特集 タオル製品(3)/有力製造卸の進路/スタイレム瀧定大阪/ナストーコーポレーション/日繊商工/丸眞

2023年11月28日 (火曜日)

〈スタイレム瀧定大阪 事業本部第二事業部ガーメント2部 ギフトコミュニケーション課課長 久家 正樹 氏/“特別感”需要に応える〉

  ――至近の景況感は。

 既存の主販路であるブライダル需要では2022年から新型コロナウイルス禍からの回復が続いています。特に今年4月ごろに販売が大きく増えました。その流れが続くかと期待しましたが、夏以降は一服感が出てきました。

 販売先の情報によると結婚式の開催件数はコロナ禍前の水準に既に戻っているとのことですが、参列者数が減る傾向が出ているようです。

 コロナ禍の間に招待客を絞り込む動きがあり、収束後もそれが定着したとみられます。商談1件ごとの販売数量が減るので、当社としては今後の動向が気になります。

 出産祝い、仏事用途では堅調な回復が続いています。これらの用途の需要が今後どのように推移にするかも見極めているところです。

 ギフト用途の新しい販路としてパーソナルギフト、プレゼント需要を改めて深耕したいと思います。

 東京・表参道の直営店での引き合いを見ると「気に入ったものを贈る」形の変則的な自家需要ともとれる贈り物用途や小規模なワンデーイベントでの配布品などに伸び代がありそうです。

 パーソナルギフトに特別感や高級感を求める潜在需要は高まっているとみます。

  ――「今治謹製」の動きは。

 ノベルティーなど法人需要の開拓も進んできました。ここでも木箱入りの特別感が記念品などに向いていること、ブランド力が浸透して信頼感が高まってきたことが奏功しています。

 法人需要は大口の注文も得やすく、1商談当たりの数がまとまることがメリットです。刺しゅうを施した別注など提案の幅を広げていきます。

〈ナストーコーポレーション 社長 尾池 行郎 氏/「名入れタオル」重点展開〉  ――至近の業況は。

 上半期(2023年5~10月)は前年同期比で10%程度の増収推移です。利益面も前の期から進めてきた価格改定など利益構成の見直しが奏功し増益で推移しています。

 海外生産・調達の製品は、ここしばらく円安に振れた為替の影響も大きく出ています。ノンブランド品のような低価格品だけでなく高利益が見込める自社ブランド品を作るなど方針転換が必要です。今後はさらに国内調達を増やすなど従来と異なる調達・供給体制の再構築も急務となってきました。

  ――重点事業分野は。

 名入れタオル、ODM製品、大型OEMの三つとし、ロット数や納期、商品特性の兼ね合いに応じ、国内、海外に生産を振り分けていくことになります。

 名入れタオルは22年に370万枚を販売しました。大部分を大阪・泉州産地で生産しています。生地を数種類、常時備蓄しており自社でタオルの図案デザインを迅速に行い、提案できる体制を構築したことが奏功しています。スポーツなどイベント向けでの引き合いが目立つほか、新規取引先も増やしています。

 名入れタオルは当社の祖業です。顧客ごとのデザイン、納期の管理ノウハウの多さに強みがあります。今後も自信を持って事業展開していきます。

 そのほかキャラクター関連商品も広く浅くではなくコアな消費者に深く売るような形で成果を上げています。

 店頭での長期販売に限らず、イベントに合わせた限定商品の企画、販売ノウハウはプロスポーツチームなどの別注タオルの拡販にも応用できるとみています。

〈日繊商工 社長 俣野 太一 氏/強い商品の開発を〉

  ――至近の景況は。

 2023年8月期は前年比増収減益でした。各種コスト高のほか円安傾向の為替相場が響きました。

 和風デザインのタオルが新型コロナウイルス禍からのインバウンド回復によって販売を増やすなどプラス要因はありますが、全般的な力強い回復の手応えは得られていません。

  ――事業領域の開拓は。

 9月の国際福祉機器展に「体操タオル」を使った健康づくりのプログラムを推進しているグループで合同出展しました。ヘルスケア、介護福祉、美容などの現場でタオルがどのような使われ方をするのか、さらに将来的にどのような製品が求められているかを精査して商品開発を継続します。

 一方で贈答や自家需要など既存用途の維持、拡大も必要だと改めて感じています。コロナ禍の間は機能提案が目立ちましたが、コミュニケーションツールとしての「年賀タオル」の再提案、「ココチエナ」や「わた雪」などで情緒的な付加価値を高めた提案を続けます。

  ――既存ビジネスの再構築を進める。

 当社ならではの強い定番品を作りたいと考えています。機能加工だけに頼らないサイズ感などの「気の利いた」機能や色柄、キャラクターなどデザイン性を追求した製品を開発していきたい。強い製品を持っていれば、そこから派生するビジネスもあります。

 製造卸として問屋機能も改めてしっかりさせたいと考えています。

 自分たちで価格を決め、リスクをとってモノ作りを行い、高い品質で安定供給する――といった基本を見つめ直し、商流の中での役割を果たしていきます。

〈消費者目線を最重要視/丸眞〉

 丸眞(名古屋市守山区)は、コンシューマー(消費者)目線を最重要視した商品の開発・販売ならびに物流機能のさらなる強化を図る。

 前期(2023年8月期)は、前々期比較で売上高・利益ともにほぼ横ばいで推移した。消費者はもちろん、市場ニーズが多様化しているが、これらに迅速に対応する。

 ブランド・キャラクターのライセンス保有数は92種類と豊富だ。その一方で、独自企画の強化を推進して幅広いニーズに応える。タオルの販売が基軸だが、雑貨類の拡販やインテリア関連商品の開発も進める。

 雑貨類ではタブレット端末を収納するケースやエコバッグの販売が好調だと言う。缶詰や食品をあしらったデザインのポーチも好評で、自社ブランドの「yup!(ヤップ)」シリーズで手掛ける。ヤップシリーズの売り上げ金の一部は国際連合世界食糧計画WFP協会に寄付される。企業の社会的責任を果たす取り組みにも積極的に参画している。