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東レ 戦略的プライシングで成果

2023年11月30日 (木曜日)

 東レの大矢光雄社長は29日、大阪市内で会見し3カ年の中期経営課題(中計)初年度となる2023年度上半期(4~9月)決算に関して「減収だが事業利益は当初計画を超過達成しており、おおむね順調に推移している」と評価した。

特に“戦略的プライシング”で成果が上がる。一方、市況悪化で苦戦するポリプロピレンスパンボンド(PPSB)不織布や、短繊維織物事業に対して「事業のリエンジニアリング(再構築)を進める」と話した。

 戦略的プライシングに関して大矢社長は「品種別、顧客別に価格を分類、分析することで“見える化”し、提供した価値を適正に価格に反映させること」と説明する。十分な価値を提供できてない場合は、価値を提供できる品種への転換を提案し、価格が価値を下回っているものに対しては取引先との対話を通じて価格改定を実施した。この成果が事業利益の改善につながっていると評価する。

 一方、主力の紙おむつ向けを中心に需給バランスが失調しているPPSB事業や、シャツ地需要減退が続く短繊維織物事業に関しては「社内で対応を検討するプロジェクトを立ち上げている。生産設備の再編などを含め事業のリエンジニアリングを進める」と話す。

 PPSBは短期的にはローカルの衛材メーカーへ拡販することで販売数量を維持しながら、中南米など未開拓市場での販売拡大に取り組む。また、乳児用紙おむつに加えて大人用紙おむつやフェムテック製品向けの開発・提案を強化し、需要掘り起こしを進める。現在、世界5拠点で生産しているが、連携による生産品種の集約など最適化も検討する。将来的には「日本の衛材メーカーと一緒に付加価値を作っていくことが不可欠。そのために滋賀事業場(大津市)の開発機も活用できる」と強調した。

 短繊維織物は既に東南アジア子会社が糸・生機を相互利用することで生産品種や加工工程を集約するなど最適化を進めたことで収益も改善しつつある。シャツ地に変わる用途の開拓を進め、特殊原綿を活用することで商品の高度化にも取り組む。

 大矢社長は「グローバルなリエンジニアリングによって課題を乗り越えてきたのが繊維事業の歴史」と指摘。改革に対して自信を示した。