるなど、ビジネスの幅も広がりそうだ。独自商品「ミッケタ」も収納するのではなく「見せるタオル」として展開するなど新たな切り口に挑む。