特集 人工皮革/独自の魅力が認められる/クラレ/旭化成/東レ/帝人コードレ

2023年11月30日 (木曜日)

 さまざまな用途で人工皮革の採用が拡大している。天然皮革の代替としてではなく、独自の機能や物性、風合いといった魅力が認められるケースが増えた。環境配慮型原料の採用や新製法による環境負荷低減なども加速する。今後、人工皮革はますます進化することになる。

〈サステ基材軸に提案/新製法「CATS」拡大へ/クラレ〉

 クラレは、人工皮革「クラリーノ」で引き続きサステイナブル基材を使用したタイプを軸に提案を進め、主力用途であるシューズ、ボール、ラグジュアリー製品などでの販売拡大に取り組む。新製法「CATS」の特徴を生かし、欧州での環境規制強化にも対応する。

 2023年度(12月期)は、主力のシューズ用途が昨年活況の反動から欧州市場を中心にやや需要が減退したが、6月以降はブランドによって販売量が回復するなど正常化の傾向が強まった。ボール用途はリサイクル原料使いがビーチバレーボールでヒットした。自動車内装材も電気自動車(EV)向けを中心に好調だ。

 一方、高級バッグや、ハイブランド宝飾品の店頭ディスプレーボックスなどラグジュアリー製品分野は勢いがない。欧州や中国の景気が低迷していることが要因。ただ、こちらも24年度には回復に向かうというのが同社の見方だ。

 同社は来期が5カ年の中期経営計画3年目となり、折り返し点となる。クラリーノ事業も引き続き基本戦略であるサステ基材を軸とした提案と新製法CATSによる生産・販売の拡大に取り組む。

 世界的にサステ素材への需要が一段と高まることを受けて、全用途でリサイクルポリエステルやリサイクルナイロンを基材に使用したタイプの拡販に取り組む。

 CATSは従来製法と比較して温室効果ガス(GHG)35%減、水使用量70%減となり、水系ウレタンを使用するため有機溶剤の使用量も99・9%減となり、事実上ゼロ。欧州では有機溶剤に対する規制が強化されていることからCATSへの注目は高い。成形性に優れるため、自動車内装向け成形品など新用途の開拓に取り組む。

〈開発・プロモーション強化/自動車内装材の堅調続く/旭化成〉

 旭化成の人工皮革「ディナミカ」の販売が堅調に推移している。エネルギー価格高騰など外部環境悪化の中、主力の自動車内装材用途の好調が続く。今後はブランド統一を生かし、開発やプロモーションに一段と力を入れる。

 自動車内装材用途は今期(2024年3月)もここまで堅調に推移した。電気自動車(EV)での採用が続いているほか、ガソリン車でも国内外での採用が増加傾向だ。高級車種だけでなく中小型車でも内装の高級感を高める傾向が追い風となる。また、航空機内装材でも採用実績が上がる。

 一方、家具向けはこれまでの活況の反動がややあり、雑貨も高級ブランド向けは欧州や中国の景気低迷の影響を受けた。コンシューマーエレクトロニクス用途もスマートフォンなどの市況低迷の影響があるが、こちらは新規案件の獲得などでカバーした。このため自動車内装材以外の用途は全体として前年度並みの数字を維持している。

 自動車内装材を中心に旺盛な需要が続いたことで、これまで販売の拡大に重点を置いてきたが、今後は改めて開発やプロモーションにも力を入れる。開発面ではサステイナビリティーを重視し、これまで進めてきたリサイクル糸の使用やウレタンの水系化に加えて、後加工工程での環境負荷低減などに取り組む。

 また、自動車内装材のグループ会社、セージ・オートモーティブ・インテリアズのブランドだったディナミカに統一したことを生かし、セージ社と連携したグローバルブランディング活動に力を入れる。

〈自動車内装材の好調続く/東レ〉

 東レの人工皮革「ウルトラスエード」は、2023年度(24年3月期)もフル生産が続くなど好調だ。特に自動車内装材用途が拡大する。今後もサステイナブル原料使いを拡大し、温室効果ガス(GHG)やライフサイクルアセスメント(LCA)削減につながる製品の提案に力を入れる。

 ウルトラスエードは電気自動車(EV)向けなど自動車内装材用途が拡大した。ここに来て海外メーカーだけでなく国内メーカーでも採用が拡大する。また、航空機内装材でも採用が増えてきた。

 そのほか、インテリア用途も堅調。アパレル用途は小ロットながら国内で有名デザイナーズブランドに継続的に採用され、海外では有名アウトドアブランドに採用されるなど認知度が一段と高まった。「エクセーヌ」ブランドで販売する工業資材も安定している。

 今後もリサイクル原料や部分バイオ原料使いの拡大を進め、GHGやLCAの削減につながる製品の拡大に取り組む。そのために国際認証なども積極的に取得し、水系ウレタン使いの開発にも取り組む。

〈ボール用途の回復期待/帝人コードレ〉

 帝人フロンティアグループの帝人コードレは、人工皮革「コードレ」でサステイナブル原料使いによる需要創出に取り組む。主力用途のシューズやボールも今後の市況回復に期待を寄せる。

 コードレの販売は2022年度(23年3月期)が絶好調だった反動で23年度はやや勢いを欠く展開。ただ、同社はシューズ向けなどで輸出比率が高いため、円安の追い風を受けた。

 シューズ向けは販売数量こそ若干減少しているが、ハイエンドモデル向けが多いため利益面は堅調だ。ボール向けはメーカーの在庫調整の影響が続いている。

 自動車内装材向けは堅調に推移。下半期も現在の流れが続くとみており、特に米国市場の市況回復に期待を寄せる。ボール向けも11月以降は荷動きが回復すると期待する。

 引き続きシューズやボールで需要の掘り起こしを進める。その一環として再生ポリエステル使いをはじめ、樹脂や添加剤に植物由来原料を使用したビーガン仕様のコードレを提案し、サステ製品需要に応える。